~閑話 お酒のせいにしてしまおう~
グスグスと泣いていたリンをようやく眠らせたのはいいが、反対に自身の目は冴えてしまっていた。なんとなく部屋の外に出て廊下を歩き、宿の外を眺めている。
ふと、人の気配を感じ、ボンドッツは地面を蹴った。屋根の上には雷斗が足を投げ出すように座り、星空を見上げている。
「雷斗さん、ブルーさんは落ち着かれましたか?」
「……あぁ。リンは?」
「さきほど、ようやく。部屋を変わっていただき、ありがとうございます」
「私の方こそ、すまなかったな」
雷斗より少し後ろに立ったまま、ボンドッツも夜空を見上げた。なんとなく腕を持ち上げてみるけれど、力なく落としてしまう。
「ブルーが」
声を掛けられて視線を落とせば、雷斗が体を捻るようにして振り返っていた。
「ダークのような母親が欲しいと、かか様がいるお前たちが羨ましいと、泣いていた」
「……リンが、バーナーさんのような父親が欲しかったと。仲の良い家族のようなあなた方が羨ましいと、泣いていましたよ」
雷斗の隣に胡坐をかいて座れば、彼も投げ出していた足を折りたたみ、同じように胡坐した。
「私は地上の者が大嫌いだった。人のことを、どうしても好きになれなかった。……我々を異物とし、利用するしか脳がないのだと、そう思っていたことすらある」
「相容れようというのが愚かなんですよ。異物を忌み嫌い、排除しようとする者たちの事を、どうして好きになれましょう」
互いに顔を見合わせると、二人は肩を揺らして笑った。
「なぁボンドッツ、頼みがあるんだ」
「奇遇ですね、私もですよ」
差し出された左手に、ボンドッツは自身の右手を突き出した。握りこんだ拳にぶつけるよう雷斗が手を重ねれば、愉快そうに体を揺らす。
「私の友を、大切な者たちを傷付ける者共から皆を守るため、お前の剣を振るってくれ」
「私の家族を虐げる奴らから彼らを守るために、あなたの雷を走らせていただけませんか」
「あぁ、もちろんさ」
「私たちの、家族のために。……雷斗さんって左利きなんですね」
「どちらも使えるが、左の方が使いやすいな。つい先に、こちらがでる」
立ち上がって服を叩き、ボンドッツに手を伸ばした。躊躇いなく掴み、立ち上がって雷斗を見上げる。
「そろそろ休みましょうか。明日に障ってはいけません」
「そうだな。……こんなにも平和な村の中で、バーナーやダーク達もいる。時には気を張らず、ゆっくり休もう」
「あなたこそ」
コツン、とボンドッツの胸板に拳をあてれば、ニヤリと笑って同じようにぶつけてきた。そうして先に降りた彼が、緩く手を振ってくる。
「それでは、おやすみなさい」
「おやすみ、ボンドッツ」
昼間のぎくしゃくや、妙な緊張はすっかり消えてしまっていた。
それを嬉しく思い、微笑みながら、雷斗は再び空を見上げるのだった。




