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冒険記  作者: 夢野 幸
ニルハム編
19/138

花園で


 ブルーの傷が開かない程度まで治り、不自由なく歩き回れるようになった翌日。


 お世話になってきた村の人たちに挨拶をしたいと言って部屋を後にしてから、どれだけ経っただろうか。美代は先に村の出口で荷物を担いで待っていたのだが、思った以上に時間がかかっているようでそこに座り込む。

 旅に出ると長く帰って来られないのだから仕方がないと、木の枝を拾って地面に落書きをして暇つぶしを始めた。


「……私も、ちゃんと行ってきます……言いたかったなぁ」

「カミノはん、ごめんー! すっごい時間かかってしもうたぁ!」


 顔を真っ赤にして肩で呼吸をしながら、ブルーが走ってきた。見るからに膨れている、随分と重そうな麻袋を肩に担ぎ、膝に手を置いて呼吸を整えている。

 村の人たちから選別代わりにいろんなものを受け取っているのは明白だった。地面の落書きをサッと消し、荷物を手に立ち上がる。


「ううん、大丈夫だよ。行こうか?」

「あのね、みんなね、カミノはんにお礼を言いたいって言ってるよ。本当やったらワイの怪我が治ってから、お祭りしようって思ってたんやって」

「いいよ、いいよ。お礼を言われるようなことはしてないよ、それよりもブルーは本当によかったの? 一緒に来て?」

「行く!」


 元気がいい返事に、美代はクシャリとブルーの頭をなでた。彼はキョトンとしているが、彼女が地図を取り出すとすぐに身を乗り出して覗き込む。


「さ……て。どこを目指そうかなぁ」

「今いるのがここだから、こっちに行かへん? 確か、何日か歩いたところに村があったと思うよ」


 ブルーは現在地にトンと指を置き、そのまま東側に動かしていった。自分がどちらの方向から来たのかはわからないが、とりあえずこのあたりの地理に詳しいだろう彼の指示に従うことにする。

 再度、もう一度村に入って村の人たちからの感謝の気持ちを受け取ってほしいと言われたが、美代は静かに首を振った。見て判るほど落ち込んだブルーに、苦い表情を浮かべると頭をなでる。


「ごめんね、そう言うのは苦手なんだ。気持ちだけもらっておくよ」

「そっかぁ……。わかった、じゃあ行こう!」

「うん、行こう」


 麻袋を担ぎ直し、先に歩き始めたブルーの半歩後ろを着いて行くよう、美代も足を踏み出した。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


 比較的補整されている道を外れ、森の中に入った瞬間。何者かの気配を感じ、美代は目つきも鋭く周囲を見渡した。ブルーも何かに気づいたのだろう、眉を寄せながら静かに辺りをうかがう。


「なんや、誰かおるん?」

「おー……やっと見つけたぞ……」


 美代は知った声にパッと表情を明るくし、ブルーは知らない声にますます眉を寄せていった。木の影からフラリと現れた人影に、美代は正面から抱きついて行こうとして足を止める。


「バーナー! ちょっと、その左腕どうしたの!」

「あぁ……うん。あとで説明するわ……」


 二の腕から肘もとにかけて、血まみれの包帯でグルグル巻きになっていた。どことなくテンションが低い彼に首をかしげながらも、ブルーを振り返る。


「ブルー、彼はバーナー・ソラリア、火炎族! んで、同じガーディアンだよ!」

「紹介のとおりだ。……美代の言葉だと、お前も? 何のガーディアンだ」

「あ……ワイはブルー・カイ。海中」

「あーあーあー。言うな言うな、不用意に自分とこの一族漏らすな。わかった、水のガーディアンなんだな」


 ブルーの口を右手で覆い、バーナーは小さくため息を漏らした。それから美代に視線を移すと、彼女の頭をポンポンと撫でる。左腕は使わずに、力なく下げたままだ。


「お前もな、美代。まぁオイラのところは別に構わねぇんだが、あんまり人の出身は言わない方がいい。おいおい教えていくが、この世界じゃ色々あるんだ。色々」

「なぁ、カミノはん。バーナーとはどんな関係なん?」

「……あぁ、あのな、ブルー。こいつの名前は、美代だ。リズ表記で、姓と名がある」


 その説明に、ブルーが驚いた表情のまま固まった。美代はコトンと首をかしげ、バーナーを見上げる。


「りず表記って?」

「漢字だ。基本的に、漢字でつけられる名前には姓がない。反対にカタカナはインズ表記と言われて姓と名があるんだ。オイラやブルーみたいにな、名が先で姓が後に来る。大体一族によって使う表記が変わるか」

「えっと、みよはん?」

「なるほど。だから名乗るたび、なんとなく可笑しいのね」


 たどたどしい発音になったブルーに、美代は地面に自分の名前を書いて見せた。するとわかったのだろう顔を上げ、バーナーと美代を交互に見上げる。


「……美代はんどこの人なん……?」

「うーんと……」

「ところでだ美代、お前、ひどい寒気に襲われなかった? ここ数日間で」


 思い出したように言われ、美代は目を丸くしながらうなずいた。なんとなくはぐらかされた様に感じたのだろう、ブルーは頬を膨らませながら立ち上がり、美代の事を心配そうに見る。


「その……誰になにをやられた」

「……なんか頭の上の方を、手刀で斬るような動きをしてたよ。そしたらゾクッてして、でもすぐに治まった」

「なるほどなぁ、きっちりかっちり、魔力を返してきやがったのか。そりゃあ反動で傷も負うか……」

「どういうこと? え、美代はん大丈夫やったの、もしかしてあの黒いヤツ……!」

「なんだ、なにがあったんだ」


 説明を求めるバーナーに、美代とブルーは村で起きたことを話した。ブラックの名前が出てきた途端げんなりとした表情を浮かべ、長いため息を漏らす。


「あのな、美代。オイラがお前を一人でポンと、旅させるとでも思ったの? 魔力でお前を包み込んでたの、並みの奴にはばれない程度に。お前の場所がすぐに判るようにと、お前が危害を加えられたら炎で迎撃できるように」

「なにそれ怖い」

「そんなことが出来るのけ」

「んで、ブラックの奴は攻撃性を加えていたその魔力を、断ち切るどころかそのまま返却してきたわけよ。そんでこのザマさ……おかげさまでお前を探し出すのにも時間が掛かっちまったわ」


 どうやら彼が最初に攻撃をしてこなかったのは、それを見越してのことだろうということだった。するりと包帯を解くと、火炎族の彼が左腕に火傷の様な傷を負っているのが見え、二人そろって絶叫してしまう。

 新しい包帯を巻いている間中叫ばれるのも嫌だったらしい、背を向けているよう言われてしまった。


「なんやぁ、バーナーがいると心強いなぁ、美代はん」

「そうだねぇー。判んないことがあったら聞けるし、魔力も魔術も詳しい。それに強い」

「お前らなぁ……。そうだ、荷物を貸せ。しまっておいてやる」


 肩越しに振り返ると、包帯を巻き終えているようだった。首をかしげながら麻袋を二つ渡すと、バーナーの口元がボソリと動き、それらが空気に溶けてしまう。


空 魔 箱マジック・ボックス!」

「これくらいなら多少魔力を使える奴なら、誰でも出来るって。このままじゃこんなところで野宿をする羽目になるぞ、進もう」

「はーい」

「はーい!」


 元気よく手を上げる二人に呆れながら背を押し、とりあえず二人が目指そうとしていた村に向かうのだった。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


 二度の野営後、たどり着いた場所は見渡す限りの花畑だった。


「わぁ……!」

「すごい! すごく綺麗だよ! ねぇバーナー、ここが村? ここ?」

「とりあえずお前ら、落ち着け。ここは村じゃないから、集落だから」


 朝露でまだしっとりと濡れている花弁に太陽の光が反射し、色とりどりの宝石が散らばっているようなその光景に、気分が高揚しているらしい美代とブルーの二人は今にも駆けて行きそうだった。そんな二人の服の端をしっかりと握り締め、バーナーは辺りをうかがう。


「……ここは」

「ちょっとあなた達! 花畑の傍で、何をしてるの!」


 少女の声に、三人は振り返った。そこに、ミニスカートをはいた、桃色の髪をした子が腰に手を当てて立っている。


「パクスに運ばれる花たちになにかしたら、許さないんだから!」

「あっごめんなさい! ここは、あなたが管理してるの? あんまり綺麗だから、ついつい近くで見たくなっちゃって……」


 と、美代が緩く頭を下げて花畑から少し離れると、その少女は少しだけ警戒を解いてくれたようだった。足早に近寄り、グイと覗き込むように背伸びをする。最近は自分より背が低い人が周りにいないことが多かったから、見上げられるのはなんとなく新鮮だなと、美代は小さく笑った。


「んー、悪い人じゃないみたい? 私はノノ・ヨウ。あなた達は旅の人?」

「うん。私は上野美代……えっと、こう書いて、美代が名前。それでこっちはブルー・カイで、こっちが……」

「バーナー・ソラリア。……火炎族だ」


 名乗った瞬間、ノノの表情が凍り付いた。バーナーは緩く目を伏せると美代とブルーより少し離れ、肩をすくめる。


「オイラは早々にここを離れる事にしよう、ただ、その二人を一日、ここで休ませてやってくれないか。そいつらはオイラの一族とは関係がない」

「……あなた、あの時に集落を燃やした火炎族と違う」

「あぁ、あのドクズなら死んだよ。親父が()った……まぁその親父も死んじまって、オイラは生き残りだな。なんにせようちの一族の大ボケがやったことは消えねぇし、嫌われても仕方ねぇ」


 オロオロとしているブルーの手を引き、安心させるようポンポンと頭をなでてやりながら二人のやり取りを見ていた。

 とりあえず、過去にこの集落と火炎族の誰かの間で問題が起きたこと、そのせいでノノが火炎族を警戒していること、それをバーナーが受け入れていることは解り、事の成り行きを静かに見守る。


「……待ってて。三人分の宿を長様に聞いてみる」

「それは止めておいた方がいいんじゃないか。あのドクズのせいでこの集落は半分が焼かれただろ、お前が迫害を受けるぞ」

「だって同じ火炎族でも、あなたはあの男みたいに冷たい目はしてないもの。暖かい目をしているもの。火炎族だからって何も考えないで追い返すなんて、思考を止めるような事、私はしたくない……」


 ノノの言葉を遮るように彼女の体を右腕で抱え込み、何かを足で上空に蹴り上げた。たった今まで自分たちよりも後ろにいたはずのバーナーがそこに居る事よりも、蹴り上げた足のズボンの袖がチリチリと焼けていることに視線が止まって何事かと周囲を見渡す。


 上空で聞こえた爆発音から、どうやら何かの術を投げつけられたらしいことは判断できた。


「気付いているぞ、出てこい」

「……ふぅん。やっぱり強いんだぁ、よく気が付いたね?」


 その声に、ブルーは全身から殺気を溢れさせ、美代は静かに身を引いた。空中に姿を現したブラックは小さく笑い、掌をバーナーに向ける。


「あぁ、やっぱりきみだったの? 美代に魔力を纏わせてたの。……酷い火傷だね、火炎族が火傷を負うほどの炎を浴びた気分、どう?」

「はっ。てめぇの炎で焼かれた程度で、どうこうならねぇよ。なんだ、なにが目的だ」

「そうだねー……」


 バーナーに向けていた掌を美代に向けたかと思うと、彼女が身構える暇もなくその体を宙に浮かせて集落の外に勢いよく放り投げた。バーナーが咄嗟にそれを追おうとすると、口の端を吊り上げるようにして笑い、口先で術を作り上げる。


爆 舞グラナーテ・ロンド!」

「こんっ……のやろう!」


 術が放たれた先は、花畑だった。 


 踏み出しかけていた足を突っ張り、ブラックが放った術の前に飛び出すと、それを自身の左腕で受けた。直後に小規模の爆発が起き、巻いていた包帯は焼け落ちて露出した皮膚が裂ける。

 痛みに出かけた声を無理やりに飲みこむと、バーナーは散った炎を操り、イフリートを召喚して彼に喰わせた。焦げた肉のイヤな臭いに表情を歪めながらも、悲鳴を上げているノノと言葉もなく立ちすくんでいるブルーに目を向ける。


「ここにいろ、オイラは行く」

「だっ……酷い怪我をしてるのに!」

「あかんよ! あかんよ、治療せな……!」

「火炎族の男なら、腕の一本程度で弱音を吐かないもんだ。だからお前はここにいろ、花畑を、パクスの女王に贈られる花を守れ、管理者として」


 言いながら自身の上着を引き裂き、左腕に乱雑に巻きつけると真紅の剣を宙から出した。二人を守るためにイフリートをその場に残し、ブラックと美代の後を追う。


 彼女の無事を祈りながら。




 振り上げられる漆黒の剣を紙一重で避け、木の影に隠れたかと思うと頬のすぐ脇に刃先が突き出され、慌てて飛び出すとそこに炎系統の術が飛ばされる。

 ウィングの体力が戻っているおかげで、どうにかブラックの攻撃を避けることはできているが、それも時間の問題だった。

 すでに、心臓は破裂せんばかりに脈を打ち、肺は喘ぐような呼吸しか出来ないでいる。笑う膝を押さえつけようにもそんな時間は与えてくれず、ついには体が言うことを効かなくなってしまった。


 そうなれば地面に倒れ込むほか、何もできなかった。貪るように酸素を求め、首筋に何かを置かれても動くことすら出来ない。

 眼球だけでもと呼吸を荒げたまま動かしてみれば、そこにあるのは剣の切っ先だった。


「ずいぶん頑張ったけど、終わりだね」


 剣を振り上げるような気配があり、静かに目を閉じた。ドンと重量を感じる音がしてビクリと体を震わせるが、痛みはない。

 恐る恐る目を開くと、頭を抱え、地面に膝をつくブラックがいた。振り上げた瞬間に手放したらしい剣は半ばほどまで地面に刺さり、呼吸が整わないままに体を起こす。


「ぶ、らっく……」

「え……な、に……」

「退け、ブラック。本当なら背後から狙うようなマネは好かねぇが、言ってらんねぇ」


 本当に困惑しているらしい表情を浮かべる彼の背後に、バーナーが立った。額からは脂汗が流れ、ギチリと眉を寄せながら、真紅の剣をブラックの首筋に当てている。


「ここの集落と、オイラの力は、相性が悪すぎる。ここでは炎は使えねぇ、挙句……左腕がこのザマじゃあ、まともに戦えねぇしな」

「……そう。じゃあきみと遊ぶのは、今度にしようかな」

「バーナー・ソラリアだ」

「バーナーね。覚えたよ。……頭が突然痛くなったのも気になるから今日は帰る。これはおまけ」


 去り際に左腕を握られ、ボソリと術をかけられた。バーナーは小さく舌打ちを漏らすと治療された左腕を軽く動かし、美代の体をヒョイと抱えあげる。


「大丈夫だったか」

「私は、大丈夫。バーナーは……腕は? どうして」

「ブラックのヤツ……相当な魔力を持ってるな。今のは治癒術リペイ、白魔術。……今、ニルハムで最も難しいと言われている魔術の種類だ」


 ぐったりと、肩にもたれかかってくる美代の体を支え、バーナーは剣を消した。掌を何度か開閉し、額に手を乗せる。


「今度は全力で戦えと、そういうことだろうな。……あいつはどうして突然、頭痛が?」

「わからない……本当に、急だった。……もう、ダメ、かと」


 言葉にしたことで実感がわいてきたのか、震えると涙をこぼし始めた。嗚咽を上げ始めると流石に慌てたのだろう、バーナーは彼女の背を優しく撫でる。


「怖かったな。ごめんな、来るのが少し遅くなった。よく、よく無事だった」

「風がっ……また、使えるようになって。ウィングに、なれるように、なって。でも、でも」

「もう大丈夫、大丈夫だよ。……とりあえず、あの集落に戻ろう。ブルーを置いてきてるからな、今日は、お前たちはあそこで休ませて貰え、な」


 まだ落ち着きを取り戻さないものの、少しずつ泣き声が小さくなっていき。

 バーナーは布きれで彼女の顔を拭いてやると、集落に戻るのだった。




 花畑まで来てみると、ノノが集落の人たちらしい大人数名と言い争いをしており、どうしていいのか判らずにいるのだろうブルーが泣きそうな表情で佇んでいた。足音で気が付いたらしい彼は、半ば反射的にバーナーに抱き着いてき、突進の如きそれをしっかりと受け止めてやる。


「ノノ、奴らをサッサと追い出せ! 火炎族など、ロクなもんじゃない!」

「忘れたのか、パクスが気に喰わないとそれだけの理由でこの花園を焼かれ、集落の皆を傷つけられたのを!」

「だから言ってるでしょ! あの人はあの時の男とは違うって、さっきだって怪我してるのに更に酷い怪我をして、私と花園を守ってくれたんだから!」


 ブルーが言うには、バーナーがブラックを追って行った直後から続いているらしく、ノノが庇ってくれていたけれど射殺すような視線に耐えられず、逃げ出してしまおうかとすら思ったらしい。

 バーナーは美代を降ろすとノノの傍により、大人たちからの視線を受け流しながら彼女の頭にポンと手を乗せた。ムッとした表情のまま見上げる彼女に、美代とブルーを指さす。


「オイラはいい、早々にこの集落を出よう。……だがあの二人は火炎族には一切関係がない、野営続きで疲れている、あの二人だけでも休ませてやってもらえないか」

「信じられるものか、火炎族の言うことなど……」


 バチィンと、痛々しい音が響き渡った。それを見た美代は苦笑し、ブルーは咄嗟に自分の左頬を抑えている。

 ノノが一歩前に出て、その男性の頬を叩いたのだ。冷たい目で大人たちを見上げ、腕を組むと仁王立ちになる。


「もういい、この堅物ども。あの花畑を管理しているのは、所持しているのは私です。その私が責任を持って、この三人を家に泊めます。……反対するならすればいいさ、どうせあんた達じゃ花を育てられないでしょ」

「お、おいノノ」

「あんたもヒョイヒョイ受け入れないの! 理不尽なことは理不尽だとちゃんと言う! それに……パクスの女王様を、知っているんでしょう?」


 押し黙ったその様は、肯定をしているようなものだった。ニヤリと笑ったノノに大人たちも口を閉じ、バーナーの事を凝視している。


「もし、この集落であんたが迫害を受けたことを女王様が知ったら、ヒュトンとパクスの契約は切れちゃうかもねぇ。そうなると今まで花園で利益を受けていた分が無くなっちゃうから、この集落は終わっちゃうかもねー?」

「の、ノノ」

「反対に、おもてなしをしたら、目にかけていただけるかもねぇ?」

「……全責任はお前が取るんだぞ、ノノ・ヨウ」

「はーいはい。花の育て方も学ぼうとせず利益を持って行くだけの大人たちに、色々言われたくないですよーだ。まったく」


 と、ノノはバーナーの手を取り、美代とブルーを手招きした。戸惑いのあまり妙な表情になっているバーナーにケラケラと笑い声を上げると、花畑の向こう側にある家に向かって歩き出す。


「……よかったのか」

「いいのいいの。ほら、疲れてるんでしょ? 今日はゆっくり休んでいってよ。あ、ブルーとバーナーは同じ部屋で良い? 美代ちゃんは私と一緒ね」


 と、それぞれは部屋に案内されるのだった。


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