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第4の夜景画

第4の夜景画ここに始まる。


私が一人、暗い夜の中に佇んでいると、それはいつのまにか、キラキラした一つの光る眼になっていた。

瞳はくぐもり、うずもれて、次第に光りを失っていくかのようだった。

思い出がとめどもなく奔逸して、収拾が付かないほどだった。


私の脳髄に重く滴る髄液の発光はしばたたいて静もっていた。


うつろな、光りの細い糸が、私のまなこを抉り出し、どことも知れず落ちていく。

どこでもなく、それは広い紫の平原に。


私は幾つにも、枝分かれした影になっていく。

どこへたどり着くのかも分からない。


私はひたすら落ちていく。

どこへでもなく、紫の平原に。


私には見える。

私の不在の瞳に一つの紫のゆらめきけぶる平原が。


私はどこからともなくそこに降り立つ。

軽やかに、そして私はそこでゆっくりと歩み始める。


私は薄い皮膜を通して何かを見ようとしたのだろうか。

影が流れ物象が皆かすんで遠ざかって行くとき。


私は遠くで巨大な鐘が重々しく鳴るのを感ずる。

なぜだろう。


その音は私の鼓膜を緩やかに破るほど重々しい。

私は紫色の霞の塊がまるで水中に絵の具を流したようにたなびいているのを見る。


私の目の前をかすめ、私はそっと、腕を伸ばして、その一筋の靄を捕らえた。


それはひんやりとして、

掴んだ指は桑の実を潰したような鮮やかな紫色に染まったのだった。


第4の夜景画ここに終わる。

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