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11/12

第12の夜景画・第13の夜景画

第12の夜景画ここに始まる



また、夜が来た。

一切は暗く、あたりを埋め尽くし私の後に引く影さえなかった。

私はロウソクの火を吹き消し本を閉じた。


あたりに蝶の鱗粉のような生臭い闇が漂っていた。私は立ち上がり、ゆっくりと寝室へ歩いていった。

数々の甘美な夢や希望が私の中でいつしか、潰え去り、やがて恐ろしい幻の人魚たちが私の肩越しに痺れるような唾液を滴らせていくのであった。


「いけない。戻るんだ。影が私の視界の中に立ち尽くしている。」


死人たちはゆっくりと、棺のふたを開けて身をもたげた。

青白い月光の下にあって、私の脳はなめくじで一杯になっていた。


ふと彼方を見やると、そこにはぬらぬらするような、赤い月が昇りかけていた。

そして、月の照らした中に私はふと、妹が来るような気がしてふるえた。



第12の夜景画ここに終わる。






第13の夜景画ここに始まる。




夜が生暖かく、私の周りにもあった。

私は沈んだ心を抱いたまま、そっと、起き上がった。


地下室に通ずる城の鉄門が低く軋み、風は静かにヒースの荒原を吹き渡り死んでいく老婆の

みぎわの声のように響いていた。

私は死んだ妹のことを想っていた。


私は出かけなければならなかった。


私が歩み始めると近くの森の中に、幾筋もの、美しく青紫に光るナメクジの群れが灯を燈し始めた。


ぼんやりと、青い燐のように、光るナメクジ。


私はその下を潜り抜けて、夜の陰気な原へ出て行った。



第13の夜景画ここに終わる。



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