消える風
「――わぁ! 雷斗、その刺青カッコいいね!」
カラリと晴れた空を見上げ、着替えている男性陣を振り返ると、雷斗の左の二の腕にそれが見えた。雷斗はビクリと背を震わせ、バーナーは目を細め、美代とブルーの二人がよく見たいと近寄っていく。
雲から縦横無尽に駆け巡る雷と、それを全て包み込むように緩いとぐろを巻き、鋭い眼でこちらを睨みつけてくる龍の絵だった。赤黒い墨で描かれたそれは迫力があり、本当に龍から威嚇されているように感じる。
ブルーがそれに触れようとすると、雷斗は静かに身を引き、隠してしまうように服を着た。不服そうに口を尖らせる彼の頭にバンダナを巻いてやり、バーナーが背を押す。
「ほら、オイラ達は外に出てるから着替えて来いよ」
「はーい」
着替えを渡し、洞窟の奥に向かう美代の背を見送ると三人は外に出た。昨日までの大雨が嘘のような天気で、地面もある程度乾いてしまっているようだ。
「二人はここで待っててくれ、この先しばらく、集落なんかもなかった記憶がある。ちょっと食料を調達してくる」
「あいわかった、すぐに戻るだろう?」
「あぁ、頼んだぜ雷斗」
二人を残して森の中に入ったバーナーの姿が見えなくなると、ブルーは静かに雷斗の左手を取った。どうしたのかと、自分より頭半分くらい背が低い彼の顔を覗きこむように見ると、キラキラした目で見上げられる。
「なー、さっきのもうちょっと見たい! なんやろう、雷の人みたいですごいカッコよかったよ!」
「さっきの……あ、あぁ。これ、か……」
戸惑いながらも、雷斗は再び刺青を見せてくれた。ブルーはまるで壊れやすい物を扱うかのように、指先で優しく触れ、龍の体をなぞっていく。
「すごいなぁ、痛くなかったん? ワイ、まえ、すっごく痛いって聞いたことあるよ」
「……それは」
「お待たせ―! って、バーナーどこ行ったの?」
美代が出てくると雷斗はサッと腕を隠し、キョトンとしたブルーの頭をポンポンと撫でた。バンダナ越しに撫でられた頭を押さえ、首をかしげる。
「なんやぁ、よう撫でられるなぁ。みんな頭を撫でるの好きなん?」
「んー、なんか撫でたくなる」
「じゃあワイも美代はんの頭撫でる―!」
「キャー!」
クシャクシャと両手で美代の頭を撫でまわし、ニコニコとしているブルーに雷斗は小さく笑った。それでも不意に足音が耳に届くと、鋭く振り返る。
「なにやってんだお前ら……」
「む、早かったな。なにか私に出来ることはあるか」
そこにいたのは、食料の調達から帰ってきたバーナーだった。手元には何も持たず、それでも指先は赤く染まっており、雷斗はさりげなく美代とブルーを背後に隠す。
「あー、じゃあ子守を頼んでいいか? 処理に少しばかり時間がかかる」
「承知した。……どれほどかかりそうだ?」
「血を抜いてしまうのに十分程度、解体自体は五分もかからない。バラしてしまえばあとは空 魔 箱に入れるだけだ」
「手慣れている様子だな、あの二人がこの調子だから、昨日は心配だったのだが」
キャアキャア言いながら互いの頭を撫であいっこしている美代とブルーを見た雷斗に、バーナーは苦い表情を浮かべた。
対して、心配だと言った本人は柔らかな笑みを浮かべており、服の上から刺青のあたりを緩く握るとバーナーに向けて手を上げた。子守りは任せろ、ということらしい。
「もうしばらく頼んだ……」
二人にもう少し、旅をしているという緊張感を持てと伝えるべきか。はたまた年相応なままに居させてやるべきなのか。
悩みのタネは、まだまだ出てきそうである。
肉の解体まで終えて付着した血を近くの川で綺麗に洗い流し、短剣の手入れを終えて戻ってみれば、右往左往するブルーと思い切り顔をしかめている雷斗、二人を背にうずくまっている美代が見えた。一体なにがあったのかと、慌てて駆け寄る。
「どうしたんだ!」
「バーナーごめんなさいぃい! 着替えない?」
「ふ、ふざけあっとったら転んでしもうて……」
「木の枝に引っ掛けて、裂いてしまったようだ。支えるのが間に合わなかった、すまない……」
ピキリと、自身の青筋が浮き出る音が聞こえた気がした。
「……美代はとりあえずオイラのを着てろ。んで、終わったら二人、そこに座れ」
少々の自覚はしてもらう必要があるようだ。
上着を裂いてしまった彼女は、バーナーの着物を羽織ることになった。引きずらないように帯で長さを調整し、解けてしまわないよう丁寧に締めていく。
そうして準備を終え、スンスンと鼻を鳴らすブルーは雷斗に背負われた。美代は恨めしそうに、ズボンのポケットに両手を突っ込んで先頭を歩く彼の背を睨む。
「バーナー怖いですー。ブルー泣いちゃったじゃないー」
「ちったぁ考えてじゃれ合え、おかげさまで完全に行く道を変えないといけなくなっただろうが」
「着替えが少ないんだもん、仕方がないでしょ」
「他にも持ってきてやってんだがな? ちゃんと補整された道に出るまではお預けだ。また裂かれたらたまったもんじゃねぇ」
「そうそう何度も、破きません―!」
頬を膨らませながら抗議をするも、バランスを崩したブルーを庇おうとして反対に自分が倒れてしまい、運悪く服を破いてしまったのは事実なのでそれ以上何も言えなかった。
説教も正座じゃなくていいと言われたのだが、低い声に刺すような眼光で正座をしている彼を前に、足を崩す勇気はなかった。結果、ブルーの落涙である。
「足がしびれるって感覚に慣れてないんだろうねー。ところでどれくらい歩く?」
「わかんねぇ。この辺は本当に、集落も村もなかったと思うんだよなぁ……」
すでに泣き止んではいるらしいものの、怒られたことを気にしているようだ。雷斗の背に隠れるようにしてくっついたまま、ブルーはジッとこちらを見ていた。どうにか元気づけられないかと顎に手をやり、着物の軽さにひらひらと動く袂を見る。
「これ、軽いね?」
「そりゃあな、オイラの炎が素材だ」
何気ないバーナーの言葉に、ブルーがピョンと雷斗の背を降りた。興味津々に着物を引っ張り、つつき、本来の持ち主を見上げる。
雷斗も気になるのだろう、袂を緩く持ち上げ、腰をかがめてマジマジと見つめていた。困ったようにバーナーを見上げた美代に、彼は頭を掻くとそっぽを向く。
「火炎族の服は元々から、自分たちの炎で焼けないようにと火炎耐性の魔力がこめられている。が、オイラの場合はそうにもいかなかったんだ。他の奴らよりも火力が数段強かったからな」
大人の中でも鉄を溶かせるほどの炎を出せるのが稀な中、岩をも溶かせるバーナーの炎に耐えうる布地はなかったのだろう。
引っ張られすぎて解けそうになっている帯からブルーの手をそっと外し、顔を背け続ける彼を見上げた。
「親父やお袋も色々やってくれたんだけど、どうにもならなくてさ。結局自分で、魔力の加え方を変えながらやってたら……焼けないどころか、炎で修繕できるようになってた」
「なるほど、素材が炎」
「バーナーよ……お前は空 魔 箱の他にも、術を使うのか?」
「いや、使わねぇよ」
「無機物の構造を変えられるほどの魔力を持ち合わせておきながら、いささかもったいないような気もするが?」
雷斗の言葉から、とりあえずバーナーの魔力の容量が大きいことは解った。フルリと一度頭を振り、一度目を閉じて天を仰ぐと雷斗に向けて歯を見せるようニッと笑う。
「火炎族の男なら、己の技と炎で戦うもんさ。それを曲げたくはないし、親父たちからの大事な教えだ」
うっそうと生い茂る木々を抜け、草原に出たかと思うと、バーナーは自分たちを炎で囲ってしまった。突然のことに目を丸くしながら、一人で悠々と炎の壁をすり抜けていく彼の背を見つめる。
少しばかり炎の勢いが落ち、周囲が見えるようになった。茂みに向けて立て続けに三発、火の玉を放り投げると同時に、何かが飛び出して来た。雷斗は即座に美代とブルーを背に庇うよう立ち、遅れて二人も身構える。
バーナーを中心にして囲むように出て来たのは、十人ほどの厳つい男たちだった。手には剣や斧を持ち、ひどく下卑た笑みを浮かべている。
「おいおい、この辺りをタダで通り抜けようだなんて、いい度胸をしてんなぁ、ガキども?」
「通行料をいただこうかぁ。そうだなぁ、十万ガロンでどうだ」
十万ガロン、約五千万ということか。
なんてむちゃな要求をしてくるのだと、美代は雷斗の背から顔を覗かせると男たちをジロリと睨んだ。すると一人と視線が合い、にやぁとイヤな笑みを浮かべてくる。
「その姉ちゃんで手を打ってやってもいいぜ?」
指を突き付けられ、美代は炎の中でビクリと背を震わせた。雷斗の殺気がブワリと膨れ上がり、二人を庇うよう伸ばされた手の指先がわずかに閃光する。
しかし、バーナーに緩く手を上げられ、雷斗はそれを静めていった。
「お前らの頭は誰だ」
「オレだよ」
頬から鼻筋にかけて一直線の刀傷をつけ、自身の背丈ほどの剣を担いだ男が他の男たちを押しのけるようにして前に出た。踊る炎の中からイフリートが飛び出し、威嚇を始めたのを、主人が頭を撫でるようにして落ち着かせていく。
「見たことねぇ顔だな。二つ名は」
「あぁ?」
「あ……そ」
次の瞬間には男が仰向けに倒れ、白目を剥いて口から泡を吹いていた。
バーナーが軽くジャンプをしたかと思うと、遠慮なしに喉元に向けて拳を突き出したのだ。冷たい目で見下しながら頭の体を踏みつけ、ヒィと声を震わせた男たちにため息をつく。
木版とペンを取り出して何かを綴ると、それを使い魔に渡した。彼はそれをしっかりと足でつかみ、すりすりと頬にすり寄っていく。
「二つ名も持たねぇザコ共が、粋がってんじゃねぇぞ。イフリート、少々距離があるが使いを頼んだ。雷斗、二人を任せるぜ」
斬りかかってくる男の脇をすり抜けながら鳩尾に拳を埋め、崩れ落ちた体を踏み台に飛びあがっては左右から飛びかかってくる男たちの眉間に向けて蹴りを浴びせ。
迫ってくる剣や斧に一切ひるむことなく、流れるような動きでそれらを避けながら、全員を沈めてしまった。つまらなさそうに欠伸をもらしている始末だ。
「さて、こいつらはイフリートが呼びに行った村役人たちがどうにかしてくれるだろうよ。オイラ達は先を」
「バーナー、危ない!」
突風が走ったかと思うとそれは下降気流に変わり、バーナーの背後に倒れる男の頭部が地面に叩き付けられた。ゴッ、と鈍い音がし、ピクリとも動かなくなってしまう。
男が静かに顔を上げ、剣に手を伸ばしていたのだ。伸びた指先から剣の柄、切っ先と視線を移していくとバーナーの足が踏みつけている。どうやら気づいていたらしい。
「美代」
「あ、ごめん。気づいてた……」
「風をやたらに使うんじゃない。風の一族は、滅んだんだ」
咎めるような声音に、美代はムッと眉を寄せた。三人を囲んでいた炎が消え、近寄ってくる。
「でも、お前はその生き残りじゃない」
その言葉に雷斗は美代を見つめ、ブルーは悲しそうに眉尻を下げた。バーナーもどこか辛そうな表情を浮かべており、彼らの反応の意図がわからない彼女は頬を膨らませる。
「なにさ、なんの話?」
「ただ一人の者だと思われたら厄介なんだ。だからむやみに使うんじゃない」
ポンと美代の頭に手を乗せ、歩き始めたバーナーを横目で見ながら、雷斗は眉を寄せたままでいる彼女に苦笑した。自身の左の二の腕を緩く掴み、目を伏せる。
「特異能力一族で公にしても大事ないのは、火炎族くらいだろうよ。ブルーも気を付けておけ、人族は、地上の者は……あまり信用ならん」
「え?」
「行こう、このままでは陽が暮れる。野営に向いた場所までは進みたいだろうからな」
苦しそうに、憎らしげに吐き出された言葉にブルーは首をかしげ、ムスッくれている美代の手を掴むと二人の後を追うように歩き始めるのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
草原を抜け、再び木々の間に入り、程よい広さと平らな地面がある場所を見つけると野営の支度を始めた。
「雷斗、水汲みを頼んでいいか。ブルーはここで美代と留守番、オイラは狩りをしてくる」
手短に指示を出すと返事も聞かずに森の中へと入って行き、雷斗はヒョイと肩をすくめてバーナーとは反対側に足を進めた。その背に水がある方向を投げかけているブルーを見ながら、バーナーの着物を握り締め、不満そうにうめき声を漏らした。
「私だってガーディアンで、風を使えて、戦えるのに。バーナーは私を子供扱いしすぎ」
「せやけどね、美代はん。ワイも人には言えんけど……バーナーや雷斗に比べたらやっぱり弱いんよ。しゃあないと思う」
「でもなにさ、風を使うなーって。私だって……生粋じゃ」
「ブルーすまん! 水を入れる物を忘れた!」
「なにをしとんのー!」
慌てた雷斗の声に、ブルーはサッサと話を切り上げてそちらに走って行ってしまった。彼も何も持たずに行ってしまったが、一族の力でどうにかできるだろうと、一人でたき火を眺める。
背後で茂みが揺れ、振り返ろうとしたら口を大きな手で覆われた。悲鳴を上げる間もなかったそれに目を見開き、咄嗟に手をひっかく。
それをもろともせずに体を担ぎ上げられ、腕を無理やり後ろに回されると手首に硬い何かをつけられた。感触からして、木製の枷らしい。
「風が使えるだと」
「あの一族の生き残りだとしたら、金になるぜ」
「魔術が使えると厄介だ、喉を潰すか」
「バカ言え、それよりも封魔石を呑ませた方がよっぽどいい」
(こいつら、盗賊? さっきの奴らとは違うのかなぁ)
口に布を詰め込まれ、その上から縄をかけられながらも美代は目を閉じた。呼吸を整え、大気に命じる。イメージするのはカマイタチだ。
――どれだけ意識をしても、風は起こらない。
(うそ、まさか、また)
「女の子一人に二人掛かりなんて、随分じゃないか」
声と共に、一人が地面に口づけを落としていた。そちらに気を取られたのだろう美代を抱えた男は動きを止め、その瞬間に顎を突き上げるよう、掌底が叩き込まれる。
体を傾けていく男から美代の体を奪い取り、舌打ちを漏らしながら戒めを解いたのはバーナーだった。
追い打ちをかけるよう腹部につま先を突き立てる彼は酷く焦燥しているようで、青ざめているようにも見えた。
そんな彼に、再び起きてしまった出来事を言うのはなんとなく躊躇われた。タイミングを見計らうように表情を伺い、胸元で両手をきつく握り締める。
「な、なにごとだ!」
「美代はん、どうしたんよ!」
水の珠をいくつか浮かべながら、ブルーと雷斗が戻ってきた。駆け出して転びそうになっているブルーの体を支えつつ、倒れている男たちを鋭く睨みつける雷斗は、唇を微かに震わせる。
「ぞく、あらし」
「違う、ただの人売りだろう。……最もここは人身売買が禁じられている領土、立派な違法者だ」
宙からロープを取りだし、手早く二人の男を拘束してしまうと、その体を茂みの向こう側に蹴り飛ばしてしまった。申し訳なさそうに眉を寄せながら美代にきつく抱きついているブルーに、バーナーはため息を漏らす。
「ごめん、ごめんな美代はん。留守番って言われてたのに、離れてしもうたから」
「いや、ブルーもここを離れててよかった。気が付かれでもしていたら」
そっと頭を撫でてやると、叱られるとでも思ったらしいブルーは肩を跳ね、ギュッと目を閉じた。ついでに美代に抱き着く力も込められたようで、ぐえぇと低い悲鳴が上がる。
「美代、こういうことなんだ。オイラ達みたいな特異能力一族は、いつでも人族から狙われる。天敵がいるって、言っただろう?」
体を緊張させたブルーが落ち着くまで、彼の頭をポンポンと撫でつけてやりながら静かに言った。
「オイラや雷斗のところは、まだマシだ。正面から戦えば負けることはまずありえねぇ、最も連中は正攻法で来る気なんざ、一かけらもないけどよ。ブルーもそうだ、気づかれていたら二人とも攫われていた」
恐る恐る目を開き、不安そうに瞳を揺らしているブルーのことを後ろから抱きしめるよう、腕を伸ばしたのは雷斗だった。彼の額に浮かんでいる汗を、ブルーは優しく拭ってやる。
礼の言葉を漏らしながらも、金魚のように口をパクパクと動かしている美代を見て、冷たく目を細めた。
「だからブルーよ、地上の者を信用しすぎるな。幸い、我々は力を使わなければそこらの人間と変わらん、美代殿も風の者でないのであれば、不用意に風を使わぬ方が」
「誰か話を聞いてください―! その肝心の風が! たった今! 使えなくなりましたぁ!」
雷斗の言葉を遮るように、美代は勢いよく手を上げて高らかに主張した。キョトンとするブルーに、意味が判らないと言わんばかりに眉を寄せる雷斗。
そして、バーナーは目を見開いていた。
「美代」
「ついでにウィングにもなれなくなってる。丸っきりあの時の現象です本当になんでだよおおおおおお!」
頭を抱えてしゃがみ込んでしまった美代に、バーナーはため息をつくと彼女の体を軽く抱えあげた。それから二人を振り返り、彼女に視線を向ける。
「こいつは、生まれついてのガーディアンじゃないんだ。どういった理由か、後天的に神の子として選ばれた」
「そ、そんなこと……」
「あり得るのか、バーナー」
「あり得たから、美代は今ここにいる。神託も何もなく、旅の目的もわからず。こうしてここにいる」
すっかり落ち込んでしまっている彼女の背をあやすように叩いていると、子ども扱いするなと言って、肩口をポコポコと叩いてきた。そんな彼女には構わずにたき火に土を蹴りかけて消し、せっかく支度をしていた野営の道具を片付けていく。
「ここを離れよう。別の場所で休む、ブルー、近くに川辺があるな。案内してくれ」
「わかった!」
しゅんとしていたブルーは背を伸ばし、雷斗の手を取ると先頭を歩き始めた。バーナーは道具を宙に溶かしてしまうと美代の体を抱えなおし、目を伏せる。
「イフリートがまだ帰ってきていないのに、オイラがここを離れたのは軽率だった。これからは気を付けよう」
「バーナー」
「行こう、二人を見失う」
「あんたが見失うわけないじゃん」
目を伏せていたバーナーの頬を包み込むようにして顔を上げさせ、軽口を言ってみると少しばかり彼の口角が上がり。
美代はバーナーに抱えられたまま、その場を離れていくのだった。




