傲慢
あぁ~~ぁぁイライラする。どうなってんだよ、くそっ
急に餌が消えた、狩れねぇ近寄れねぇ
狩れそうな時もあったが、空から糞がふってきてきやがった、絶対許さねえぞ。
かなりストレスをため込んでいた
この溜まったストレスを発散したかった。 怒りが爆発しそうだ。雄叫びをあげ全力で走った。我を忘れて走って走って走りまくていた。
あれからタイガのおかげで奴の無差別の犠牲はなくなった、
もちろん、弱肉強食だから他の奴に狩られる時はあったが、それは生きるための殺生、やむを得ない。
そんな時に新たな失踪事件が起きた。
多いときは1日に数件、タイガは忙しいから頼めない、リラが調査にのりだした。
まず、目撃情報はない、急にいなくなるからだ。悩んだ末、とりあえずフクロウ先生に相談しに向かった。
「フクロウ先生、最近失踪事件の噂知ってます?」
「あ~聞いてるよ。」
「奴の次は失踪事件、色々起きるもんじゃな。」
「どうやって調査しようか悩んでて」
「そうじゃな、まずは失踪した物を一覧にするのはどうじゃ?
何か見えてくるかもしれんぞ。」
「そうですね、一覧と最後に何をしてたかと。情報もないし、やってみます。」
「気をつけるんじゃぞ。」
フクロウ先生の下を後にしたリラは思った、最近、何だがフクロウ先生は疲れ気味なのか少し痩せたようにも感じた。ただの年かもしれないけど。
まずは一覧、シカ、シマウマ、キツネ、ブタ、地上の生物ばかりだな、他にもいるかもしれないが、今の所空と水辺の生物は失踪していないようだ。
それに肉食な奴が好みそうなのばかり
まさか奴か奴以外にもいる?
いや、それならタイガの能力にひかかるはず。
次は失踪場所を特定しないとだな。
リラは失踪した動物の仲間に話をききにいった。
だいたいまとめると、普通にその辺で寝てた、食べてた、ぼ~としてたが、多かった。一人の時に急にいなくなるようだ。
でも一つ気になる情報があった。いなくなる前後に地響きと風がひゅっとふいたように感じたようだ。
竜巻かなにかで吹き飛んでいった?
んなわけないか。
それなら空飛ぶものの情報があってもいいはずだ。
だがリラは心にひかかっている事があった。
一番厄介なのはタイガみたいな能力持ちが他にもいる可能性は考えていた。
地響きに風、竜巻をおこせる能力?
リラは久々に興奮した。
新たな能力持ちが現れたかもしれないからだ。
とりあえず今日の調査をタイガに報告しにいった。
「タイガ、久しぶり、うまくいってるようね。」
「おぅ、当然だろ、でっ、どうした?」
「最近の失踪場所調査してて、気になることがあったから」
リラは調査内容を報告した、能力の可能性、奴か奴以外の可能性も。
タイガは気にくわない顔をしていた。
「お前、俺の指揮官ぷりみただろ?
奴でも、奴以外でもない。」
「常に見張ってるから奴には無理だ、それに奴は苛立ってた、狩れてない証拠だ。」
タイガはまくしたてた。
「そうかもしれない、あくまで可能性の話。」
「一応報告したけど、誰にもいっちゃだめだよ。」
リラはそこまでむきになるとは思わなくて驚いた。
それを読んだのかタイガ以外の能力についてきいてきた。
「やっぱり俺以外にも能力あるやついるのか?」
「ん~どうだろ?あれからタイガは見つけれた?」
「いや、意識してなかったからわかんねえ。」
「意識して探してみてよ。」
「あ~ついでだからやっといてるやるよ。」
二匹は別れると、リラは考えていた、少しタイガが傲慢になっていたことを、心のなかで呟いた。わかってくれてたらいいけど。
しかし、タイガは相変わらずヒーロー気取りだった。
私の気持ちを心で呟くだけではやっぱり伝わらなかった。
それからも失踪事件はおきた、私だけではどうしようもできなかった。
そして悲惨な事件が起きた、事件が起きる前兆もあった、それが失踪事件…
奴は我を忘れて走っていると、突然目の前に獲物が現れた。獲物も突然の事に驚いた。すぐに狩って喰った、空腹、怒り、渇き、喜びを感じた。
また狩りにでたが狩れない。怒りに任せてまた走った、すると目の前に獲物が現れた。
我を忘れて走ると狩れる事に気付いた
徐々にコツを掴むと生きたまま捕らえることもできた、やっぱり生きたまままるかじりのがうまい。
それから幾度となく狩った、生きたまま捕らえた獲物が命乞いをした。
ある情報と交換に、俺はその情報にのった、最近狩りがうまくいかないのは
俺の動きを把握していたからだ、その指揮官がタイガという糞だ、そいつは心が読めるらしい、糞タイガには仲間がいた、今は別らしいが。
俺はご褒美に逃がしてやった、一瞬だけ、すぐとらえてまるかじりしてやった。あの歪んだ顔を見るのは格別に気分がいい。
次は糞タイガだ、だかその前に苦しみを味あわせてやる。糞タイガの仲間たちの住処も聞き出してある。洞窟には奴らしかいないから狙いやすい。
苛立たせた分以上はやり返す、覚えとけ。奴は早く怒りをぶちまけたく行動に移した。
「よ~、お前タイガって奴の仲間だろ?」
「誰だよ?勝手にはいってくんな。」
「こっちが聞いてんだ、答えなくても狩るがな。」
「こっちは三匹いるんだぜ、お前にやられるかよ。ば~か。」
「油断大敵ですよ。」
仲間たちの生意気な態度に更に怒りを覚えた。
気付いたら一頭に飛びかかっていた。
奴らも肉食それくらいはあっさりとよけた。
「ヘラヘラしやがって、余裕かよ。かかってこいや~。」
仲間たちは余裕だったが、タイガに伝えた。
『強敵と戦闘中助け求む、ふぅ~っと』
タイガは仲間たちの余裕ぶりに焦りはしなかった、あいつ等なら大丈夫と。
実際、助けを求むふぅ~っと、とか、ふざけていた。
強敵の声はきこえないが、息遣いのような声は聞こえる。
『俺がいくまで時間を稼げ』
仲間たちは囲って左右から噛みつき、ひっかく、三匹の連携に奴も段々追い込まれていった。それと同時にやつの息遣いも聞こえなくなった。
狩ったのか? いや、仲間たちはまだ狩っている。
強敵の声がきこえない、なぜだ?
仲間たちの声にも焦りが見えた。
奴の強さは想像を越えていた、何も考えず無差別に攻撃しているようだ。
攻撃が空を切るときもあるが、それも最初のうちだけだった。気付けば一方的にやられていた。鍛えられた三匹の仲間たちでさえ、吹き飛ばされ、噛みつかれ、爪で抉られる。
奴の牙にかかれば、息の根を止めるのはたやすい。奴は憂さ晴らしとあてつけに徐々に痛みつけ始めたが、怯まない、タイガがきっとくる、タイガがきたら連携で狩れると。
奴は苛立った、この諦めないしぶとさと希望を持った目に。
だが、体力の限界は訪れたもう身動きがとれない。奴は一匹ずつ地獄を味あわす事にした。
一匹目は首を裂かれ、二匹目は目を抉られ、足をもがれた。最後の一匹は胴体をひきちがれた。
仲間の苦しむ声、後少しだ耐えろと言い続けた。
仲間たちのもとへ走った、苦しむ声は聞こえる。まだ間に合う。
走って走って走りまくったが、突然頭の中が静かになった、タイガは立ち止まった。
間に合わなかった、地面に立ち尽くし動けなかった。
自分の心臓の音だけが聞こえる、ドクドクッドクドクとかなりの速さで、そこに微かに声が聞こえた。
タイガ、タイガ、消え入りそうな声で
まだだ、諦めるな、走って走りまくった。自分に言い聞かせた。
俺なら絶対間に合う、走れ止まるな。
タイガは巣穴に到着した。
まだ声は聞こえる、間に合ったか。いそいで奥に向かったが、目に映る光景に唖然とした。
仲間たちの惨劇に、もう手遅れだった
みるに耐えない姿になっていた。
でも声は聞こえる、近寄ると一匹はまだ息をしていた、喉を裂かれて声はだせないようだった。
『タイ、、ごぼっごほっ』
「無理にしゃべるな、動くな。」
仲間はうっすら目をあけタイガをみて、何かを訴えた。
『いっ…しょ………もり……でっ……あっあっ…ばっれ…て…』
「もういいわかったから喋るな。」
仲間は笑った。消え入りそうな声で伝えた。
『きて…くれ…て…あ り が と …』
残りの一匹は感謝伝えると息絶えた。
タイガは絶望し叫んだ、夜があけても叫び続けたその声は森の住民にも響くほどに。
間に合わなかった、助けられなかった、大事な仲間を。
こうなるまでなぜ気付かなかった、
なんでだ?なんでだ?なんでだ?
何度も自分に問いかけるも答えがでない。
リラは異変に気付いた、叫び続けるタイガの悲鳴に。
あの夜からタイガは森に現れなくなった。そしてまた奴が無差別に狩りを始めたのだった。
リラはこの状況から推測した。
奴がどこからか情報を得て、何らかの方法でタイガの能力を封じ、密かに狩りをし、そしてタイガの仲間たちを惨殺して心を壊した事を。
最悪の事態は続いた、日に日に奴の無差別な狩りは悪化していく。
私たちが言葉にしていれば、ちゃんと向き合っていればこうはならなかったかもしれない。
これ以上悲劇は起こしてはいけない、手を打たないと森の住民達が全滅する。
リラは危険だがタイガのもとへ向かうことにした。




