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小序
小序
いつの頃からだろう。
私の中に、一つの、遠くけぶる心象画が存在し、私は夜毎、その風景の陰鬱な絵画館へ遊魂して
さまようのだった。
私の心象画集には夜の絵画がたくさん収納されていて、それは古びた幻想の絵画館に展架されているのだった。
狂おしい夜、私はそれを借り受けて、一人幻想絵画館に遊ぶこともたびたびだった。
ある夜、私は遠い思い出にふけりながら、ふとその夜の絵画集のことを思い出していた。
もう、何十年もほったらかしにしていたその画集、
再び開いて見ることを私の心がひどく欲しているのだった。
それは気の遠くなるような心象の冒険であった。
そして、夜の絵画館での凶脳の一夜が終わると、
おもぐるしい朝の目覚めに私は還魂して現実との軋轢に苦しむのだった。
しかし、再び、夜が来ると、憑かれた様に、私は見えざる幽谷のあの、奇怪な絵画館へと再び遊魂して凶脳するのだった。
なぜなら、夜は決して秘密を明かさず、私の前で永遠に一つの謎としてあり続けるのだから。