ePISODE tRACK[2] = nEVER gO bACK//最果ての記憶に
/* リボーンについて */
プレイヤーはシアイの中で「100」のヒットポイントを与えられる。これが尽きた際、プレイヤーは死体オブジェクトとなり、【デッド数】がカウントされたのち、規定の初期位置に生き返る事ができる。なお、やっている事はただの殺し合いのため、シアイ前に渡される"特別なデバイス"――"デッドベルト"を装着しないと大変な事が起こる(事例あり)。
"デッドベルト"自体はスマートウォッチのような形をしており、これが起動するとプレイヤーを"ゲーム"のキャラクターにしてくれる。原理としては非公開。
/* ウェポンついて */
・ハンドガン
・レーザーガン
・ロケットランチャー
・物理ウェポン
cOLが提供する殺し合いエンターテイメント【デッドエンドレコード】では、参加者に3つの銃火器と接近戦特化の物理ウェポンが与えられる。
それぞれの武器に特徴があり、各々使いやすいものを選ぶのが定石となるが、複数名でやり合うため、戦況に応じて武器を変えるのも作戦の一つである。
詳細は下記の通り。
・ハンドガン
形状は10インチバレルのデザートイーグルをモデルとしているが、手元のスイッチャーを切り替える事により連射モード(マシンガンモード)と、単発モード(バーストモード)を変更できる仕様となっている。火力は銃火器の中では最弱。その分連射に強く装弾数も多いため小回りが利き扱い易い。
主な使用者:
<★いちごドーナツ★>
嘘っこ 氏
<ラヴ&バイツ>
ラヴ・ダーティ 氏
<レンダマン>
セッケイ 氏
元<tOKYO通信>
DM 氏(現在は≪武蔵エクスキューションエリア≫を拠点に活動している)
元<wORLD.EXE>
wORLD.EXE 氏
・レーザーガン
スナイパー向きの銃。
弾速が一番速く、火力も高め。だが撃つ度に装弾の操作が必要で対面には不向き。
芋プレイヤー専用と揶揄されてる。
主な使用者:
<ポテトサラダ>
ボールに一杯のポテサラが食いてえ 氏
<ハマモトズ>
欲望 氏
<ハッとして!>
Good 氏
元<wORLD.EXE>
ばすたぶマーメイド.EXE 氏
・ロケットランチャー
威力最強。
リボルバータイプの特殊な形状をしており、6発纏めての発射が可能。
(ハンドガンほどではないが連射もできる。)
しかし装弾数が少くなく、弾の爆発範囲が大きいところがネック。狭いステージだと壁に当たり狙いを外す事もしばしば。ハンドガンやレーザーに比べ自爆の可能性もあるので、扱いには慣れが必要。
主な使用者:
<レンダマン>
パンクス 氏
<北酒場>
細川たか 氏
<sYNTHESIS>
### 氏(情報取得できませんでした)
元<tOKYO通信>
"p"氏(現在は≪デッド街≫にて"食事処 アリスポット"のオーナーを務めている)
元<wORLD.EXE>
共鳴.EXE 氏
・物理ウェポン
外見はプレイヤーによって変更が可能。主にゼロ距離専用武器で対象に当たれば一撃で倒せる。
銃火器と違い、弾の制限がないため運動能力のあるプレイヤーは御用達。
主な使用者:
<天倉組>
###氏 (情報を情報できませんでした)
<ラヴ&バイツ>
ルビー・バイツ 氏
元<wORLD.EXE>
ミー; 氏
(現在の所属は<レンダマン>)
###sWITCH(mAIN_sCENARIO)###
//メインシナリオに戻ります
バーチャルなのか、リアルなのか、そんな境界線はどうでもいい。心臓が高鳴っていた。生命の危機を感じた時、人間は咄嗟に身を守る。しかし生物的反応または脊椎動物の反射反応の恩恵に一喜一憂している場合じゃない。死の危険に正面衝突するため偏差値が一桁になるくらい頭が仕事をしない。とにかく逃げる逃げる逃げる――
「ったく、見つかるや否やロケランの雨嵐か。おいパンクス、やっと戦線復帰したと思えばなんだあのバカ攻撃は。お前やつらに恨まれる事でもしたか」
「知らねえええよおおお!!」
どごん、と後ろの鉄柱が爆発する。ステージオブジェクトは破壊不能だけどまるでステージごと破壊する勢いだ。手荒な歓迎だな。
「ちょっとパンクスー! こっちも牽制しよーよー! このままだと排水路まで追い込まれてまたキルされるー!」
「オメーはオレらと同行しないプランだろ! 隠れてたのになーにビビって出てきてんだこの!」
あーたこーだ味方でやり合ってるところ、再び爆発の嵐。エレベーターの位置からキルされた場所まで戻ったらこの仕打ちとは理不尽な。
加えて厄介なのが、ロケラン野郎以外にもう一体移動しながらこちらを狙ってるやつがいるところだ。居場所が特定出来ない限り、逃げても攻め手がない。
しっかし、なんだ向こうのクラブ。こちらの動きが分かってるかのようなタイミングでの迎撃に、殆ど定位置から動かずに待ち伏せ。まるで、自分たちのテリトリーに近かれたくないような、過剰な自衛だが……
「あの場に、何か意味があるのか」
そう思った矢先、ちょうど金網の床に差し掛かったところで目の前に爆撃が落下した。
顔を上げる。
「――! パンクス!」
すぐに理解した。これは最前を走っていたパンクスへの一撃。間髪入れずに後ろと横に激しい轟音が襲う。やつらどういうエイムしてやがる。後方のレンダを側の階段にあるくぼみに隠れるよう指示し、咄嗟の判断で俺とパンクスで脇にあった大きい排水管に身を隠した。このままだと死んじまう。
「ゴホッ、やべーぞセッケイ。HPが残り18しかねえ。次被弾したらキルされる……なあ、アイツら"ゴースト"じゃねえんだろ? ならもうさっさと引こうぜ? 無駄に死んでもなんも成果がねーぞ」
「そうしたいのは山々だが、やっぱり怪しいんだよ、あの連中。いくらなんでもこの狭いステージで動かな過ぎる」
「いやだからそれがなんだって――」
その時だった。俺のパンクスが声にならぬ悲鳴を上げた。
確認する。排水管に身を潜めたパンクスの直ぐ後ろに、黒いローブを着た女がいた。
「な」
体勢を整えるよりも前、その女はパンクスの首に腕を回した。なんという早さだ。こちらが武器を構えるよりも先に女のナイフがこちらに向いた。
「喋るな」
酷く、冷たい声だった。
フードで顔を隠しているために表情は見えないが、どこか作り物のような女だった。
「ふん。全く、ここは穴場か。先もまんまと釣れたわ。少しは警戒心というものを持ったらどうだ、貴様」
「なんだてめえ」
「喋るなと言ったのが聞こえなかったか? ボサボサ頭」
呆れたような口調で言うと、女はパンクスの"デッドベルト"に手をかけ、それをナイフで突き刺さした。破壊できないアクセサリな筈なのに、数秒も経たずして原型を無くし、10101010と二進数の文字列が並ぶだけとなっていた。やがてブン、と虫の羽音のような音ともに文字列すら見えなくなった。
こいつ、敵か? 一体何を。
「私の質問に答えてもらおう」
唖然とする俺の手前、パンクスが必死に抵抗する。腕っぷしはそれなりにあるパンクスだが、女はびくともせずに首にかけた腕に力を込める。
「ほう、聞き分けの無いやつだな。死にたいのか?」
「はっ! ここで死んでもどうせすぐまたリボーンするだけだ。それよか、てめえはさっきから何を」
そうパンクスが威勢よく女に噛みつこうとしたところだ。パンクスの様子に変化があった。
「っぐ…………が、あ、な、んだ。息が……でき……ねえ」
苦しんでいた。みるみる顔が真っ青になり、表情が一変する。おかしい。この【デッドエンドレコード】の世界では、あくまでヒットポイントに対してのダメージで生死が決まる。ヒットポイントが0になった時点でリボーンするだけで、痛みは仮想的なもの。まして首を絞めるだなんて行為で本当に苦しい訳。
「そうか、だから"デッドベルト"を」
……けど、それはこの【デッドエンドレコード】のシアイの中での話だ。"デッドベルト"を外せば、普通の生活と同じに、痛みは仮想じゃなくなる。
そう、あくまで【デッドエンドレコード】の世界内でだけ、"ゲーム"なんだ。
「あまりにも浅はかに生きておるな、貴様らは。さあ小僧、死ぬか私の質問に答えるか、好きな方を選べ。早くせんと、この男が"本当に"死ぬぞ」
こちらに刃をかざした女のナイフが微かに光る。まずい。こんな身動きの取れないところで襲撃されるとは。しかもマジもんの人質を取られた。なんだこいつ。
お手上げだ。
「分かった。お前の言う事を聞こう」
「ふっ、賢明だな。では潔さに免じて単刀直入に尋ねよう」
若干腕の力を緩めた女がゆっくりとフードを脱ぐ。暗くて見にくいが、随分整った顔立ちをしていた。
「貴様らの真名を言え」
排水管の外で騒がしく爆音が止まずに響くのに顔を顰めながら、俺は女の言葉を反芻する。真名、だと。それはつまり、プレイヤーとしての名前ではなく――リアルの本名を教えろ、という事なのか。
一瞬の躊躇い。しかし、パンクスの目が虚ろになってきたのにはかなわなかった。
さすがに目の前で殺人をされるのは困る。
「分かった。リアルネームを答えればいいんだな」
「ああそうだ。プレイヤーネームなどという架空の名前ではなくな」
「……一つ聞かせてくれ……お前も、最適化されてないのか?」
最適化。つまりこの街に来るまでの記憶を削除されているか。
リアルネーム、本名を訊きだすという行為は、そういう事なのだろう。
こいつは、現実――リアルの記憶がある。
「ほう。その反応、貴様話の分かるやつか。そうだ。私はcOLの干渉を受けておらん。"fALL波"とかいうあの忌々しい忘却電波からな」
思わず目を見開く。こいつ普通のプレイヤーじゃない。明らかに"外"を知っている人間だ。fALLなんて、若葉と俺くらいしか情報共有できてないのに。
「まあ、難しい話は後にしよう。確認とやらは済んだだろう? 貴様の名を言え」
どこまでも冷徹な口ぶり。本当、感情が無いようだ。
「名は……雪日向渓國。そっちのボサボサ頭はデフラグのせいで名前は分からん。あともう一人の女がいるが、そいつは」
「雪……日向」
すると女の顔がずいっとこちらに寄った。人形のような大きな目が俺を見る。同時、外の爆撃の光で女の姿が照らされ、その容貌を認識する。
不思議と、初めて会ったような気がしなかった。
「……そうか。ようやく手掛かりを見つけた」
「は? どういう意味だ」
瞬間。俺の左手にナイフが突き刺さっていた。
こいつ、やっぱり――
「殺すべき相手が、だ」