決闘
失ってからでは遅かった、もう一度あの時を…
あの事件以来タイガは森に来なくなった。私がなんとかしないと、でも考えてもわからない。
フクロウ先生に相談することにした。
「タイガの事件のこと知ってますよね?」
「あ~しっとるとも、なんとも悲惨な事件じゃ。」
「タイガを救いたい、でもどうしていいかわからなくて。」
あれは誰のせいでもない、彼のせいでも、ましてやリラのせいでもない。」
「でも…」
「なら君しか出来ないことをすればよいのじゃ。」
「私にしかできないこと…考えてみます。ありがとう。先生。」
リラはフクロウ先生の所からでて思った、最近体調が良くなって少し横幅も前より…
こんな時でも先生は元気だな~
次はモッグンのところに行くことにした
「やぁ~モッグン相談があるんだけど。」
モッグンは頷いた。
「タイガの事だけど、私に出来ることってなんだと思う?」
「僕の場合だけど君が傍にいてくれるだけで、元気が出るよ。」
モッグンはリラをみた。
「そっか、モッグンらしいね。じゃあ元気がでるように人参でももっていこうかな?」
「人参で喜ぶのはリラだけだよ。」
二人は笑いあった。
「ありがとうね、モッグン。」
「かまわないよ、気をつけて。」
リラは野菜畑に向かった。
元気がないときはやっぱり人参だね。
それに大根、キャベツ、人参、人参。
こんなもんかな。タイガ元気でるかな
リラは不安だったがタイガの元へ向かった。
ここか、奥は暗い、呼びかけることにした。
「タイガ、可愛いリラちゃんが見舞いにきたよ~」
声が響くだけだった。
「タイガ居留守ですか~?」
やはり居留守のようだ。
「勝手にはいりま~すよ~だ。」
返事はやはりないリラは進んだ。
奥に進むと上に何やら蠢く黒いのが大量にいた、気味が悪くなったリラは進む足が速くなった。追いかけてくる様子はない。後で図鑑について足しておくことにした。
足早だったせいかすぐに広間にでた、リラは何かに躓いた。
躓いた物を確認するとタイガとわかり、目があったがわざとらしく叫んだ。
「タイガが死んでる~」
「ちっめんどくせぇ、死んでねえよ
なにしにきた?」
「タイガに会いに来ただけ。」
「会ったなら帰れ。」
「帰らないよ、もう少し話をしたい。」
「話すことはない。」
「じゃあ話さない、そばにいる。」
「いなくていい。」
「いる、ほっとけない。」
タイガは黙り込んだ。
「タイガ…あの事件はタイガのせいじゃ…」
「喋るな、黙ってろ。 」
「じゃあお土産あげる、はい、人参。」
ちらっとみたが興味はなさそうだ。
なら私たべちゃうからね。
リラは美味しそうに人参を頬張った。
「ちっこんな時でもうまそうにくうな。」
「だって美味しいじゃん。タイガも人参たべて元気だして、どうせ何もたべてないんでしょ。」
「人参なんかいらねぇよ、人参で喜ぶのはお前だけだ。」
「モッグンと一緒のこというんだね。」
リラは笑ったがタイガは無表情だった
いつもなら顔を見て笑いあう二匹、あの時のようにはもう笑えなかった。
その時、タイガのお腹が盛大な音でなった。
ぎゅるっるっる~
「お腹は正直だね、はい、人参。」
「しつけいな、人参はいらねえよ。」
「なんで?美味しいじゃん。」
「うまくねえよ、そっちのキャベツよこせ」
「なんで?キャベツ、人参でしょ。」
はい、キャベツといいながら、人参を差し出した。
「それ、人参だろ、ふっ。めんどくせ」
タイガはこのやりとりに少し笑ってしまった。
「あっ今笑った、少しは元気が出たみたいね。」
ご褒美にキャベツを差し出した。
タイガはキャベツにかぶりついた。
「こんな時でも腹は正直だしうめぇな。」
「じゃあ次は人参。」
「いらん。」
少しタイガの固まった心は溶けたように感じた。
「お墓作ったんだ?」
「あ~あのままほっとけねえからな。」
「そうだね、仲間たちのこときかして。私に紹介してくれなかったでしょ。」
「あ~あいつ等は肉食だからな、お前は狩りの対象だ。」
「そっか、タイガでも気を使うんだね。」
「うっせいよ、黙って聞いてろ」
「俺達は四匹揃えばなんでも狩れた。」
「一番、狩りがうまかったのがベンガル、いつも最後のとどめだった。」
「いつでも明るく、お調子者の俺達のムードメーカーだった。ホワイト」
「頭はいいが、変人なブラック、狩りの作戦を考えていた。それを伝えるのが俺の役目だ。」
「タイガなにもしてないじゃん。」
「伝える役はしてるだろ。」
「ふふ、一番疲れる役だね。」
「まぁな、もういねえんだな…」
タイガはうつむいた。
タイガの元気を取り戻したいとリラは思い、思いついた。
図鑑を取り出し、タイガの仲間たちの絵を書き始めた。
あっというまに書き終え図鑑をやぶいてタイガに渡した。
「タイガにあげる。」
「いいのか?相変わらずうめえな。」
「今にもでてきそうだ。ありがとな。」
「タイガがありがとうだって。」
「うっせいよ、黙って受け取れ。」
「タイガは孤独じゃないよ、私もいる、森の住人達もいる、三匹の思い出もある。」
「あ~わかってる。でも許せねぇんだ。」
「奴が?」
「いや自分がだ。」
「あれはタイガのせいじゃない、私がちゃんと声にしてれば…」
「お前のせいじゃね、俺がお前の忠告をきかなかったからだ。」
「でも…私が声にだして伝えていたら…」
「そんなの関係ない。」
「自分ばかり責めないで。」
「わかってるよ、けど……」
タイガはまた黙り込んだ。
「けど…なに?いわないと分からないよ」
リラはタイガを覗き込んだ。
「けじめをつけねえと前にすすめねぇ。」
「それは奴を狩るってこと?」
「そうだ、このままにはしとけねぇ。」
「だめ、タイガだけじゃ危険すぎる。」
「わかってる、そんなこと。」
「タイガがいくなら私もいく。」
「お前が来ても役にたてねぇよ。」
「わかってる、でも何か手伝いたい。」
「気持ちだけでいい。後は俺がけりをつける。」
タイガの決心は固かった、何を言ってもとめることができない、何もできない自分にリラは落胆した。
いや、おまえに救われた、っとはタイガは口にしなかった。
「分かった、でも絶対むちゃはだめだよ」
「あ~また一緒にキャベツくおうぜ。」
「そこは人参でしょ。」
二人は笑いあった。
「タイガ元気になったみたいだしそろそろ帰るね。」
「あ~気をつけてな。」
リラが帰って少しした頃だ、奴が挑発してきた。
「糞タイガ、聞いてんだろ?お前の仲間と遊んでやったライオネル様だせ。』
「……」
『おぃ、むしか、びびっちゃったのかな?くそタイガちゃん』
『黙れ、何のようだ?』
『やっと答えたか、暇なんだよ』
『お前の仲間たちみたいに玩具になれよ。壊れちまったがな』
奴は大声で笑っている。
奴の挑発にのってはだめだ、冷静に。
『そうみたいだな、今度は俺が遊んでやるからこっちにきな。ライオネルちゃん』
『あぁ?なめてんのか?さっさとかかってこい、仲間たちみたいにしてやるよ』
タイガは考えた、どう攻めるべきか?まずはライオネルの背後から噛みきってみるか?
ライオネルも考えていた、糞の事だから背後から攻撃してくるから、一回くらいかましてから絶望を味あわせてやるか。
勿論、タイガはライオネルの心をよんでいた。ゆだんしてやがる、なら思い通り背後から噛みついて終わらしてやる。
ライオネルが洞窟近くまできた、タイガは背後をとるため、暗闇に身を潜めた。ライオネルからはこっちは見えていない。
きた…タイガは一気にいった。
奴の背後から首もとにかみついた。
「ぐぁぁ~ぁ~いてぇ~」
タイガは勝ちを確信した。
だかその時だ、タイガは首根っこを掴まれ、前方に投げられた。
「せっかく背後から噛ませてやったのにこんなもんかよ、雑魚。」
タイガはなにもいえなかった。
奴の強靭な筋肉の前に歯が立たなかったのだ。
どうりであいつ等でも敵わないわけだ。俺がいたならなんとか狩れたかもしれないが。
まだ勝機はある、奴の心は読める、攻撃をかわすくらいならできる。
よく観察しろ、弱点をみつけだせ。
やつの攻撃をなんとかさけ、ひっかくがやはり通用しない。
それどころかやつの動きが段々速くなり力も強くなってきた、心もよみずらい、なんだ?
こいつ無意識に動いてる?
反応を見ることにした。
「おい、筋肉ばか。」
少しピクッとは反応したが、やはり心は読めない。タイガの体力がきれてきた。足が動かない。
「はぁ…はぁ…はぁ…やばい。」
タイガは追い込まれた。
約束は守れそうにない、リラ…ごめん
今からお前等のとこにいくからな
タイガは死を受け入れようとしたとき、光輝く中に仲間たちの声がした。
「今回留めをさすのはあなたに譲るわ」
ベンガルの声だ。
「なにあきらめてんだ、ささっと狩るぞ」
ホワイトの声だ。
「指揮官殿、作戦内容は四方からの同時攻撃、奴の目を潰す、それだけだ。」
ブラックの声だ。
「これが死か?死んでまで狩りとか笑えねぇな。」
「何勝手に死んでんだ?ささっと立て。 」
夢?思い出がよみがえっている?
「まぁいい、やってやんよ。」
四匹は奴を囲んだ、それと同時に襲いかかった、左右から攻撃したブラック、ホワイトが殴られ吹き飛ばされそうになったが、なんとかしがみついている。
手はふさいだ、後は俺とベンガルで両目を潰しにかかったが、ベンガルは奴にしがみつき暴れているホワイトにぶつかりながらも首元になんとか噛みついた。
あの体制からさすがだ。片目だけでもタイガは爪を立て、抉った。
ライオネルはあまりの痛さにうめき声をあげた。
「がっは、目が…いてぇな、くそっ」
ライオネルは何が起きたか確認している。
ん?意識が戻った?痛みで。今なら心がよめる。
ライオネルは自分が狩った奴がいて焦っていたが高揚していた、
手をゆるめずもう一度いくぞ、留めをさす。また同時攻撃だ。
今度はうまくいった、左右背後から噛みつき、俺は奴の正面、首元をかみ切る。
「終わりだ、ライオネルちゃん。」
「はっまだだぜ、油断したな。」
瞬時に心をよむと、なっ!奴も能力もち?
やばい、くる。
タイガはギリギリのところで避けた、そう、奴の腕がのびて、俺の喉元につかみかかってきた。
「危なかった…お前ら知ってたか?」
「知ってた、楽しかったでしょ?」
「報告し忘れたであります。」
「ちっ大事な事狩る前にいえよ。」
『では、指揮官殿作戦を伝える、グルグル大作戦だ、奴がのびるのは腕と足だけだ。牙も爪ものびぬ、アホだ。
まぁ一応気をつけておく事だな。』
『指示をだす、ホワイト、ブラックが腕を誘導、ベンガルは撹乱させて足をもつれさせる。以上だ。行け。』
ベンガルは左右に動きながら、攻撃をかわし始めた。
ホワイト、ブラックは奴の腕が伸びた時に反対側に回るを繰り返した。
やはり、奴は馬鹿だったな。
あっというまに腕がもつれた、ライオネルはうめき声をあげ、もがいている。
足はベンガルがうまいこと腕にはさめていた、器用なことをする。
奴は自分の腕と足で動けない、
「さぁ~タイガやっておしまい。」
任せとけ、タイガは近寄り牙を立てた。狙いは勿論首、次は体勢もいい。かみきってやる。近づき首にかみついた。
奴の首からは大量の血が吹き出した。
「俺の勝ちだ、くそっ。」
タイガの体力はもう限界だった、足がよろめき倒れた。
「はぁ…勝った。」
奴は最後の力を振り絞り叫んだ。
「ぐっ…ゲホッ…ゲホッ…へっまだ…死ねね…
お前も…み…ち…連れ…だ…」
奴は最後の最後に首を伸ばしてタイガに噛みつきにきた、タイガは寸前の所で転んで避けようとしたが、肩をかみちぎられた。
「ぐはぁ…」
タイガは肩を抑えたが血が止まらない、仲間たちが寄り添い、距離をとるため、タイガを担ぎはしった。
「待て、奴にとどめをささねぇと」
「あれだけの血流石に助からないでしょ。」
「それはそうですね。」
タイガを担ぎ森の中まできた時、仲間たちの光始めた。
「ん~これはきえてしまいますね。」
「まじかよ、なんとかならねぇの?」
「無理です、われわれがここにいること次第奇跡ですからね。」
「タイガはどうすんの?」
「ん~その辺の誰かに頼みますかね。」
「おぃ、誰もいねえぞ。。
「ちょっとどうすんのよ?。
「ん~限界のようです。」
そのまま、仲間たちは消えた。
タイガを森の中に放置して。
その頃、奴は執念でタイガ達をおいかけていた。
「く…そっ…死ぬかよ、最後の…晩餐…にしてやる」
一方、リラは無茶をしそうなタイガが心配だった。夜は危険に溢れている。前に奴に襲われてから夜はでないようにしてたがいてもたってもいられない、悩んだ末に向かうことにした
久々の薄暗い森は図鑑作りを始めた頃の高揚感が蘇ると共に恐怖もあった。
リラは前にフクロウ先生に貰った、救急キットを持って慎重に歩いた、まずは無事にタイガの元へ。帰りは送ってもらうつもりだ。
可愛いリラちゃんが危険を省みず訪れたんだから。
ぶつぶつ喋りながら、ようやくついた。
相変わらず暗く不気味な洞窟、まだ黒い蠢くものもいた。
奥についた時タイガの姿はなかったが驚愕した、大量の血に。タイガになにかあった?
リラは見回したが誰もいない。
最初は暗くてよく見えなかったが、地面に血の後があり引きずった後が続いていた。
リラはその血の後を追った。
血は森の方向に向かっていた、かなりの大量の血、生きているのが不思議なくらいに。
しばらく歩くと岩場に気配を感じた。リラは近づくと岩場の下には大量の血が貯まっておりそこに佇んでいた。
「タイガ?だいじょう?」
リラの言葉が途中で止まった、そこにいたのはライオネルだった、その姿に唖然した。自分の腕と足が絡みつき丸くなっていた、転がって移動してきたようだった。
それよりこの伸びている腕と足、まさか能力もち?
リラはじっくり観察していたとき、奴が動いた、まだ生きていた。
「へ…最後の…晩餐か…小さいが極上な肉だ…頂くぜ…ゴホッ…ゴホッ…」
奴はリラに近づこうとしたが、動けなかった。 もう死にかけていた。
「タイガは?」
奴はリラはをみたが、返事をしなかった。 タイガも近くいると思い探すことにした時だった。
「肉…にっげるな…お前を…くう…」
奴はリラに狙いを定めた、体は動かないが、首が伸びリラを襲った。
リラは予想外の動きに尻餅をついた。
そして…リラの…脇を噛みちぎられた…
奴は旨そうに食していた。
リラは猛烈な痛みに襲われた、痛みでまた思い出した、初めて奴に襲われた時の事を。離れた場所から引き裂かれたのは腕が伸びたからと理解した。
リラは何とか立ち上がりその場から離れようとした、意識が遠のく…
「タイガ…ごめん…」




