第6の夜景画・第7の夜景画
第6の夜景画ここに始まる
私は夜の黒い肺臓の中に、ぐらぐらする頭を抱えながら歩いていた。
私は降り積もった枯葉の上を、その暗さに、じっと、見張られながらどこまでも歩いていった。
やがて、こんもりとした樹木のアーチの中へ入り、その暗さの中に、ほっと一息を付いた。
確かに雨が降ってきているようだった。
私はその一滴を手に受け止め口に持っていった。しかし、それは木の葉のにおいでもなく、
夜気のにおいでもなく、それはなんとも不思議なにおいがした。
底深いうめき声が地の中から木々の間に木霊し、私を恐怖のどん底に突き落とした、
私は激しい嘔吐と眩暈を覚え、よろめく、足で樹間を駆け抜けまばらな林の中に出た。
そして、私は淡い月の光の下で見たのだった。
私の手のひらで受けたのは雨ではなく、
べっとりとした血糊であったことを。
第6の夜景画ここに終わる。
第7の夜景画。
第7の夜景画ここに始まる。
暗い春の野を私は幻覚に狩られながら渡り終わり山道に差し掛かっていた。
彼方に赤く燃えるような妖花が咲き乱れ、底へ吸い寄せられるように
歩んでいたのだ。
ふと、胸の痛みを覚え私はその一輪をつんで香りを吸い込んだ。
私はその瞬間、自らの部屋に、消えかかったランプの下で一編の物語を書き綴っている自分に
還った。
外には雨が降っていた。
それとも、葉先から夜露のしたたる音なのだろうか。
かすかで遥かな夢幻の世界へのそれは一つの扉だった。
私の紙の上に、1羽の小さなみみずくがうづくまっていた。
私はそれが指し示す方を見た。
壁にはいつの間にか穴が開いて一つの通路に成っていた。
私はみみずくのゆっくりした、歩みに従いながら、そこへ入っていった。
そこを出ると一面の暗い水辺が広がっていた。
水の上には、真っ赤なつる草がからみあい私の目を驚かせた。
大きな透明のしずくが私の上に滴り木々は血を吐いて狂いもがいていた。
私の頭に一つのうつろな春の夜があった。
そして、いつのまにか、みみずくは飛び去り私は一人春の野に退かされたのだった。
第7の夜景画ここに終わる。