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ePISODE tRACK[1] = oVERTURE//序曲

###]zggxog@79e4z@g???nuzg 2nz@gfz@gut@zgtyuz@gdmzg d0r###


 ?ぇ??願?

 @@悪@@終わ@@

 ##目###て

 ?全???を?巻?き?戻???て??

 過####から、起##て#

 起@@@あた@を××して

 お願//か/

 ××して

 #私####××して

 不_完_で_の_酷な"今"_ら

 助###

 合@さ@@時間@@から

 助#て#

 そし_

 ××して


 /* ???ついて */


 少年は天を仰いだ。

 だが、見えたのは空ではなく、無機質な白の天井だった。

 ――あんなシミ、あったっけ。

 いつもは、天井なんて気にも留めて無かった。あの無機質の白に黒色のシミが薄く広がっていたなんて、初めて気付いた。

 少年は視点を天井から徐々に下げていった。たくさんの机、薄汚れた黒板、教卓、剥がれさけた時間割表、そして、窓に群がる級友たちの後ろ姿。まるで外に出ようともがいてる虫の如く、喚きながら外の様子を必死に、目に焼き付けようとしている。何があった。淀んだ空気。大気中の酸素が不気味さと化合している。少年は一歩窓の方へ近寄る――知っている。ここは自分の通う中学校の教室で、今は四時間目の真っ最中だった。けど突然、"あれ"が校庭に落ちてきて、授業どころじゃなくなったんだ。担任は腰が抜けて戸惑うばかりで、騒ぎは大きくなるばかり。ふと、級友の一人が少年の存在に気付いて声をかけた。眉毛の濃い坊主頭は、別段親しい訳でもない間柄の人物だった。少年は一言二言返事をして首を横に振った。否定の意思。それを示さねばいけなかった。でないといらぬ誤解を招きかねない空気があった。

別の女生徒が少年に近づく。

「雪日向くぅん。サツキちゃん、落ちちゃったねえ」

少年は眉間に皺を寄せた。

この不愉快に甘ったるい声音に寒気が走る。

「なんで俺に言うんだ」

「えーだってえ、これやったの沢田さんなんでしょ?」

 女生徒の顔がいたずらに歪んだ。歪み、淀み、渦を巻くように好奇の息を吐いた。安物のボディーシャンプーの匂いが鼻腔を抜けてくる。

「沢田さんと雪日向くんってよく一緒に居るし、何か知ってるよねー。サツキちゃんが落ちちゃった理由さぁ」

「……知らない。それにお前らがあいつを避けてるだけで、好きで一緒に居る訳じゃ」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 乾いた教室に甲高い笑いが響いた。まるで高音部が半音でぶつかり合っているような気持ち悪さがあった。倍音が余計、鼓膜にうるさく響いた。

「話、誤魔化さないでよお」女生徒がにじり寄る。

「何があったの? 虐め? 脅迫? あ、男取られた報復とか? アタシさぁ、サツキちゃんが屋上で沢田さんにボコられてるの見た事あるんだぁ……サツキちゃんが包帯もそのせいなんでしょ? ねえ?」

彼女は校庭に横たわる"あれ"を指差した。"あれ"の手には、ぼろぼろに破れた包帯が冬の乾いた風に晒されていた。

 周りは振り返って少年を見た。否定しても否定しても視線は彼に向いた。仲間外れを排除するように、多くの目が少年に向いた。犯人はお前だと言わんばかりに。

「……おい、言い掛かりはよせ。俺は無関係で何も知らない。だいたいこの件にあいつ……沢田が関係してるのかも分からないだろ。普段学校来てないやつが今日に限って屋上へサツキを呼び出して、俺らの前で突き落とした? お前らそんな」

「ねぇえ、じゃあ見てよ。サツキちゃんの"シタイ"の近くさぁ」

 がん、と女生徒が窓ガラスを殴った。大半の人間がそれに振り向いたのが分かった。この女はそういう事を平然とする人間だ。相手を敵と判断したら徹底的に追い詰めて、嬲り、自己の正統性を訴え、振りかざす。例えクラスメイト相手だろうが変わらずに攻め立ててくる。そんな人間と対立行動を起せば、酷い目に遭うのは自分だ。黙ろう、矛先が向かぬように――切迫と緊張の空気が生徒たちを支配していた。

 殴られた窓は割れそうな勢いで揺れて、空気を凍らせた。暴君の振る舞いを及ぼす女生徒が、サツキ、とそう呼んだ"あれ"目掛けて嬉々とした声を上げた。

「あの黒いグローブぅ、沢田さんがいっつも着けてるやつだよねえ! アハハ! なんでサツキちゃんと一緒に落ちてるのかなぁ! おかしーよねえ! アハハハハ――」

 ぐらりぐらり揺らぐ、その光景。

 女生徒の声が、級友の騒めきが、遠くなって薄くなる。

 冬の匂い。乾いた空気。

 空はどんより曇って、黒雲が鈍色の光を放つ時々。

 どこか、無機質に広がる天井のシミに似た、不気味な色彩のそれ。

 教室に飾られたカレンダー、隙間風で揺れてひっそり"落ちた"。

役目を終えるにはまだ早い。

だがすぐに巡る睦月如月弥生卯月××水無月文月葉月長月神奈月霜月師走


 ――何故サツキを殺した?


 ###sWITCH(mAIN_sCENARIO)###

 //メインシナリオに戻ります


 目が眩む。

 軽い頭痛と瞳の奥の違和感は徐に霧散していき、意識のぶれはやがて無くなる。

 天を仰げば、空でなく真っ黒な天井が出迎える。また少し視界が揺らいで戻った。

「おいセッケイ、ボーッとするな! 後ろだ! 後ろから来て――」

 一発二発、近くの壁に当たった。不愉快な焦げ臭さと地面に転がる空薬莢が離れかけた意識を覚醒させた。足音銃撃怒号全てが俺に飛んで、跳ねて、それを避け――ようとしたら死んだ。どうやら潜んでいた別クラブのやつにロケットランチャーをかまされた……らしい。見るも無残な肉塊オブジェクトに切り替わる自分に、なんだか笑える。

 痛みは1ミリも感じない。

「おいおいおい何だよ今の!? どっから飛んできたよ!? かぁー! あいつもあいつで緊張感なさ過ぎってうわあぶねえ! んぎぎっ! くそぉ! レンダもやられちまったしどーすんだよおおお!!」

 叫び倒すパンクスの声が煩く聞こえる中、リボーンカウント10秒の文字とともに身体が移動する。シアイ中は手首に装備する情報端末、"デッドベルト"には【デッド数】7の表示があった。そんなに死んでたのか、なんて呑気な事を思って3.2.1リボーンで初期位置に召喚される。ぐらりとバランスを崩しそうになりながら、体勢を整え装備のハンドガンを一発蒸す。この生き返る感覚は未だ慣れないな。本当。

 現在俺はシアイの真っ只中にいる。というのも、若葉から聞き出した例の件で、シアイを通して"ある事"を確かめる必要があったのだ。

 この街の一大勢力であるビッググラブ<天倉組>、どうもそこの"元"関係者が結構アブナイ事をしようとしているらしい。普通の"ゴースト案件"とは一味違う、フセイ行為を行う者。cOLからの謝礼金云々の前にこれは俺たちの生活にも関わるのだ。なるべくさっさと何とかしなければならないため、情報収集と思って飛び込みで参戦したわけだが、くそ、こっちが死んでばかりじゃ意味がない。改めて気合を入れ直していざ戦線へ向かう。

ステージ自体が小さい"タービン"という施設でのシアイなので先ほど死んだ場所へは直ぐに着く。が、あまり急いでもさっきのように死角から狙われたらただの自殺。警戒しながら細かい隙間を縫って足音を聞いて戦況を見極める。

ここで大事なのは立ち回り。シアイではプレイヤーの能力はゲームみたいに数値化されたりしないから、差が出るとしたらこういった戦い方の面だ。敵に【キル数】を規定値まで持っていかれる前になるべく牽制しておきたい。シアイから出られないのも嫌だからな。

「ちッ、見晴らしのいいエレベーターの前で出待ちかよ。この感じだと排水路の方も同じか」

 俺らを含め参加数は3クラブ。各クラブの人数も同様に3という小規模戦闘となっているが、シアイではこういう待ち伏せも多い。とにかく別ルートを辿って相手の隙を突いた方が良いだろう。

「合流は後回しにしたいが」

 寧ろ、待ち伏せされる戦場の場合は固まってたら狙われるので、バラバラに立ち回りたいのが本音だ。だが、いかんせんうちには脳筋女のレンダが居る。俺かパンクスがバックで指示を出さないと、突っ込み隊長所以、自爆する可能性が高くやつの場合さっさと合流が吉。あいつ、指示役居ないとマジで猪突猛進だからな……よく前のクラブで良い成績出せたよ。

 と、思った矢先

「よぉし、いっくぞー!!」

 真正面から小柄な女子がゴツいチェンソーを振りかざし、エレベーター付近にて出待ちしていたプレイヤーを奇襲していた。相手は驚いて何発かレーザー弾を発射したが、動きと読みと華麗なステップですぐに距離を詰めて一刀両断(チェンソーだが)。見事物理ウェポンの恩恵で相手は一撃でミンチとなった。

「勝ったあ! へへん、さっきは敵が多くてキルされちゃったけど、タイマンならボクは絶強なんだからねっ。甘く見るなよーぅ!」

 デカい声で何言ってんだか、あいつは。

「……身体能力はさすがだが、こんなステージで一番高いとこでやり合うなんて、相手に殺してくれって言ってるみたいなもんだぞ、レンダ」

 ぶんぶんチェンソーを振り回す少女――レンダがこちらに気付いて「見てたんだ!」と手を振り返す。こいつの強みはあくまで1対1。銃を使わず素早く間合いを詰めて物理ウェポンで敵を屠るのはダントツ。だが、相手が複数となれば話は別。精々敵が密集してるとかならなんとかなるが、この辺りは対策されてる。今のは単に運が良かった。

「ステージが狭くて助かったが……それよりレンダ、さっきキルされる前に"あいつ"は確認できたか」

「あ、例のアーマーの人? うーん正直違うかなぁ。ポジショニングは良いけど、ムーブは上手くないし、ランチャー撃って漁夫ってるだけってインショー」

「じゃ、見当違いか」

「めいびー」

 周囲を警戒しつつ進み、レンダの言葉に肩を落とす。今回"ゴースト"と踏んだ相手クラブは中規模クラスのため、今回参戦してある3名に対象がいるかは不明確だった。というのも、若葉から貰ったデータにはプレイヤープロパティこそ記載されているが、"ゴースト"の連中となるとシアイ時は戦闘服で顔を隠すし、それこそ外見やプレイヤー自体を偽装してくるため、見てくれでの判断がし辛い。

だから相手のムーブや戦い方を見て一体目星を付けたのだが、レンダの言葉が正しければ、そいつはハズレで間違いない。"ゴースト"であれば、実力云々の前にバレないように立ち回るためムーブは必然的に上手いのが往々。壁抜け野郎なら、敵に壁抜けの瞬間を見られないよう動くし、リロード無視野郎なら、弾切れを演じて隙を作る。そうやって、あからさまにならぬように振る舞うのがフセイ者の特徴。それにあまり一人のやつに固執するのも良くない。さっさと別の候補を検討した方が良さそうだ。

「そういやセッケー、その一味違う"ゴースト"っていうのは具体的にはどういうのなの? ダメージ無効化とか一撃必殺とか、そういうの知りたいんだけど」

 先ほど倒した敵の懐から回復アイテムを奪い終わったレンダがこちらを見上げる。肩出しの戦闘服が薄く上下している。

「明確なチート内容は掴めてない。ただロケランで稼いだ【キル数】が異常って事は分かってる」

「男か、女かとかは?」

「リアルは女プレイヤーだ。けどシアイ中の外見だと判断つかないな。あと若葉曰く左手に包帯みたいなのがあるって――」

 その時、息が早くなった。

 なんだ、この感覚。

 妙に見覚えのあるような。

「? セッケー?」

 レンダの声に我に帰り、首を横に振る。たまたまだ。たまたま残存している記憶と写真の人物の格好がリンクしただけ。

 俺はレンダを伴ってエレベーターから離れた――こんな目立つ場所で今やるべきは考え事じゃない。そう言い聞かせて、もやもやと頭を浸食する、違和感みたいなのを銃声で掻き消して……。

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