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勇者候補でしたが異世界から勇者が来たのでクビになりました。  作者: 紫煙
第二章 異世界勇者 ミフネレイカ
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任務

「グア!?」

「ギャ!?」

「キュ?」

 様々な呼吸音にも似た短い音と共に魔獣は絶命していく。

 今切ったのは、ドレイクリザード。異常に大きくなり凶暴な性格のトカゲ型の魔獣だ。

 危険度で言えばC級程度の魔物なのだが、伸縮の効く体で間合いを詰めてくるので油断はできない相手だ。相手なのだが、常日頃からリリスとグリドを相手に訓練をしていれば体が自然と反応し、その首を体から引き離していく。 


「っし!」

 

 掛け声を出し剣を滑らせるが、スパッといっているかといわれればそんなことはなく、ぐっと押し切るようなそんな感じ。

 それもそのはずでもはや血と脂でギットリとした長剣は、元の刀身の見えるところの面積の方が小さくなってしまっている。それでも襲い掛かってくれば、反射的に切れ味の落ちたそれで叩き切っていく。

 一種の作業と化しているこの行為に何も思わないなんてことはない。

 地面に広がる血だまりを見れば、気持ちが怯みかける。 

 ただ、魔獣の討伐。これが課せられた任務なのだからこれは必要なことだ。

 

「あんた、一体どんだけ戦ってきたのよ」

「まぁ、フィネアさんの予想よりも多いかな」

「何それ」

「早く、終わらせて魔森地に向かいましょう」

 

 後ろの方で少し大きいドレイクリザードを相手取り、その長い金髪を揺り動かしながら戦う彼女にそう答えればあきれたように、また魔獣に向き合う。

 ずっと名前を知らないままでいくのかと思ったが、シエテの提案を聞いてからあっさりと教えてくれた名前。

 ここで博識なら、もしかしたら名前に覚えがあったりするのかもしれないが生憎俺には一切なかった。

 まぁ、彼女のためで動いているわけではない。


「レントさん! 後もうひと頑張りです!」

「ああわかった」

 一生懸命、岩のような羽をもった魔獣『ロックファルコン』を相手取るレイカの前で明らかにオーバーな威力を誇る、ファイヤーボールの最上位魔術、『インフェルノボール』を放つシエテが何よりも今回の理由だろう。


 ハッキリ言ってしまえば、この任務は期間は長い。

 元をただせば、それこそこの任務ではレイカの特訓を含めていた。

 だからこそもっと時間をかけて、しっかりとレイカの成果としてギルドにも報告を出す予定だった。

 ただ、

『魔森地に行きましょう!』

 そういったシエテの提案が引き金となったのだ。

 

**********

「あんた、本気で言ってんの?」

「はい!」

「魔森地は化け物がいんのよ! だから私はこの山を取り戻そうと!」

「大丈夫ですよ、ね? レントさん」

「,,,,,,ああ、そうだな」

「なんなのよ?」

 こちらを縋るような目で見てきたシエテに応えれば、目の前のエルフの女性はただ戸惑うだけだった。

 実際、俺だってシエテの言っている意味はすぐには分かったが答えるには時間がかかった。もちろん、化け物はグリドやバーサークウルフのような上位種に違いないのだが、エルフ達を村に置きたい。

 暗にそういうシエテにすぐには答えられなかったのだ。

 そこにはいろいろなリスクだって出てくる。もしかしたら理解だって得られないかもしれない。それでもシエテは求めたのだろう。

 シエテ自身、同胞を救いたいのかもしれない。


 普段、我儘を言わないシエテの頼みを聞かないわけがない。

 だから、エルフの女性、フェネアの戸惑う声を置き去りにして俺たちは一刻も早く魔森地に向かうためには魔獣を狩り続けるしかないのだ。


「しゃあ!」

「よし!」


 視線を移せば、レイカが剣でドレイクリザードのその首に切りかかる。

 確かに手ごたえを感じたのであろう、レイカが歓声を上げるが、

「グア」

 まだドレイクリザードの目は死んでいない。

 というよりかは、最後のこの一瞬のためか、その目には力がこもっている。

 数を相手取ったからか、レイカの剣はそのキレ味を完全に失っていたのだ。

「え?」

 レイカも異変を感じ取ったのか声を上げるが、その瞬間にもドレイクリザードの口が大きく開きかみつこうとしている。

 ギリギリ間に合う。

 そうおもい、手を向け魔法を放とうとしたとき、

「何やってんの!」

「ギュ!?」

 すっとドレイクリザードの後ろから、フェネアさんが首をはねた。

「あ、ありがとうございます」

「ふん」

 まだまだ心を許してくれているわけではないだろうが、このままなら少しはどうにかなるかもしれない。


 そう思い、また敵に向かっていった。

ブクマ、感想、評価。 皆様感謝感謝です!

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更新頑張りマッスル。

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