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安藤有紀(分岐ポイント)

……やっぱり、二日連続で助けられないのは、

精神衛生上よくないか。


口惜しい気持ちを抑えつつ、

尾行していた男の姿が消えるのを待つ。


そうして、彼らが完全に見えなくなったところで、

改めて公園に乗り込んだ。






「――終わりっと」


男たちを軽く転がして、

今日はきちんと人助け完了。


分かってはいたけれど、

さすがにABYSSと違って一般人なら余裕だな。


さて、女の子は――


「切り裂きジャックだーっ!」


「……はい?」


切り裂きジャック?


「やばい! 来ましたぴきーん!

まさか実物に出会えるとは!」


「やっぱり日頃の行いって大事なんですね。

おかげで私、悪い人に絡まれることができました!」


日頃、一体何をしてるんだ……。


っていうか、さっきまでずっと黙ってたのに、

何かいきなり喋り出したぞ!?


「ではでは、この幸運に感謝しつつ、

さっそくながら第一問! じゃじゃん!」


「あなたはどうして、

不良を倒して回ってるんですかっ?」


あー……これは、あれか。


僕を切り裂きジャックと

勘違いしてるんだな。


まあでも、噂のジャックは正義の味方らしいし、

状況的にはあり得る。


このまま逃げてもいいけれど、

誤解されたまま校内で出くわしたら面倒だ。


「とりあえず、移動しながら話そうか。

絡んでた連中が目を覚ますと面倒だし」


「はい、それはもう喜んで!」


やったやったと、犬の尻尾のように手を振り回して、

僕の後ろをぴょこぴょこついてくる女の子。


……変わった子だなぁ。





「……じゃあ、本当に、

ジャックさんじゃないんですね?」


五回目くらいの質問にうんざりしつつ、

『そうだよ』と首肯する。


と、約十分間の説得が実ったのか、

女の子はようやく首を縦に振ってくれた。


「せっかく会えたと思ったのになぁ。

無念です……」


「っていうか、どうしてそこまで

切り裂きジャックに会いたかったの?」


「それがですね、実は私、

切り裂きジャックの調査をしていまして」


ああ……そういえば、

第一問って言ってたっけ。


「学園祭の出し物なんですが、

都市伝説の真実を追ってるんです」


「学園祭の出し物……?

ってことは、もしかして琴子と同じクラス?」


「……こっとんを知ってるんですか!?」


「知ってるも何も、琴子は僕の妹だし」


「おおう、まさかまさか!

あなたがこっとんのお兄さんだったとは!」


「いや、僕もびっくりだよ。

まさかそんなところで繋がってくるとは」


今更ながら、

ホントに助けてよかった。


これを見過ごしてたら、

僕は妹のクラスメイトを見捨てたことになってたし。


「そうだ、お兄さんのお名前を

聞いてもいいでしょうか?」


「あーっと……笹山晶だよ。そっちは?」


「はい。安藤有紀って言います」


「安藤さんだね」


「うひゃう!」


「ど、どうかしたっ?」


「いえ……名字で呼ばれると、

背中がこそばゆくなるんですよね」


……まあ、世の中色んな体質の人がいるしな。


「じゃあ……有紀ちゃん?」


「いいですね、それなら多い日も安心です」


「誤解を招く言い方はやめよう」


「あ、呼び方をお願いするついでに、

私と会ったことも内緒にしてもらっていいですか?」


「え、どうして?」


「実はですね、私がここにいたことがバレてしまうと、

みんなに迷惑がかかっちゃうんですよ……」


「……どういうこと?」


「さっき、切り裂きジャックについて調べてるって

言ってたじゃないですか」


「その調査の時に、危ないことをしないようにって、

キツく言われているものでして」


「もし先生にバレちゃうと、文化祭での出し物が

来園者の休憩室になっちゃう可能性がっ」


なるほど……そういうことか。


確かに、琴子は生真面目だから、

事実を知ったら報告する可能性もあるしなぁ。


「でも、現場に居合わせた以上、

生徒会の人間としては見過ごせないかな」


「うえぇぇ!? ちょっと待って下さい、

まさか発表中止ですかっ?」


「いや、そこまでする気は全然ないけれど、

危ない調査はダメだよねーと」


「そこも何とか見逃して下さい!

っていうか、見逃しましょう! 懇願です!」


「だって、今日も危ないことになってたよね?」


「あ、あれくらい別に危なくないです。

こっとんのお兄さんに対する愛情のが危ないですっ」


「どういうことなのっ!?」


「いやもう、ホントに規制されると困るんですよぅ。

何とかスルーしてもらませんか?」


「そう言われても、危ないしなぁ」


でもまあ、危ないことをしないなら――


「……!」


思考が、唐突にぶった切られた。


迫る危機に対する耳鳴りの啓示。


僅かに遅れて、

首筋に棘が刺さったような違和感が現出する。


その違和感が、じわじわと波紋のように表皮を伝い、

背中を粟立たせていく。


これは……。


この感覚は、そう――


狙撃!



「? どうしました?」


「いや……何でもないよ」


……どうにか間に合ったか。


けれど、正直かなり危なかった。

おかげでかなり手が痛い。


迎撃が本当にギリギリ過ぎて、一瞬、

上手くいったのか自分で判断つかなかったくらいだ。


……この矢の長さからすると、

得物はボウガン。


射手は……もう逃げてるか。


相手の殺気がかなり漏れていたから助かったけれど、

だいぶ冷や汗をかかされた。


軌道の把握がもう少し遅ければ、当たらなかったにしろ、

普通に避けて有紀ちゃんを殺していた可能性もある。


回避の手段を狭める策にしても、

何ともいやらしい。


それにしても、

まさかこんな街中で仕掛けてくるとは……。


「……やっぱりダメなんでしょうか?」


えっ――と呼ばれて振り返れば、

そこには、有紀ちゃんの困り顔があった。


「あー……ごめん、ちょっと考え事してた。

何の話だっけ?」


「今日見たことを、

お兄さんの権力で握り潰してもらう件ですっ」


「恥も外聞もなく直球で来た!」


「それくらい本気なんです!」


目と目の距離が十センチくらいになるまで顔を近付けて、

『私本気なんです!』とアピールしてくる有紀ちゃん。


うーん……これは、

止めても絶対に一人で暴走するタイプだよなぁ。


「えー……それじゃあ、最近治安悪いみたいだし、

暗くなってからは、一人で歩くのは止めましょう」


「今日はたまたま僕が近くにいたからいいけれど、

そうでなければどうなったか分からないし」


「警察のお世話になったりしたら、

クラスに迷惑がかかるんでしょ?」


「う……はい。その通りでございます」


「……それが分かって反省してるなら、

僕から言うことはないよ」


「危ないところに行かないとか、一人にならないとか、

やり方は色々あると思うから、工夫してみて」


「えっと……じゃあ、

調査を続けてもいいんですか?」


「危ないやり方をしないならね」


「おぉーう、やった!

ありがとうございますお兄さん!」


「でも、今日はもう帰ったほうがいいよ。

さっきの人たちがまだいるかもしれないから」


「はい、それはもちろんっ」


それに……ABYSSがまだ、

機会を窺っていないとも限らないし。


……待てよ?


だとすると、

有紀ちゃんとあんまり一緒にいるのはまずいか?


変に関係者だと思われでもしたら、

後々とんでもないことになるんじゃないだろうか。


でも、この子を一人で帰してしまうのは、

それはそれで心配な気もする。



*ここから分岐があり「送っていく」ことにすると以下のURLから「温子篇」第一章 切り裂きジャックの墓へ1に飛ぶことが出来ます。(初めて読んでいる場合は、そのまま次場面に進むことをお勧め致します)

http://ncode.syosetu.com/n9687dy/31/


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