第3の夜景画
第3の夜景画ここにはじまる、
私が眠りの馬にゆすぶられて何処と知れず夜の中をさまよって歩いていたとき、
いつしか、かなたに白く光る妖女たちの舞う、荒れた野が望まれるところまできていたらしかった。
彼女達は皆、一様に丹砂の赤い瞳を暗に燈し、唇には青い燐の紅を塗っていた。
そして、赤い瞳と青くぼんやり燈る燐の光が私の前方に輪を描き、揺れさんざめく宴を形作っているらしかった。
私は眠りのおとなしい馬から、そっと、降り、いつか、ガシンとした、防具を身につけ、矛を抱え、もう一方の腕には盾をかかげているのだった。
そのとき、ゆがんだ笑いが私の脳髄の中を駆け巡り、神経叢のかいまをゆるく旋回しだしたのだった。
私は盾を取り落とし、静かな狂気が去りがてに渦巻くのをじっと、こらえていた。
私はその間、視覚を失っていたのかもしれない。やがて視覚がよみがえり、と、同時に
私の目の前に紫の光る目をした女が一人いた。
横たわった、私を静やかに覗き込み、不思議そうに見つめているのだった。
しかし、上空には薄羽色の大きな梟が鳴き騒ぎ、私の胸には毒蛇の牙が折れて突き刺さっていた。
妖しげな女はまるで童女のような、笑いを唇に浮かべて軽々と走り去っていってしまったのだ。
薄緑にすきとおるガラスの胸は私を愛燐へと誘い、見えない小さな羽虫が地の上にそよいでいるらしかった。
そして、闇は、彼方に鋭い光の束で刺しぬかれてもがき、透明な血を流してのたうっていたのだった。
第3の夜景画ここに終わる。