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魔法学校の天才さん  作者: 千華
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第六話 唐揚げとvs三年男

「ほんとに校舎真っ二つの危機だったんですかっ?」

「あぁ」

「手刀だけで・・・」

「副会長、大丈夫でしょうか?」

「いや全然」

「ですよね・・・」

「まぁ、あいつの「殺す気はない」という発言を信用するしかないな」

「最早どうでもいいですけどねっあいつがどうなっても」



生徒会メンバーが副会長・キールを心配していたちょうどその頃。

アリスの部屋にはお尋ね者が来ていた。

「おい主席合格。俺との殺し合い、受けろ」

「無礼なやつは嫌いなの。ゴリ押しされて受ける義務は私にはないの」

「いや。お前には生徒会に従う義務がある」

「ここの生徒会どうかしてるの」

なんか大変そうだ。例の心配され男が押しかけている。


「まぁでもいいの。ちょうど暇してたの。受けてやるの」

アリスがさっと構える。

好戦的同士の戦いほど残酷になるものはない。

が、キールはアリスにタックルをするのごとく突進してきた。

ノーガードなところを見ると魔法を使わない武闘派らしい。


「私を相手にしての一番の悪手を引きやがったの」

そう言って笑うと、アリスはキールのみぞおちに膝蹴りを食らわせた。

それだけでキールはあっさりと気絶し、倒れる。

骨の砕ける音がした気が・・・いやしてないしてない。


魔法の付与は無かったように思う。両者ともに。

なんだこの子。


「華奢だから力も弱いと思っちゃ困るの。これでもちゃんと鍛えていたの」


不愉快そうにふんっと鼻を鳴らすと、キールを部屋の外に蹴り出した。



「もっと背が高ければ良かったの・・・」

こっちはどうやら気にしていたらしい。

けれど、小さな体が活躍する場面も多々あった。

華奢な分、小回りが効くというのはチビの代名詞だ。と思い直し、アリスはまたもルームサービスで頼んだ食事に手をつけた。



「冷めてる・・・」

大好きな唐揚げを頼んだのだが、邪魔が入ったせいで揚げたてとはほど遠い冷たさになっている。

今日は尽く不運らしい。




「生徒会負けナシの名声が消えましたね」

「魔法無しでワンパンKOって、キールくんなにしてるんですか」

「ほっとけ。奥の部屋に寝かせてきた」

「でも、これでアリス嬢は206pから280pまで上がりましたね・・・」

「あぁ、だが、一年もあいつだけじゃないんだ」






「なんだか楽しそうなの」

冷めた唐揚げを諦めてアリスは食堂に足を踏み入れていた。

だが、そこは食堂という名の殺し合いリングといって間違いないものだった。


食堂の中央付近には生徒が大勢溜まって、野次を飛ばしている。


本命の殺し合いをしているのは・・・バッジが黄色だから三年か。

例に漏れずだだっ広い食堂の広範囲を余すことなく使って戦闘を繰り広げている。



「唐揚げ定食お願いするの」

まさか殺し合いに乱入するんじゃないだろうな、と思ったが、平然と食堂のカウンターに声をかけに行った。


「い、今か・・・?それにあんた、一年だろ?ここは一年なんかが来るべき場所じゃない。帰った方が身のためだ」

最早職員が巻き添えになる方を心配したい。

「構わないの。唐揚げ、お願いできるの?」

「はぁ。わ、分かった。俺は忠告したからな?」


「命知らずはどこにでもいるもんだな・・・」とため息をつきながら揚げ場に向かってくれる。

「命知らずはきっとそっちなの」

うーんなんか否定できないような・・・。いや、ここにいる時点で全員命知らずだろう。



待ち時間の間に、アリスはもう一度殺し合いリングの方を向き直った。


「良い空間なの。私の部屋ほど高くなくて」

何の事かと思えば。?何のことだ?

幸せそうな顔で、窓から景色を見下ろしている・・・?

「高所恐怖症を治す魔法、いつか開発してやるの」

ばっっかだこの子。



「おい、唐揚げ。本当に早く帰った方がいいぞ。皿は今度でもいいし」

「ありがとうなの。あなたも、とっととここをやめることを勧めるの」

「それが出来たら苦労してないさ」

少女の口からそんな言葉が出たことに、気が抜けたらしく、少し表情を崩してそう返してきた。


「じゃあななの」

食堂兄さんに手を振って振り返ったその時、みんなが感じていたことがしっかり起こった。

「おう」←アリス

「おうチビ」←野次その1

振り返ってぶつかりかける距離で野次数人がアリスを囲んでいた。


「リンチなの?」

「いや?お呼びなのは俺たちじゃあない」

剣幕した雰囲気で野次その2が言ってくる。

その真ん前でアリスは平然と唐揚げをつまむ。


「もぐもぐもぐ・・・ゴクッ。うまっなの!おにーさんー!美味しいの!」

目をキラキラさせて食堂お兄さんに全力で手を振っている。

カウンターからわずかに顔を見せた兄さんは、アリスの状況を見た瞬間、ため息と共に死にそうな表情で崩れていった。


「何余裕そうな顔してんだ?俺ら三年だぞ?」

「先輩を敬う義務は私にはないの。無礼な奴は嫌いなの」

「あ?」

野次その1がキレたらしくアリスの胸ぐらを掴んできた。

「なのっ」

と思ったら一気に殺し合いリングに放り投げられた。


「やってることやべぇの」

着地しながら苦笑うと、殺し合い真っ只中ただなかの三年と目が合った。


「おう。お前か!入学試験満点合格のチビは!」

「無礼な奴は嫌いだとこの学校で何度言えばいいの・・・」



「私に何の用なの」

「そりゃあ勿論、殺し合いだよな!」

「めんどくせぇの・・・。ここの住民は殺し合い好きすぎるの」


ほいほいと会話を進めていくが、その間にも野次は集まり続ける。

そしてアリスの唐揚げも冷め続ける。


「お前、じゃあ逆に聞くが、なんでここに入ったんだよ。その体つきじゃあ不利なことぐらい分かるだろ?」

的確と言えば的確な質問だ。

「ふっふっふ。分かってないの」

アリスはその妥当な問いに、不敵な笑みを浮かべる。

「魔法の世界は体格なんて関係ないの。全ては才能なの」

おっと。実力主義タイプ。


野次もそろそろ痺れを切らしたそのタイミングで。

アリスの姿が消えた。

そう思ったら同じ所にもう一度出現していた。

と思ったら三年男二人が口から血を噴いていた。


野次の目玉が飛び出た(かと思った)

アリスの姿は確かに消えていた。

しかし、現在のこの世には透明化の魔法は存在しない。

高速での移動だったとしても、探知は魔力の残像でも可能だ。

それが出来ないとしたら・・・一体どういうことなのか。


「のっ!まだ温かいの!耐えたの!」

同じ場所に戻ったその足で唐揚げまで飛んでいくと、嬉しそうに声をあげた。

野次が慌てて三年男に駆け寄っているが、殺されてはいないようだ。

どうやったのだろう。


「じゃあななの。私は忙しいの」

唐揚げを大事そうに両手で持つと、アリスはクルッと向きを変えて行ってしまった。

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