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集中……
ぴくり
……出来た、かな。
「ふむ、まずは合格かの」
「ほれ、解放してあげんとな」
きょろきょろ、ぴょんぴょん
……ふぃー、成功。
魔うさぎ単体への『道連れ』付与、出来ちゃったよ。
ありがとうございます、ヨレン師匠。
こんなにも早く『道連れ』を制御出来るようになるとは思いませんでした。
「固有すきるは効果も習熟速度も、使用者との相性次第じゃよ」
「嬢ちゃんへの甘えん坊っぷりを見れば、ウェイトさんと『道連れ』の相性の良さは一目瞭然じゃっ」
反論出来ねぇ……
まあ、『道連れ』制御の第一段階突破ってことで、結果オーライかな。
「それではお祝いってことで、美味しい魔うさぎ料理でもっ」
容赦無いっすね、リルシェさん。
逃げろ、魔うさぎ……
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魔うさぎ鍋、うめぇ。
いえ、あの魔うさぎを鍋にしたわけではありませんよ。
ヨレン師匠のリクエストで、『アネス干し』と山菜の鍋物。
この『アネス干し』って、要は魔うさぎの干し肉なんです。
『アネス干し』は、俺がアネスの町に居た頃の主食。
保存食ですのでそのままでも美味しいですし、
飽きないように毎日工夫して食べまくったおかげで調理バリエーションも豊富。
かなり自己流のなんちゃって料理ばかりですから、
あまりお披露目したいもんじゃ無いのですが。
まあ、お祝いってことで、今日は特別ですよ。
鍋物なので煮込みながら適当に味を整えただけですけど。
ってか、魔族領でも普通に手に入るなんて、
アネス名物『アネス干し』の人気って、結構凄くね。
「明日からは第二段階の修行じゃな」
「今日はゆっくり休んで、明日からはすぱるた特訓じゃっ」
お手柔らかに、です。
第二段階は"特定部位のみの『道連れ』"でしたっけ。
「左様」
「これまでとは桁違いの集中力が必要じゃぞ」
「その分、応用範囲も桁外れじゃ」
なるほど、頑張ります。
ところで、今日の魔うさぎを見てて疑問に思うことがあったのですが、
『道連れ』って、俺の基礎能力で相手の能力を上書きするんですよね。
今の俺って、少なくとも魔うさぎよりは強いと思うのですが、
さっきみたいに『道連れ』すると、
魔うさぎが今の俺並みに強くなっちゃうってことで、合ってます?
「その存在が生まれ持つ"格"以上には強くなれんよ」
「魔うさぎも魔ねずみも、種族の限界を超えた強さにはなれん、ちゅうこっちゃ」
「何でもかんでも"均質化"出来るとは限らん、ということじゃな」
「『道連れ』が弱体化方面に特化した固有すきるじゃったことが、嫌われる原因だったのかものう」
……結局は使い方次第ってことですね。
って、どうしました、リルシェさん。
鍋、美味しくなかったです?
「むう、ウェイトさんがこんな隠し球を持っていたとは」
「何か、ズルいです……」
えーと、申し訳ございません?




