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ひたすら歩いております。
ヨレンお爺ちゃん、意外と健脚。
むしろ俺の方がペースを合わせてもらっているような……
「やはり旅はええのう」
「こんなええ天気で若い衆と歩いとると、若返ったような心持ちじゃよ」
いえ、充分お若いですよ。
すでに俺の方がヒーヒー言ってますし。
「昔取った杵柄、じゃな」
「これでもわし、若い頃は冒険者ぱーちーでぶいぶい言わせとったんじゃよ」
「"豪三家"、知っとるかの?」
すみません、勉強不足です。
どのような冒険を?
「元々は村のやんちゃ坊主3人が集まって悪さしとったんじゃよ」
「近所のお山の主にちょっかい出しに行ったり、隣り村の出来立てだんじょんに潜りに行ったり、街で評判のべっぴん貴族娘さんに会いに行って衛兵さんたちに追っかけ回されたり」
「みんなとは、大きくなったら一緒に冒険者しようぜって約束しとったんじゃがの……」
お別れ、ですか。
「成人の儀で、神官向きの"れあすきる"が出ちゃったの、わし」
「村が大騒ぎになってしもうて、結局断れなくて王都へ神官修行に行くことになっての」
「あいつらは、まあ、気にしとらん風じゃったが」
それで神官様に。
「"様"なんていらんよ」
「それで、自分で言うのも何じゃが結構才能あったのね、わし」
「で、見事に天狗になっちゃって、こんな神官修行なんてやってらんねえって、王都の神官修練場を飛び出したの」
「それでその日暮らしな冒険者稼業始めたけど、"すきる"も魔法も結構なもんだったし、割とあちこちのぱーちーから引っ張りだこ」
何か、今の様子からは想像もつかないようなイケイケ人生だったんですね。
「うん、本当に勢いと出会いだけはいっちょまえの変な人生」
「ぶらり旅してたら、冒険者になってた幼なじみふたりとばったりご対面しちゃったり」
「のーちゃんは、ちっちゃい頃からやたらと強かったけど、"近接無敗の極童"って、大層な二つ名で呼ばれとるし」
「らーちゃんは、ちっちゃい頃からやたらと凝り性だったけど、"魔導具の賢者"って、わけ分からん二つ名が付いとるし」
ふむ、なるほど。
つまり、近接無双とアイテムマスターに、
魔法・スキルのエキスパートが合流した3人パーティーですね。
「そう、それが"豪三家"」
「のーちゃんが前衛担当、わしが魔法とすきるで補佐、らーちゃんの魔導具がぱーちー活動を支える要」
「自分で言うのも何じゃが、気心知れた凄腕が組めばかなり無茶出来るもんじゃよ」
「尖ったもん同士が良い塩梅に噛み合った凄いぱーちーだったのう」
幼なじみパーティーならでは、ですね。
「確かに3人揃えば何だって出来たんじゃが、ひとりじゃないと出来んこともあるのじゃよ」
「いろいろやらかして良くも悪くも名が売れた頃かの」
「のーちゃんが突然、ひとりで"竜の試練"に挑戦したいと言い出しての」
「これからはみんなもやりたいことやろうぜって言って飛び出して行ったんじゃ」
「らーちゃんも、冒険者辞めたいって」
「それまでみたいに魔導具全般を研究するのでは無く、これからは鍛治一本でやりたいと」
「当時出会った同い歳の魔導具技師がらーちゃん以上の天才での、思うところがあったんじゃろ」
「結局、ぱーちーはばらばら、わし、ひとりぼっち」
それでヨレンさんも冒険者から神官へと。
「いや、結構何でもこなせるわしみたいなのは、あちこちのぱーちーから引き合いがあっての」
「だらだら冒険者を続けているうちに、結婚して子供が出来て」
「子供がひとり立ちしたら孫なんてすぐじゃ」
「でものう、こんな爺いでも先が見えてくるといろいろと考えてしまっての」
「結局、若い頃に飛び出した王都の神官修練場へ頭を下げに行って、今に至る、じゃな」
…‥人に歴史あり、ですね。
「ウェイトさんは後悔せんようにの」
「まあ、ひとりでふらふらしとるより、嬢ちゃんの尻に敷かれとるくらいがちょうどええじゃろ」
はい、もっといっぱい尻に敷いてもらえるよう頑張りますっ。
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長旅の合間に、いろいろとお話を伺ったり。
俺の固有スキル『道連れ』について相談してみたり。
「ウェイトさんは、ちゃんとしたスキル制御訓練とかやっとらんのじゃろ」
「良かったら教えちゃうよ、わし」
ぜひお願いしますっ。




