tRACK[1] = <rENDAMAN>// <レンダマン>
闇の中に霧がある。
煌く。そして、消える。その繰り返しの中で浮かび、可視化されるのは、幾分の少年少女の姿。その足音は闇の中に大きく響き、消える――かき消される。この地下施設には多くの音が混じるためだ。
水、腐ったファン、甲高い怒号、そして銃声と悲鳴。
ここはいつだって、溜まり場だ。
「オイオイそりゃねぇーぜチーターさんよう!」
半ば笑い声を含みながら走る走る。同時に9mmパラベラムが空を切る。ああ、死にかけた。少年少女のどちらかが叫んだ。それに追従して足音は心音とユニゾンし華麗なステップを踏む。魅せる。が、見えぬ。こいつは殺し合い(インザ暗闇)。笑う、抗う、舐める、叫ぶ、舐められる、ガなる、割れる、ダレる。
「はん、いいご身分だあの"ゴースト野郎"! こっちは生活費かかってんんのによくもそんなワルイコトができるよな! ほらァ、ミッシェルくらえ!」
「あはは、グレネードどかーん!」
「おい二人ともかけこめっ! 自爆するぞ!」
スマホから流したGマイナーのロックンロールと爆撃、爆煙。もくもくもくと彼らの姿をかき消し暗闇の奥へと。"ゴースト"呼ばわりされた男は対象を見失い誤射。しかし誤差、といった範囲の弾道に彼らは悲鳴。どういうエイムだよ、叫び走り逃げる逃げる逃げる! そう、ここで死んでたまるか。もうあいつにデッドカウントを与える訳にはいかない。あと一回、ヤツらに殺されればそこでジエンド。賞金は持ち逃げされる。そう思い無我夢中、狭い暗闇をひたすらに息を切らして、いざ"例の場所"へ。体温は完全に上がりきっている。駆け込め飛び込めみ身を潜めろ――
「……目標、確認できません」
「チッ、撒かれたか!」
「あのガキども……まさか運営の犬とは。計算が狂ちまったな……だが、ここまで来たらやるしかない。野郎ども! 通報される前にあのガキどもをぶっ潰して――」
小規模な喧々轟々の中、突如一閃の影があった。気付いた時には温かい肉塊がそこに散らばり、デッドカウントを示す骸骨マークが一つ増えた。すぐさまもう一つ。顔を上げる。銃を構える。しかし全て遅い。そいつと目が合い、"ゴースト男"は息を呑んだ。
「な……! 上から降りてきやが――」
驚きが轟き、気付いた。
息を切らしながら地下施設の上――天井のダクトから指示を送るさっきまで逃げていた少年がいたことに。
「壁抜けチーターだろうが、物理ウェポンの前じゃ一撃だ。レンダ、やっちまえ」
そして目の前にさっきまで笑っていた少女が迫っていた事に。手には近距離用ウェポンのチェンソー。
「よぉーし! いっくよー!」
強烈な金属音がガなって、時空が歪んだかのような衝撃を男は感じた。抵抗する間もなく死滅しキル数がカウントアップ。天井のダクトから降りた少年二人と返り血まみれの少女、流れ続けるGマイナーのロックンロールの中で互いに親指を立てて、肉塊の山には下を向けた。
【kILL cOUNT】 = 10 //【キル数】
【dEAD cOUNT】 = 5 //【デッド数】
cONGRATULATIONS //おめでとうございます。
yOU aRE wINNER //あなたの勝ちです。
――人々の平穏無事は壊された。このディストピアに蔓延る"矛盾"たちによって。
しかしそれはだいぶ前から始まっていた。
だからせいぜい、自由にやらせてもらう。これはただの、"ゲーム"なのだから。
これはただの、崩壊のプロトタイプなのだから。