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そんな感じで良い感じなニルシェ王都暮らし。
もちろん、ちゃんと冒険者稼業も頑張っておりますよ。
今日も元気に相方とふたり並んで冒険者ギルドへとご出勤。
「……」
はて、リルシェさんのわんこみみが……
あのぴくぴくは確か、周辺警戒モードの証し。
どうかしました?
「……宿を出てから、後を付けられています」(小声)
「気付かれないよう『Gふなずし』の索敵画面を直接視認していませんので、リンクしている"コニタン"の警告振動のみですが」(警戒の小声)
ふむ、こっちが気付いたことを相手に勘付かれないよう、
自然な感じの出勤風景を演出せねば。
それでは、より自然な仲良し感を演出する手繋ぎや腕組みを見せつけることで、
相手の油断を誘うというのは……
「可能な限り両手をフリーにしておくのは尾行者警戒の定石ですよっ」(呆れの小声)
失敬、調子に乗っちゃいました。
それで、どうしましょ。
このままギルドまで引っ張っていくのもアレですし、
この大通りで何かあったらそれこそ周りに迷惑掛けちゃいますし、
どこか荒事出来そうな広場にでも誘い出します?
「見事な対応ですよ、ウェイトさん」(お褒めの小声)
「正確な数は不明ですが反応は少数なので、以前ウェイトさんが人酔いでひっくり返ってた例の公園にでも連れて行きましょう」(不敵な小声)
えーと、いくら俺でもその覚えられ方は悲しくなっちゃうので、
出来ればそういうアレな記憶はとっとと消していただきたく……
「ウェイトさんとの旅の思い出は、例えモノカにだって消去不能なガッチガチプロテクト済みメモリアルですよっ」(興奮の小声)
……じゃあそれで良いです、
これから楽しい思い出で上書きさせてみせますから。
「期待しておりますっ」(喜びの小声)




