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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛SLG「ラブ・フォーチュン」の主人公に憑依した人たちの話

我が国の創作はレーティングさえ配慮しとけば何やってもいいという風潮である。自主規制?知らない子ですね。

作者: 水城

恋愛SLG「ラブ・フォーチュン」は恋愛SLGである。学生である主人公が色々な経験の果てに恋をするという話である。プロデューサーはそのように企画書を出した。キャラデザはネット界隈でもある程度知名度がある方にした。ゲームメーカーもそれに納得してゴーサインを出した。開発チームは資金とネームバリューを引っ張ることに成功した。してしまった。


「学生の本分は勉強です。潤いを求めて恋愛をする、あるいは将来を見据えて人間関係を構築するするのも良い。だけど何もせずモテるのは若い時分だけです。ゲームではENDを迎えればヒロインたる主人公は幸せになれますが、現実は続いていくのです。だから恋愛全振りは避けて、好きや得意を見つけて欲しい」


インタビューとPVを見た人たちは、パラメーターを上げて攻略対象を落とすゲームだと多くのゲーマーは思った。メイン購買層となるはずの女性たち自分のアバターであるアルマと豪華声優陣が演じる攻略対象キャラとの恋愛を夢見た。


体験版が出て、これいい意味でバカゲーなのではと祭りが始まるまでそう思われていた。


聖フィールズ学園、文化クラブ棟。


「アルマ先生、次の新作なのですが」


あのアンジェリカ様、先生呼びはやめて頂きたいのですが。私ただの学生なんです。


「何をおっしゃいます。先生は新しい光を私たちに注いでくれた救世主です」


そんな大層なことはしていないのです。私はただ昔取った杵柄を形にしているだけに過ぎないのです。いやだって、このゲーム好きにお絵描きできたじゃないですか。だからやろうと思った方はやってたのです。


「私、詩文や短編物語については自信がありましたわ。憧れの方に対する秘めた恋を言葉にしたためる。それだけで幸せでしたの。多くの同士が私のことばの中に自分の想いを重ねました。ですが、ですがアルマ先生はより大胆に表現されました」


そ、そういうことは特に意識しておらず、推しを見たらとりあえず描いてみるのが癖になっているだけなのです。ただ隣人ちゃんが、絵が上手いね、なら美術部に入ったらいいんじゃないと言ってくれたから、もしかしたらちょっとは需要があるのかなとか、出来心だったのです。


「そんな、出来心なんておっしゃらないでくださいまし。秘密結社『真実の愛を紡ぐ※』は、身分の上下問わず、アルマ先生の味方です」


何ですかその大仰な表現というか秘密結社って何です? ここ正式名称はともかく通称は美術部ですよね。最近は締め切りに追われて普通の活動の方に参加していないのですが、何をされているのですか。


「はい、美術史のクレマン教授をお呼びして、先生の作品について熱く語っているところです。それと錬金術部と連携して、印刷技術の改良に着手していますわ。即売会までには間に合わせますので先生はご自由に作品をお書きください」


即売会って、確か同好の士同士で趣味の作品を紹介し合うという趣旨のはずでしたが。大丈夫ですわよね。


「もちろんです。開催1週間前まででしたらティティさんが経営している印刷所をフル稼働すれば間に合うと約束してくださいましたので、先生は安心して活動なさってください」


伯爵令嬢のご実家が経営されている印刷所とか使って本当に大丈夫なんですか!?


「はい、先生が描いたティティさんの直筆画にご両親が感心されまして、ぜひと」


ところで即売会っていつの予定でしたっけ。


「はい、先生のファンの要望と私たちの予定を調整した結果、この日に……」


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「予想していたとはいえ何というか男ばかりだな」


殿下はローストビーフを食べながらしみじみ呟く。


卒業記念パーティには閑古鳥が鳴いていた。正確には華がなかった。


確かに卒業式の参加はともかく、その後の記念パーティは任意である。平民出身の卒業生は敢えて参加しないこともあるし、平民の在校生もしかりだ。料理の質は良いので大抵は参加するのであるが。


「そうですね。第2ホールは凄いことになってますけど」


クロードの視線は隣接する学園第2小ホールに向けられていた。


「卒業記念、学園生活ありがとう合同即売会か。まさか本日の主役はあちらだったとはな」


「殿下も向かわれます? 多分歓喜されますよ」


殿下は苦笑しながら首を横に振る。こういった態度を直に表現できるのも本日までだ。ここを出れば自分の表情次第では人が死ぬことも考慮しなければならない世界に入るのだ。


「いや辞めておこう。大人げないと活動を禁止しなかった私のミスだし、魔女どもに新しいネタを提供してやる必要もあるまい」


「そういえば、あの少女。アルマくんも言ってましたよ。『ここもじき腐海に沈む』と。経験からいうと、無理に止めると狂信者が逆上するらしいです」


脱稿を終えたアルマにはもう止める術はなかったのだ。


今ごろは自称ファンの王妃や伝家の妹姫、とある公爵夫人、芸術の国を称する国王のそっくりさんなどが並んでいることだろう。会員は身分の上下を問わず、きちんと並びなさいがルールだからだ。本来は自分のそばにいるはずなのに、すぐに着替えて駆け抜けていった婚約者が言っていたので間違いないだろう。


「この国に新しい芸術というか文化が生えたことは喜ぶべきだよ。卒業した私は、生きた人間をそのままの名前で出さないように配慮を求める法案を父上に出して了承はしてもらうがな」


殿下の決意は強かった。王様なんて所詮はアイドル稼業だ。自分の一挙手一投足は常に見張られて自由なんてものは生まれた時からないものと理解していた。


弟たち(スペア)ならそれを放棄することもできるだろう。だが長子には掛かっている金額が違うのだ。


よって大抵のことは水に流した。婚約者の瞳が妖しく揺らいでいるのも我慢しよう。同年齢の婚約者がおねショタとかパブみなる謎のワードて悶えている姿に新婚生活怖いなという思いはあったが。


「アルマ嬢には罪はない。本来なら文化勲章ものだよ。私が恐れているのは、文字による伝播は識字率に依存するが、件のマンガというものは子どもにでも何となく伝わるということだ。」


一人の天才の発想から生まれたものが、為政者を風刺し、それによって勘違いした人々が国を破壊しないことを祈るばかりだと、人間の愚かさを知る殿下は杯を掲げた。



これが俗にいう

「行こう、ここもじき腐海に沈む」ENDです。

発生条件はクラブ活動で文芸部か美術部を選択。

文学ポイントあるいは芸術ポイントのどちらかを必要数値まで上げ、また貢献度を上げます。

その後、特定ジャンル作品ばかりを作り続けて、秋の発表会で高評価を得ます。

後は優先END条件を発生させなければこのENDです。


恒例のキャラクター紹介


アルマ 

BLはたしなみ程度で、別にこだわりはないのだが、ファンが求めるものを追求してしまった結果、こうなってしまった。私は悪くねえと言いたい。


アンジェリカ様 

恋に恋するお年頃のお方で、アルマを見出した人1号。実家は子爵で婚約者も決まっている。


ティティ

実家は流通業の商人。別にその手の趣味はないのだが、先見の明でこれは売れると学園と国を巻き込んで大暴れする。


クロード

先輩騎士様の名前。3作目にしてようやく出てきた。今回は犠牲になったのだ。イケメンはイケメンと絡む。古来から続くその因果の犠牲にな。


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