第5の夜景画
第5の夜景画ここにはじまる。
重々しい夜陰は私の目を閉ざしてくすぶっていた。
私は一体何に追いかけられていたのだろう?
でも逃げなければいけない。心がそう命じていたのだ。
足早ににげるわたしのあとにそいつは迫ってきていた。
ずしりずしりと何者かの重苦しい足音が私の後ろに近づいていた。
足音は次第に大きく響いてきた。
「早く早く、あの老婆にもらった、タロットカードを、お前の周りに並べるんだ。
早く魔方陣を作って妖魔が近づけないように、手遅れにならないうちに。」
誰かかがそう私に叫んでいるようだった。
私は急いでポケットを探り、ボロボロになった羊皮紙で作られた、タロットカードを
取り出し、震えながら草の上に並べ始めたのだった。
やがて、並べ終わると一つのこつぼに入った死のどくろを抱えてしゃがみこんだ。
と、木の葉を震わせながら、大きな陰獣が現れた。
私は息をこらして、見つめその時に耐えた。
しかし、陰獣は私が見えないようだった。
やがて暫くねめまわしていたが、諦めたように、
低い絞るような、うめき声を残して去っていった。
そいつが木の葉と下草の彼方へ消え去ると、
それと同時に月が垂れ込めた雲のなかから、その真っ赤な血のにおいを
立ち込めさせて、姿をぬーっと現したのだった。
そうして、夜の静けさが一面に広がっていくのだった。
しかし、ギーギーと夜の鳥が月光におびえたように、そのとき飛び立ち、一瞬
深い月光の沈黙を破るのだった。
第5の夜景画ここに終わる。