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冒険記  作者: 夢野 幸
魔族編
95/138

息抜きも必要です・1


 ベソベソと涙を流すブルーをバーナーが背負い、申し訳なさそうに眉を寄せる美代がブラックの背中で肩に額を乗せ、ついには雷斗までが立ち止まり。

 一行はとりあえず休憩をしようと、大きな木の根元に座り込んだ。


「前の村ではゆっくり休めなかったからな、大丈夫か? 足が痛むな?」

「獣道を選んで歩いていますからねぇ、なんででしょうか先頭を行く黒疾さん?」

「これだけ障害物があれば、襲われた時に身を隠す場所も多いからな。ただ、すまん。てっきり慣れているもんだと」

「オレやボンドッツ、ダークは慣れてるけど……」

「私も、そんなに柔なつもりはないのだがな……」


 靴を脱いでみれば足の皮がべろんべろんにめくれていて、思い切り顔をしかめてしまった。いっそ見なければよかったと舌打ちをし、バーナーに足を揉まれているブルーと美代を見る。


「二人は大丈夫か」

「ごめんねぇ……。天気が悪くないのが、救いかな。具合は悪いけど、熱はでなさそう」

「バーナーごめん。やっぱり、歩ききらんよ。痛くて、痛くて……」

「大丈夫だよ、ブルー。どうする? やっぱり術を使ってもらおうか?」

「ううん、だって、なんかあったときにブラック達が疲れてたらいかんから……」

「大丈夫なんだけどなぁ」


 太陽が四回上り下りをしてからは、数えるのを止めた。普通の道を歩くのならばここまでの疲労はないのだろうが、なにせこれまでほとんど歩いたことがない獣道。

 ギリギリまでは頑張ったのだろうブルーが倒れ込み、美代がつられて座り込んだのが昨日の話し。その日の夜に足をマッサージしてもらっているけれど、潰れてしまったマメまではどうしようもない。


 すぐに術を使おうとしたブラックと美代だけれど、ブラックの方はもし魔族と遭遇してしまった時のために温存しておいてほしいとブルーから頼まれて、美代の方はシャドウから体調が悪くなっているのを見抜かれて止められた。

 たまに黒疾やボンドッツが獣道から普通の道に出て周囲を見てくれるけれど、まだ町や村の気配がないらしい。


「これは想定外だな、どんだけ辺鄙へんぴな場所にあったんだあの村」

「……だからこそあの男も、あの村を食い物にしていたのかもしれない。小物がやりそうなことだ」

「んん、ちょっと待って!」


 シャドウがバーナーの頭に乗り、ジィッと目を凝らして遠くを見つめ始めた。ブラックも同じ方向を見て、スノーも黒疾の肩の上から二人につられたよう視線を動かす。


「あっ! もう少し頑張れば都市があるみたいだよ!」

「この、声の多さは……うん、町じゃないみたい」

「うんとね! すごく大きいの!」

「心眼トリオの心強さよ」


 あてのない旅路よりも、目的地がある方がいくぶん気が楽になる。シャドウが言うにはあと半日も歩けばたどり着けるそうで、バーナーはチラリと黒疾を見上げた。


「……ブルーを任せた」

「おう、先に行ってゆっくり出来そうな場所を取ってこい」


 立ち上がると軽く飛び、シャドウを頭に乗せたまま走り去ってしまった。小さな村ならいざ知らず、都市でイフリートでの予約は難しいと考えたのだろう。


「さて、ブラックにスノー。案内してくれ」

「わかった」

「ブルー、もう少し頑張れな。ほら来い、背負ってやる」


 背中を向けてかがめば、首に腕が回されて、黒疾は雷斗の方にも目を向けた。彼が小さく首を振ると嫌らしく瞳が光り、問答無用で胸倉を掴まれる。

 ロクな抵抗をする暇もなく背負い上げられてしまい、ブルーの隣で頭を抱えた。


「デハ、スノーハ預カロウカ」

「頼んだ。それじゃあ行こうか」


 一度背負われてしまえば、どうしても積み上げられていた疲労を自覚してしまい。

 くありと欠伸を漏らすブルーの背中を優しく叩いてやりながら、雷斗は大人しく目を閉じた。




 日が沈む前に街道に出てみると、暖かい灯りが確認できた。そこで黒疾から降ろしてもらった雷斗はブルーを背負い、再び森の中へ消えていく盗賊を見送る。


「彼にとって、町や都市は休めない場所なのでしょうね」

「盗賊、だもんね。……だけど大丈夫かなぁ」

「あいつなら問題ねぇさ、あれでも盗賊団頭を務める男だ」


 後ろから聞こえたバーナーの声に振り返れば、彼もどこか表情に疲労を浮かべながらそこに立っていた。軽く頭を掻いて森の中に視線を運び、ヒョイと肩をすくめる。


「町中にいるよりも森の中の方が落ち着くだろうよ」

「そうだといいんだけど」

「心配するなって、とりあえず宿まで案内するぜ」


 と、雷斗からブルーの体を預かって抱きかかえ、先に歩き始めた。




 取ったのは全部で四つの二人部屋、部屋の中にも一人はのんびりと体を伸ばせるほどの浴槽がついていて、魔道具に触れれば魔術を使えなくてもお湯が出てくる仕様になっている。

 一見して高級だとわかる絹の敷布団に羽毛の掛布団、ベッドヘッドに埋め込まれた魔道具。これは手をかざすだけで明るさを調整できるものらしく、仕組みは企業秘密とのこと。

 

 旅館の中に入ったボンドッツとダークはただただ目を丸くして周囲を見渡し、美代と雷斗は旅館の受付で施設についての説明を受けている。

 疲労の限界だったのだろう、ブルーとスノーは先にブラックが部屋まで連れていき、シャドウがそれに付き添った。支払いまで終えたバーナーの腕を咄嗟に掴んだのはダークだ。


「バーナー、バーナー……!」

「とりあえず、二泊分だ。それ以降はそれぞれの体調を見て、出発するかどうかを考えよう。お金の心配ならいらねぇよ? 伊達に賞金稼ぎはやってねぇさ」


 二人がなんとなく表情を引きつらせているのは、こういった場所に慣れていないための緊張からなのか。

 歯を見せて笑いながら柔らかく頭を撫でてやり、手を引っ張る様に部屋まで連れていくのだった。




 部屋割りは美代とブラック、雷斗とブルー、ボンドッツとスノーとシャドウ、ダークとバーナーになった。とりあえず、ブルーとスノーが眠っている雷斗の部屋に集まって、各々好きに休んでいる。

 雷斗には治療術リペを使ってマメを治してやり、美代には魔力を流して体調を安定させた。ブルーにも術を使おうとしたけれど、せっかく熟睡しているのに起こしてしまうと忍びない。ということでとりあえずはそのままにしている。


「窓から月が見えるようになったら食事に行こうか、それまでは解散。念のためにいくらか渡しておくぞ、足りないようなら言ってくれ」


 ポン、と両手に出した小袋をいつものように渡してくれた。外に目を向ければすでに夕暮れの紫空で、あくびをかみ殺すとベッドによりかかる。


「休むならベッドに入れよ」

「はぁい。ご飯になったら、起こして……」


 と、スノーを抱えるブルーの隣にもぐりこみ、大きく息を吐き出して目を閉じるのだった。




 宿にいてもすることがなく、かといって特に欲しいものもないけれど、時間をつぶすために町の中を歩いていたら同じような境遇らしいボンドッツと合流した。そのままなんとなく一緒に行動していれば小さく服を引かれ、目線を同じ方向に向ける。


「……武器屋?」

「これだけ大きな都市ならば、あなたが望む得物も見つかるかもしれませんよ。寄ってみませんか?」

「ならば、目利きを頼んでもいいだろうか。あまり触れたことがないから、善し悪しがよくわからないんだ」

「えぇ、構いませんよ」


 中に入ってみると初老の男性がイスに座っていて、奥から子供が二人顔をのぞかせた。壁一面にかけられた剣や槍はなぜだかキラキラと輝いて見えて、ついつい口を開けてしまう。


「ふふ、お客さん。こういう店に入るのは初めてかい?」

「う、む。旅の最中に、自身の武器が欲しいと思って来た。こうにも美しいものがたくさんあるとは思わず驚いてしまった」

「ありがたいお言葉だねぇ、どんなものをご所望だい?」


 悪気の有無どころか、商品を売るうえではごく当然の問いかけだろうその言葉に、雷斗は口を閉じてしまった。本当に欲しいものを伝えるには、自身の一族を暴かなければならなくなる。

 刺青や過去に対する嫌悪はほとんどなくなったとはいえ、仲間でもない人族に話すのはまだ恐ろしい。


「……彼は雷系統の術が得意で、剣に纏わせることも出来るのですが。並みの剣では折れてしまうのです、そういったものに耐性がある武器を探しに来たのですが、あるでしょうか」


 ボンドッツがうまい具合に伝えてくれて、雷斗はホッと息を漏らした。男性はジッと二人を見つめて口を緩め、緩慢な動きで子供たちを振り返る。


「カカ、ウェスタ」

「はい!」

「うん、おじいちゃん」


 駆け寄ってきてイスに触れると、木がこすれるような音がして男性が動いた。カウンターの向こうから出てきた姿に、二人は思わず息を呑む。

 彼は両足とも、膝から下がなかった。


「旅人さんや、数日時間を貰えるかね?」

「……それは、仲間に相談してみなければわからない」

「そうか……。ぜひ、時間が欲しい。あのを打ってから早五年、兄弟剣を打ってからは四年になるか。炎や魔力を纏っても折れることなく、大切な者を守れるための剣。お前さんにも、そんな剣を打ってやろう」

「……? 私が纏わせるのは、雷、なのだが……」 

「あぁ、あぁ。わかっているよ、久しぶりに腕が鳴る、今日はこの町に泊まるのかね?」

「はい、その予定です。少なくとも二泊は」

「ならば明日にでも返事を聞かせておくれ、悪いものは打たないよ」


 車輪がついたイスを子供たちに引かれ、微笑む男性に小さく頭を下げると二人は店を出た。考え込むボンドッツを覗きこむように見てみれば視線が上がり、ふと口の端を緩める。


「事情を話せばあなたの得物を鍛刀たんとうするあいだ、滞在できると思いますよ。ひとまず帰って、相談してみませんか」

「ありがとう、付き合ってもらってすまない。そろそろ宿に戻ろうか?」

「そうですね。明日また、ゆっくりしましょう」


 ボンドッツはバンダナに手を触れて、雷斗は頭飾りを軽く突き。

 足並みをそろえるよう宿へと向かうのだった。




「――いや、確かにそうだが……唐突にどうした、どうしてわかった?」


 食事中、終始無言だったボンドッツが不意に顔を上げ、バーナーに訊ねたのは遊炎の事だった。

 その剣を打ってもらったのは、四、五年前かと。


「……もしかしてあの男性が言っていた、炎や魔力を纏っても、というのは遊炎の事だったのか?」

「待て待て、なんの話?」


 食べカスをつけているブルーの頬を拭い、お腹が膨れてきたのだろうかコクコクと船をこぐスノーを膝に座らせてスプーンを口に運んでやりながら、美代は目を丸くするバーナーの事を見ていた。

 周りの世話ばかりして皿の料理があまり減っていないことに気が付いたのだろう、スノーを引き取ってくれたダークに礼を言い、再び考え込むボンドッツに目を止める。


「実は夕方に武器屋へ行ったのですが、そこのご主人が雷斗さんの剣を作ってくださるそうで。その時に、炎や魔力を纏っても折れない剣を、と仰っていたのです。他の方を知らないのでなんとも言えませんが、もしかして……と思い訊ねた次第です」

「……おっちゃんか?」

「初老の男性でした」

「子供いた?」

「二人いたぞ、カカとウェスタ、と言ったか」

「依頼に行くときにはオイラもついていくぞ、そこのじいさん、おかしな値段をつけるから」


 どうやらボンドッツの予想は正解だったらしい。今度は、普通に食事を再開したバーナーに視線が集中する。


「おかしな値段って?」

「明らかに値が安すぎるんだよ。オイラの炎を遊ばせられる唯一の剣だぞ、それをあのじいさん、いくらと言ったと思う? 二百ガロンだぜ」

「……安すぎません?」

「ちなみに相場はいくらなの?」

「普通の剣で四百ガロンだ。あんまりにも狂った値段だったから相場の倍を押し付けた」

「十歳デ八百ガロンヲ出サレテモ、恐ロシカッタロウナ」


 眠ってしまったスノーを支えながら苦笑したダークに、バーナーがチラリと視線を向けた。


「それ相応な代物に安い値段をつけるのは、作品に対する侮辱だ。製作者がそんな値段をつけるとか、言葉は悪いがバカでしかない。買い手に、この作品はこれだけ分の価値しかありませんよ、と公言しているようなもんだぞ」

「親切心だとは……」

「思わん。必要なものが無けりゃあ、次の作品に繋げられないだろうが」 


 コップの水を飲み干して、バーナーは無言で両手を合わせた。お腹が一杯になっていた美代もいつものようにブラックに食べてもらい、同じように手を合わせる。


「今からはまた自由時間、出かける前には誰かに伝えてから、出来れば一人じゃなくて複数人で行くこと。夜更かしは程々に、疲れを癒すための宿で疲れてちゃあ元も子もないからな」


 冗談めかして言うバーナーにそれぞれ返事をし、久しぶりの温かい食事が終わった。




 さて、部屋に戻ってからは大人の時間。と言わんばかりにテーブルの上に並べられた瓶の山は、以前の酒盛りの時に呑み終えられなかったものたちだ。向かい合って座った二人は喉を鳴らして笑い、子供たちがいない時間を楽しもうと二つの杯を出す。

 あれから米酒だけは買い足しており、香りを楽しみながら相手の杯に注いでいった。


「……本当ニ、久シブリニユックリ出来ルナ」

「色々あったからな……。……ダーク、すまない」

「ドウシタ?」

「蒸し返してしまうが。オイラはあの時……リンを、護れなかった」


 杯をテーブルに置き、深々と下げたバーナーの頭を思わず軽く叩いてしまった。それでも反応を見せない彼の両頬に手を添えて顔を上げさせると、ゆっくりと息を吸い込んでいく。


「馬鹿ヲ言ウナ、ワシモ見テイタゾ。アレハ、リンガ飛ビ出シタ。アノ子ガアノ子ノ意思デ、無茶ヲシタノダ。ワシハ誇リニ思ウ、護ラレルバカリデ、泣イテバカリイタリンガ、勇気ヲ振リ絞ッタ」

「だがオイラが、映し身の術に……イフリートとオイラの姿を入れ替える術に、もっと慣れていれば」

「ソレコソ馬鹿ナ考エダ! オ前ハ無理ヲシ過ギル、ヨイカ、バーナー。マダ十四ノ小僧ナノダゾ、何モカモヲ背負ウ事ハナイ。モット、ワシヤ黒疾ヲ頼ッテクレ」


 琥珀色の瞳が悲しそうに揺れ、バーナーは頬に乗せられている手を優しく握った。その手をそのまま自身の額にきつく押し付けて深くうつむき、小さく身を震わせる。


「オイラは……何があっても、美代を守らないといけない。体だけじゃない、心も、何もかもを。もちろん、みんな大事な仲間さ。火炎族として鍛錬し、賞金稼ぎとして戦闘経験を重ねて、自身の使命を思ってただただ突っ走った。

 だけどどうしても、力が及ばない。守らないといけない人たちから、助けられてしまう始末だ。なぁ、ダーク。オイラには何が足りないんだ、それが判らない、もっと強くならないといけないのに、このままじゃまた、誰かが傷付いてしまうのに。それが怖いんだ」


 いつも先頭を進んで、自分たちが歩く道を示してくれる彼が吐いた弱音に、ダークは立ち上がると隣に腰を降ろした。胸元に頭を抱いてみても嫌がるような素振りは見せず、ポンポンと背中を叩いてやる。


「オ前ハ優シイカラナァ。フフッ、マルデ、本当ノ名ノヨウダ」

「オイラの炎は優しくない、だから……優火なんて名前、名乗れない」

「バーナーガソノ名前ヲ嫌ウナラ、ソウハ呼バン。ケレド、優シクナイ、トイウノハ全ク違ゾ? バーナーハソノママデイイ、ソノママノオ前ガ、何ヨリモ心強イ」


 ゆるりと首を振り、ダークの腕をすり抜けた。先ほど置いた杯の中身を一気に煽ると今度は瓶を引っ掴んで直接口に運ぶ、止めようと腕に触れれば乱暴に置いて、髪の毛を掴むよう頭を抱えた。


「ダークだって言ってたじゃないか、オイラが手加減をしてしまっていると、無意識に手を抜いてしまっていると。それがなければ、もしかしたら……!」

「モシモノ話シハ止メヨウ。ワシノ方コソ、スマナイ。我ガ一族ノ事ナノニ、何モワカラズ」


 目を伏せるダークに、バーナーは少し離れた場所にある彼の杯を取ると別の酒を注いだ。薄い桃色をしたそれを口元に着ければ驚いたように顔を上げ、零してしまわないよう恐る恐る手にしている。

 果実酒らしいそれは、上品なベリーの香りがした。


「正直、ブラックについては予想がついている。ブラック自身は自分の出身を知らないようだから、黙っておくけど。もしその予想が正しければ、あいつはそろそろ狙われなくなるはずだ」


 もらった果実酒を舐めるように楽しんでいたダークが、目を剥いてバーナーを凝視した。そんなダークの表情に苦笑して、今度はキチンと杯に注いで酒を飲む。


「……気付イテイテ、共ニ居テクレタ、ノカ……?」

「一族で見るようなことは絶対にしない、ブラックはブラックだろう? ふふ、あいつにとっては願ったり叶ったり、じゃないか? 少しでも長く、美代といられるんだから」

「……他ノ者タチモ、知ッテ?」

「いいや、たぶんオイラだけだ。大丈夫だよ、みんな受け入れる」


 見て判るほどに落ち込んでしまったダークの頭に、優しく手を乗せた。髪が崩れないよう撫でると立ち上がり、息を吐きながら背伸びをする。


「弱いところを見せちまったな、すまん」

「構ウモノカ。モット見セテクレ、ワシハワシラヲ救ッテクレタ人達ヲ、モット知リタイノダ」


 柔らかいその笑みに微笑み返し、ふらりと窓際に向かった。何をするのかと心配そうに見てくるダークに手を上げて窓のさんに腰を降ろす。


「気晴らしに、に行ってくるよ」

「付キ合オウカ?」

「ダークはここでみんなを頼む。イフリートを置いて行くから、何かあったら教えてくれ」


 普段よりも力がない笑いに目尻を下げてしまうと、イフリートが肩に座った。優しく頬ずりをしてくるのは、主人は大丈夫だ。ということを伝えているのだろうか。


「気ヲ付ケテ」

「ありがとう」


 そのまま姿を消したバーナーを見送って、ダークは少しだけ力を込めて、杯を握るのだった。


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