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『リヴァイス 104 骨休め召喚者の休まらない休養日』の続きで、
召喚者ウェイトのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、ウェイトです。
異世界リヴァイスでの冒険者生活、
おかげさまで充実した日々を過ごしております。
今は魔族領ニルシェ王国の王都にて積極的に冒険者稼業邁進中。
自己流サポート職ムーブも板についてきた俺と、
前衛無双なわんこ獣人リルシェさん、こと乙女騎士ノルシェさんとの、
華麗なるチームプレイも絶好調。
最近は冒険者ギルドでの評判も上々な、
なかなかにイケてる冒険者パーティーっぷりなのです。
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「最近は本当に良い感じですね」
「ウェイトさんも、以前とはずいぶんと変わりました」
「冒険者ギルドで積極的に他の冒険者さんたちと交流するようになりましたし、苦手だった大勢の人前での活動も人酔いせずに堂々とした仕事ぶりです」
「何かきっかけとかあったのでしょうか」
きっかけと言いますか、意識改革、でしょうか。
いつまでもリルシェさんに甘えてばかりじゃいられませんし、
こじらせ人見知り野郎である俺の厄介な性格を根っこから変えるには、
他力本願では無く、自分自身が自主的に変わらねば、と決意しまして。
「ご立派です」
いえ、いまさらでしたね。
ということで問題解決のため、まずは己自身をより深く知るべきと考えまして。
これまでの数々のやらかしを思い返しては反省考慮し、
今の自分に何が出来るのかを様々な観点から熟考熟慮。
たどり着いたのは古来より受け継がれてきた先人の知恵を活かした自己改革案。
「お見事です」
ありがとうございます。
それで、特に効果ありと評価の高かったいくつかの民間療法から、
比較的安全であろう手法のひとつを試して見たところ、
まさに悪霊退散ってな感じで気分スッキリ、
自身の進むべき道がくっきりはっきり大解放、
そしてご覧の通りの自己改革大成功、ってわけなのです。
「本当に、何だか怖いくらいに変わっちゃいましたね」
「もしや、怪しい宗教とか変なおくすりとかに手を出して……」
いえ、これからも真っ直ぐにリルシェさんと向かい合うなら、
そういうアレな手段に手を出すのは絶対に御法度。
そんなやり方で己を変えてもリルシェさんは絶対に喜ばないですし、
それこそ愛想を尽かされちゃいますから。
「ウェイトさん……」
俺が目指したのは他人任せな他力本願の性格改変では無く、
あくまで自主的・自発的な意識改革です。
それにしても、誰もが知っている言い伝え的な手法が、
まさかこんなにも効いちゃうとは思ってもみませんでしたよ。
「はて、そんな特効薬みたいな民間療法、ありましたっけ?」
はい、リルシェさんもご存知だと思いますよ。
群衆と向かい合う際に緊張しなくなるテクニック。
「緊張感を和らげるテクニック的な言い伝え……」
「大昔の召喚者さんが流行らせた、手のひらに書いた"人"の字を飲み込む、でしょうか」
いえ、そっちじゃなくて、
群衆を人ではなくカボチャだと思えっていうやり方です。
「へえ、あれってそんなにも効果があったのですね」
はい、まさに効果バツグン天啓テキメンでした。
もっとも俺の場合は、カボチャではなく別のことを考えながらですが。
「もしかして……」
そう、人酔いというのは、
相手が"人"だと意識し過ぎて萎縮しちゃうのが問題だったのです。
「……」
つまり、目の前に大勢いるのは人族ではなく、
見ての通り見たまんまの素敵な異種族さんたち。
こんなにも恵まれた状況は楽しまなきゃ損だろって考えるようになったら、
人酔いなんかに負けてヘコんでるのはもったいないってことに気付きましたよ。
まさに今の俺が異種族天国で暮らしているという、
この現状にこそ感謝すべきだったのです!
「でもそれって意識改革ではなく、性癖を解放した無理やりな自己暗示……」
いえいえ、以前は全く同じ状況でも盛大に人酔いしていましたから、
こんな風に気の持ちようで何とかなるのなら、これも立派な意識改革ですよね。
つまりは、周りに迷惑掛けない程度なら自己解放大いに結構、
結果オーライなら楽しんだ者勝ち、ってことだったのです!
「……楽しそうで何よりです」




