第四話 第一戦
アリスは、資料の記憶と整理を終えると、部屋の探索に戻った。
風呂場、ベッド、色々な所を見て回ったところで、クローゼットの取っ手に手をかける。
開けようとしたところで、突然手を止めた。
「おぉー」
何かを察したように笑うと、勢いよく取っ手を引いた。
突如、クローゼットから数本の矢が飛び出してきた。
アリスはそれを華麗に避け・・・いや、アリスの頭上を通過した。
「え、おもんな。さいあくなの」
当たってほしかったのかよく分からないが、今はクローゼットから矢が出てくるところに目を向けて欲しい。
「まさかのクローゼットに仕込み矢。最高なの」
ドMなだけだった。
戦歴ポイントは、入学試験の成績によって、初めに渡されるポイントが決まっている。
歴戦の猛者から勝利を奪えば、それだけポイントも増加する仕組み故に、強いやつが狙われるものだ。
入学試験主席合格なのに、チビロリとくれば、狙われない方がおかしい。
「の。部屋出てみるの。楽しそうなの」
アリスはスキップで部屋のドアまで行くと、またも何かを察して笑った。
その笑顔を保ったまま、勢いよくドアを引くと、地面から逆ギロチンが出てきた。
「ほっ!」
探知していたらしく、今度こそ華麗にバク宙で避けると、正面に目を見やった。
ギロチンは事前に仕掛けていたらしく、手に大斧を持った巨体の男が立っていた。
制服のバッジが赤ということは一年だ。
「さすがに身軽だな。戦歴p一年一位!」
「のっ。いいのいいの。私は好戦的な人は好きなの」
アリスは、ストレートの金髪を揺らしながら楽しそうに返す。
ドアを魔法で閉めると、二人は廊下で互いに見合った。
戦闘を想定している為、廊下はだだっ広い。
男も有名人なのか、野次馬が集まってきている。
アリスが入学試験以外の場で戦闘を露わにするのはここが初めてともあって、上級生の姿も見える。
アリスはそれを全部理解した上で、やはり笑った。
「さぁ!負けてもらおうかー!?」
男は斧を振りかぶった。
付与されている魔法は、殺傷能力を上げる魔法といったところかな。
一見、刃こぼれの目立つ斧でも、当たれば腸が真っ二つだ。
「きゃははっ」
アリスは、その振りかぶられた斧に、跳び蹴りを食らわせた。
「は?」
軽く飛び上がってからの下向きの跳び蹴り。
「あんたと同じ、殺傷能力上げの魔法なの。どう?結構いいだろなの?」
魔法を付与された斧は、アリスの跳び蹴りで、粉々に粉砕された。
相手の男と野次馬は口をあんぐりさせたまま静止している。
「あ、あ・・・失礼しましたぁ!!」
男は楽しそうな笑みを向けてくるアリスを前に逃走した。
「お待ちを」
しかし、逃走をあっさり見送ったアリスと反対に、男を止める声がした。
「分身魔法?珍しいの」
「アリス嬢ですね。今回の殺し合い、アリス嬢の一発ノックアウト、という認識で間違いありませんね?」
生徒会メンバーの証である白い腕章が腕に付いている。
生徒会総監査・レーナの分身体だ。
「はい。でも殺しはしてないの。殺す気もないの」
「大斧粉砕。痕跡からして、殺傷能力向上の魔法付与での体術・・・」
レーナの分身体は、冷静に戦場の分析を始めた。
「お、俺・・・」
「手持ちの戦歴ポイントは?」
「200」
「110・・・」
「では、推移はアリス嬢・206p、そちらの、あなたが100p、とします」
「すっくななの」
「比率的に。初めはそういうものですので」
「そうなの」
ささっと資料を残し、頭上に表示されている戦歴ポイントの更新を行うと、生徒会総監査・レーナの分身体は去って行った。
「お、おい、早く逃げろって!」
「なんで」
「馬鹿!あれはマジのヤバイ奴なんだよ!今の見て思い知っただろ!」
野次馬も、アリスに殺されまいとそそくさと去って行った。
身長150以下、細い四肢と血色の悪い白肌、童顔な顔立ちに肩上の金髪ストレート
どっからどう見ても、重い病気で部屋に閉じこもってる弱々しい少女感溢れているアリスはスカートを翻すと、ニヤリと笑って部屋に戻っていった。