第14の夜景画・第15の夜景画
第14の夜景画ここに始まる。
森が鬱蒼と繁っている夜、私はその中を一人で歩いていた。
木の葉が静に散りだし、森は息を潜めていた。
遠くに薔薇の木がありうすむらさきの花弁が揺れていた。
巨像の影が私の中でかげろうのようにたゆとい、それはひぐらしのように私の耳の中にまで響いていた。
私は立ち止まり夜気のなかに溶けかけている遠くの薔薇の木を見つめていた。
時間が流れていき、水晶に化石していくようにな薔薇の花を私は放心した目で追っていた。
第14の夜景画ここに終わる。
第15の夜景画
第15の夜景画ここに始まる。
私ははずっと物思いにふけって、あるいていた。
その白い柵は遥か彼方まで続き、何か、閑散とした荒れ果てた町を妖しげに彩っていた。
無言で通り過ぎていく,亡き乙女達の血まみれの霊気が私に微笑していた。
私はなおも、池のほとりを音のない枯れ草の上を歩み続ける。
私の魂は揺らめき、滑りながら果てない幻堂の中へ落ち込んでいく。
私が再び目覚めたとき、既に夕べとなり、夜となっていた。
気が付けば昨夜のままに、古びた机に向かいペンを持ったままで、眠っていたのだった。
私は昨夜疲れきって町のざわめきの中から帰ってきた。
頭痛が襲い背中には冷たいミイラの歯形さえ付いていた。
私は扉を開きそしてこの机に向かった。
ランプを点けやっと静もってくる光の中でペンをとり心の中のわだかまった血色の夜のものがたりを書こうとしたのだ。
私は昨夜の記憶をたどり始める。しかし、思わず眩暈を感じしゃがみこんでしまう。
冷たい汗が吹き出し、心音が過敏に感ぜられるのを必死にこらえた。
やがて治まってくると私はゆっくりと立ち窓のところへ急いだ。
想いカーテンを押し開け私は外を見た。
冷たい石の歩道に人影はなく、街灯だけが青く路面を照らしていた。
私は冷気が押し寄せてくるガラス窓に頬をつけ、なおもぼんやりと見下ろしていた。
ふと、背後に何かを感じて振り向いた。
底には白い寝室衣の妹が立っていた。
妹はまるで、うずまく妖気のように佇みやがて消えた。
そして、私の中に再び拭いがたい疲労がのしかかってくるのを感じるのだった。
最後の夜景画ここに終わる。