花は散る
城の門前、槍を持った兵士達が向かい合うように両脇に並び、その中央にモモが立っていた。
「皆さま、これからの旅路もお気をつけて」
「ありがとうございます。……また、いつか。ここを訪れても、いいでしょうか」
「もちろんですよ。歓迎いたします」
ふんわりと微笑んだモモに、美代は深く頭を下げた。ボンドッツ達は剣を交わした兵隊たちに挨拶をしているし、バーナーはポケットに両手を突っ込んだままそっぽを向いている。
どことなく難しい顔をしているのは、これからの事を考えているせいか。
「では、行ってきます!」
「これからに、幸があらんことを!」
バーナーの後に着いて歩き始め、振り返れば手を振ってくれていて。
大きく手を振り返すと、ただ前に進み始めた。
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「いよぉーう、神話の方は学べたかぁ?」
レイリアを後にして瞬間移動術で元いた場所に戻るなり、木の上からコウモリのごとく黒疾が現れた。驚いて体が跳ねればブラックがヒョイと抱えあげ、既視感を覚えながらもジト目な彼を凝視する。
「確かにレイリアなら神話も学べる、とは言ったがなぁ。だぁれが三日も四日も滞在しろっつったよ。ほったらかしかこの野郎」
「お前なら野生でもやっていけるだろ」
「人を獣かなんかみたいに言いやがって」
怒っているのかと機嫌を伺っていたけれど、どうやらそうではないらしい。互いに楽しむようニヤニヤと口の端を上げていて、これから先いったい何度、こんなやり取りが交わされるのだろうかと苦笑する。
「に、しても。たった数日だったのに、面構えが変わったやつもいるなぁ」
「何を嬉しそうにしてやがる、言っとくが盗賊の相手をさせる気は更々ねぇから」
「そいつぁ残念だ」
ヘリュウと彼の部下たちといい、黒疾といい。名が知れる盗賊たちは戦いを好むのかと思いたくなるほどの会話だ。
それともバーナーの方が盗賊たちに有名で、彼と戦うことで何かしらの名声が得られるのかと首を傾げた、その時。
黒疾が剣を手にしてバーナーが着物をまとい、わずかに遅れてブラックとダーク、ボンドッツが警戒した。
「死神、オレに言ってねぇ事は?」
「……あー、うん。ブラックと美代が魔族に狙われてる」
「こんの野郎! とんでもねぇ事を言い忘れてやがる!」
もう、何度目か。
空気が歪み、現れたのはダークネスとラオエン、カウンツだった。バーナーの背中が緊張し、ダークが目を細め、雷斗がバチリと雷を両手に放つ。
「こう、いつも人里を離れたタイミングで来るねぇ。なんか目印でもあるの?」
「お前自身が目印だ。妖精の魔力など、一度捕捉してしまえばいつでも辿れる」
「あぁ、そう。私がここにいる限り、どうしようもないわけね」
「その通りだ。諦めて我らが手中に入れ、妖精」
笑うラオエンから隠すよう、黒疾が美代を背に押しやった。新しい顔に目元を痙攣させるよう細める彼に、盗賊のお頭が楽しげに口角を上げる。
「セイントは渡さねぇよ。奪い奪われはオレ達の得意分野だ、存分にやろうじゃねぇか魔族どもよ?」
「人族が、粋がりおって」
会話も終わりきらないうちに、真っ先に剣を振りかざして突進していったのはブラックだった。口先で術を唱えて触手を硬化し、ラオエンの前で受け止めたダークネスの目が弧を描く。
「すまないな、もはやお前の命より、優先すべきはあの妖精だ」
「やれるもんならな」
周囲を見てみればカウンツはダークとボンドッツ、雷斗が三人で相手をしていて、黒疾とバーナーはどちらともなく視線を交わした。背後に追いやった美代の首根っこを躊躇なく掴んでシャドウの元に放り投げ、ブルーが咄嗟に受け止めたのを見てラオエンに切っ先を向ける。
「オレ達を潰してから通れよ?」
「残念ながら、オイラは潰れる事はないけどな」
「小僧どもが……」
苛立たしげに牙を剥き、ラオエンもまた、自身の剣を構えた。
放り投げられてしまった美代は即座に体勢を立て直し、忙しなく視線を動かして戦っている三組の様子を見た。シャドウが張る魔 弾 盾の中では、ブルーが真っ青になりながらもスノーを抱きかかえて充血した目で戦いを見つめ、リンがキュッと唇を引き締める。
「美代ちゃんはダークとボンドッツと雷斗君を、ボクは黒疾君とバーナー君を見る。ブラックは大丈夫、略式詠唱はほどほどに」
「了解」
「リン、ボクは今から魔 弾 盾に回す魔力を半減させる。やれるね?」
「はい、シャドウ様!」
ブルーを抱きしめながら強く頷き、即座に透明な壁を張った。外に出ようとした美代の服を力任せに引っ張って中に引き込み、不安そうに目を揺らす彼女の頭をそっと撫でる。
「大丈夫、みんな強いんだから。だから美代ちゃんはここにいて、みんなが安心するように」
「……もどかしいよ、リン」
「ふふふ、あたし達のお兄ちゃんを舐めちゃダメだよ? 絶対絶対、誰にも負けないんだから!」
突き出された穂先が頬をかすめ、震える体に舌打ちを漏らしながら槍の柄を掴んだ。それはすぐに振り払われるが一歩後ろに下がって、カウンツの背後に回るダークとボンドッツを視線で追う。
「ダーク、三対一は卑怯なんじゃねぇの!」
「美代殿ヲ狙ウ理由ガ解ランカラナ、全力デ排除サセテモラウ」
「おいおい、あっちの小僧の方はいいのかよ?」
「ブラックは負けませんよ、あなたはご自身の心配をされた方がいいですね!」
エペが横なぎにされた瞬間、切っ先がバチリと閃光を放ち、受け止めようとしたカウンツは咄嗟に身を引いた。振り抜かれた軌道には雷というのも生ぬるいような電撃が残像のごとく残り、眉間らしき場所にシワを寄せているのが見て取れる。
「……流石にちょっとヘコみそー」
「ナラバ早々ニ去レ」
「出来るかこん畜生が!」
半ば悲鳴のような罵倒の言葉にクッと口の端を上げ、小太刀に手をかけた。
死角から突きだされる触手は髪の毛を蠢かせながら無理やりに方向を変え、ほとんど聞き取れない詠唱を魔力の流れだけで判断して相殺する術を略式で放ち、硬化された触手と鍔迫り合いをしながらも意識は一点に向けられていた。それがわかるのだろうダークネスは不愉快そうに目を細め、力任せに剣を押す。
「そんなにもあの妖精が気になるか、随分と余裕を見せつけてくれる」
「当然だろ。オレの命を狙う分にはどうでもいい、いくらでも追い払ってやる。だけど美代には絶対に手を出させない」
「は……。どうにも、それがはったりではないらしいことが、腹立たしい」
そう言うダークネスの声音も、笑みを含んでいるように聞こえた。一瞬息を止めて球体を弾き飛ばし、髪の毛を逆立たせる。
「笑う余裕なんてなくしてやる」
「やってみよ、小僧」
瞳孔を細くし、唇を痙攣させながら詠唱をしていくけれど。
どうしても自身の心は、美代の元にあってしまった。
噴き出した炎を攫うように大剣を振るって口の端を歪めて笑い、受け止められると膝を突き上げて腹部を狙った。間一髪で気が付いたらしく剣から放した右手で受け止められてしまい、ギラギラと光る瞳同士で睨みあう。
「片足は捕ったぞ、ここからどう挽回するのだ? 人間」
「ばぁか、お前が戦っているのはオレだけじゃねえだろ」
チラリと視線が背後に向かい、ラオエンは目尻を痙攣させると黒疾を弾き飛ばして視線の先に剣を振るった。手ごたえどころか人影もないそこに一瞬呆け、すぐに目を怒らせると嫌らしく笑う盗賊を睨みつける。
「火炎族はどこに隠れた!」
「言うとでも思ってんのか」
炎がそこかしこから噴きだし、意思を持って襲い掛かってきたり黒疾の援護をするように剣に纏いついたりと、どう考えても火炎族でしか成しえない事が起きているのでどこかにいるのは間違いないだろう。
だが、姿が全く見えないではないか。
「さっきも言ったが、目的が不明瞭な以上セイントには手を出させねぇ。そのためにゃあ賞金稼ぎだって盗賊と手を組むだろうよ、どうしてもあいつが欲しけりゃあもっと人数を連れて来いや」
「出来るならそうしておるわ、クソガキどもが」
忌々しそうに吐き捨てるラオエンに思わず眉を寄せ、それでも黒疾は再び剣を握った。
ダークの脇腹を槍がかすめれば即座に治癒術を唱え、黒疾の頬の脇を剣が走れば治療術を飛ばす。
まばたきの時間すら惜しむように三方向の戦いを凝視し、美代とシャドウは回復の術を途切れさせなかった。
「美代ちゃん、無理はしないで。妖精族とはいえど、きみはまだ使い慣れていない」
「大丈夫、まだ、大丈夫」
「あたしも、耐えられます。だからシャドウ様、魔 弾 盾に回す魔力を減らしてください」
炎の熱気が、剣劇のせいで弾丸のごとく飛んでくる石ころや砂利が魔力の盾に衝突する。その度に壁が削られ、張りなおしているために体力が削られていくのが嫌でも自覚させられた。
けれど自分がここで崩れて壁を張るのを止めてしまえば、その分シャドウに負担がいってしまうのだ。
「……分かった。少しだけ、支援のほうに魔力を回す。リンはそのまま、ブルー君とスノーちゃんを」
たった一つのかすり傷も許さない、と言わんばかりに詠唱を続ける美代に、シャドウはそっと彼女の肩に立った。不意のことに驚いたのだろう目を丸くして彼を見たが、すぐに真剣なまなざしで戦いを見つめる。
「少しだけ、肩を借りるね。舞 空 術に使っていた魔力で、みんなに壁を張る」
「……お願い」
その声は、かすれてしまっていた。思わず眉を寄せるけれど、短い罵声を聞いて反射的に顔を上げる。
「ラオエンが!」
黒疾と剣を交えていたはずのラオエンの姿が、そこになかった。反射的に魔 弾 盾を厚くするけれど切っ先に砕かれ、胴体を掴まれると力任せに地面へ叩き付けられる。
「シャドウ様!」
「あかん、美代はん!」
ボールのごとく、シャドウの小さな体が跳ねた。微かな咳を漏らすとピクリとも動かなくなってしまい、咄嗟に腕を伸ばした。
はずなのに、なぜ首筋に手があるのだろう。
「小僧、小娘。動くなよ、捕えられるだけならまだしも、死ねん苦しみは与えたくないだろう」
大きな手に首を掴まれて、足が地面から離れていた。正面にはギラギラと瞳を光らせたラオエンが薄い笑みを浮かべて立っていて、全身が緊張するのがわかる。
ほんの一瞬の、こちらの隙をついて。この男は黒疾との戦いを捨てて自分を狙いにきたらしい。
「止めて、美代ちゃんを返して……!」
「ダークネス、カウンツ! 目的は果たした、退け!」
黒疾の胸元から飛び出したイフリートが翼を折りたたむように宙を翔け、炎に身を包んでその姿を変えた。中途半端に戻った姿でラオエンに向けて炎を放ち、吊り下げられている美代の体を攫おうとする。
完全に不意打ちだったはずの攻撃は、まるで呼吸でもするかのように躱された。体を捻ったラオエンの右手には剣が構えられており、薄い笑みを浮かべたまま鋭く突き出す。
「バーナー君!」
あわや、腹に剣が突き立てられかけた時。
正面に誰かが立って、体を包む炎が大きく揺らめいた。
「歪 舞 地……!」
「遅い!」
せり上がりかけた大地の上を刃が走り、少女の腹部を貫いた。柄まで埋まったそれは彼女が庇おうとした青年の腹をも貫通させており、双方が口から血を吐きだす。
「リン、バーナー!」
「リン、いけません!」
腹から生える柄を血塗れの手で握りしめ、目にこぼれんばかりの涙を溜めている美代を見上げて微笑んだ。目付きを鋭くして剣を離そうとしたラオエンの手首に指を這わせ、これまでに見たことがないほどに口を歪ませる。
「つ、かまぁえ、た」
「エレクサンドラ!」
「地 雷 撃」
カウンツに阻まれながらも、リンの元へ駆けようとしたボンドッツの目の前で。
リンが放った術がラオエンの腹を打ち、美代を吊り上げている左腕に雷を纏わせて、自身とバーナーの体を貫く剣を砕いた。地面に叩き落された美代は即座に詠唱しようとするけれど、首を絞められていたせいか掠れた空気しか出せなくて、血の気を失いながらリンに手を伸ばす。
「み、よちゃ」
「………!」
「あ、り、が」
人形のごとく崩れ落ちたリンは眼球をわずかに動かして、微かな笑みを浮かべ、一度だけ体を痙攣させると瞼を閉じた。すがる様にシャドウに目をやるがまだ気を失っており、出せない声で必死にブラックを呼ぶ。
ダークネスと戦う背中から、計り知れない怒りを感じた。こちらに来ようとしているのはわかるけれど、幾本もの触手に邪魔をされ、来ることが出来ないでいる。
「ら、おえ、ん……!」
「ふは、は。もう、手遅れだ。神が気まぐれでも起こさない限り、その娘は生き返らん。無駄なことよ、これからお前は、我らの元にっ」
胴に腕を回し、口から血を流しながらも笑うラオエンの脇腹から、真紅の刃が突き出した。大粒の涙を流しながら咳き込んで、リンの脇にうずくまる美代は、体の先端から火の粉を散らす無表情の彼に息を詰める。
「ラオエン様!」
「カウンツ、退くぞ!」
充血させた目の端から血を流すブラックを触手で弾き飛ばし、雷斗に槍を突き出していたカウンツの首根っこを掴んだダークネスは一瞬で姿を消した。
すでに、自分がいったい何を見ているのかもわからなかった。
消えたと思ったダークネスがバーナーの体を払いとばし、その触手を血みどろで膝をつくラオエンの胴に回して再度姿を消してしまった。
ワンワンと泣き叫ぶのは誰の声か、体を揺さぶる手は誰のものか。蜘蛛の巣でも張ってしまったかのような脳みそでは、判断が出来ない。
「美代はん! リンが、バーナーが!」
「ブラック、血を吐きだせ! それでは喉が詰まって、術が唱えられんどころが息が止まる!」
「ナント、ナントイウ事ヲ……!」
「セイント、白魔術を。呆けるな、しっかりしろ!」
加減も知らないように体を揺らされ、緩々と前を見てみれば、口の端から血を流すブラックを片手で支えた黒疾から胸倉を掴まれていた。短い呼吸を繰り返し、骨が軋む音を聞きながらも無理やりに周囲を見渡す。
リンに抱きつくブルー、呼吸のたびに口と腹部から血を噴き出しているバーナーを支えている雷斗、目を覚まさないシャドウを抱え、心音があることを確かめながらも、血の海を見て青ざめているダーク。
そして、少し離れた場所で、呆然と佇んでいるボンドッツに目を止めた。
「……私に死ぬなと言ったあなたが、私を置いて逝って、どうするんです」
「っあ、あぁあ……! てりお、完 全 治 癒!」
口からするりと零れ落ちた言の葉は、あまりにも感情がなかった。凍り付いていた喉がようやく動き、黒疾に縋り付くようにして術を叫ぶ。
何度も続けて、白魔術を放っていたせいだろう。略式詠唱どころか術名だけを叫び、ありったけの魔力を使って、全員の傷を癒そうとしたせいだろう。
視界が激しく明暗して吐き気を覚え、口元に手を置こうとしても指を動かすことすらできなかった。暖かく大きな腕は先ほど抱きついてしまった黒疾だろうか、トン、トンと落ち着かせるよう背を叩いてくれる。
「完 全 治 癒、体 浄 化、治癒術、修 復 術、治癒術!」
「ブラック、止めろ」
「なんで、なんで! どうして目を開けないんだ、まだどこか痛いのか? どこか、怪我してる? そうだ、そうだ美代! 一緒に唱えて、オレだけじゃダメでも、美代も一緒なら……!」
「ブラック」
リンの体を抱きしめて、頬に血が流れた跡を残しているブラックは、それを洗い流すかのごとく静かに涙を流しながら口の端を痙攣させていた。メチャクチャに続ける詠唱をそっと止め、こちらに来られずにいるボンドッツを手招きしてやる。
「……大丈夫か」
「それはいったい、何に対して言っているのでしょうか、黒疾さん」
力なく近寄ってきたボンドッツはブラックが抱きしめるリンの傍に膝をつき、彼の詠唱のおかげか傷跡もなく服も元通りに戻って、眠っているような姿になった彼女の頬に手を置いた。
普段とは違って冷たくなってしまっているその肌に、なぜだろう。笑みが浮かんでしまった。
「……バーナーさんは、ご無事ですか。また使い魔に姿を変えるなんて無茶をして、その上にお腹に風穴を開けてしまって」
「目を覚まさないが、傷は癒えた。……しばらく眠るだろうが、その」
「それならばよかった。ブラックは美代さんに魔力を流してあげてください、先の戦闘では彼女たちの援護がなければ、私たちはもっと傷だらけだったでしょう」
「ボンドッツ」
「とりあえずみなさん、ここを離れましょう。血の沼に座り込んでしまっては汚れてしまいます、さぁブラック、リンを放して」
「ボンドッツ!」
しゃくり上げて泣いているブラックに叫ばれて、ボンドッツは眉を寄せながら片耳を塞いだ。エペをしまうと立ち上がり、瞳から光を失っている美代の傍に寄っていく。
「叫ばずとも聞こえていますよ」
「リンが、リンが死んじゃったんだぞ!」
「目の前で見ていましたからわかっています。だからとここで泣き喚いて怒鳴り散らして、いったい何になりますか」
頬を何度か軽く叩いてみれば、微かに顔を上げた。自身に焦点が合うと背中が震えてか細い呼吸音をだし、思わずため息をついてしまう。
「ブルーさん、シャドウ様をお願いいたします。黒疾さんはバーナーさんを抱えられますか? 雷斗さんはスノーちゃんを、ブラックは美代さんを。悲しむのは後からでも出来る、とりあえず今はここを離れます。それでいいですね? ダーク」
「リンは、リンはどうするん」
シャドウを抱えて小さく言ったブルーに、ボンドッツは頬を掻いた。脇に跪いて首の後ろと足の裏に腕を差し込み、冷たい体を横抱きにする。
あれほど軽かった体は、今では両腕を潰してしまいそうなほど重たくて。
「本当に、逝ってしまわれたのですね」
「ボンドッツ……」
今にも死んでしまいそうなほどか細い声に呼ばれて振り返れば、顔面蒼白なダークがいた。琥珀色の一つ目に宿るのは、罪の意識か。
「……ブラック、私に魔力を繋げていてください。私はそれをもとにあなた方の元へ戻ります、少しだけ別行動をさせていただくこと、お許しください」
「……わかった。待ってる」
震える、消え入りそうな声だけれど、しっかりと返事をもらい。
ボンドッツは一度頭を下げて、その場から姿を消してしまった。




