第三話
わたし達はもれなく会話をとめていた。何秒か何十秒か、先輩達のスタートを想像するとこうなって当然、わたし達は恵まれていた。
「学校生活には差し支えていませんか?」
「あ、え?ええと、はい、そうですね、今のところは。敵が夕方しかは敵が出てこないので」
「一般兵が変わらないことから予測していましたが、やはり出現時間も変わっていませんね」
「えっと、やっぱり、そうなんですか?」
絶対にそうだとは言い切れなかったのでしっかりみんなには伝えなかったけど。
「敵の、この世界での活動可能時間が17時から18時。いわゆる夕方です。雨の日での戦闘は今までで一度だけ。これは例外と言ってもいいかもしれませんが」
「決まってんのかよ」
「だからと言って安心というわけではありませんが。法則についてもまとめていましたが確定したのは17時18時間ということ。あ、ないですよね?それ以外の時間帯」
「すみません、確実にそうですとは言えないですが、多分その時間以外はないと思います」
「どうやって調べたんですの?」
「記録をつけていたので」
それがハードモードだった先輩達が少しでも有利に立つためやっていたことだとしたら。わたしは、いやきっとみんなもそう考えているからこそ、言い方がおかしいかも知れないが先輩達に臆していた。
「それで。っと、それから、どうやって戦っていったんだ?」
チカちゃんはわくわくと感銘も含んでいるようだった。その感情はわたしにも理解できるもので、というか多少は持ち合わせていた。
「はい。それでは続きをお話ししましょうか」
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先ほどの話しにあったように、わたし達も神楽の説明を受け、考察に時間を費やしました。
「君の素質スキルは“空間支配”ね」
「空間支配?」
事前にナナから話を伺っていましたがすぐに理解することは難しかったです。
「空間支配ということは、霊力を使い、範囲内の物を思いどおりに動かす、発動させるのような感じでしょうか」
「それは、ワタシにもわからない。髪の毛採取による素質の言語表示化は本人が理解するため自分の素質そのものが使用者に向けて呼びかけている、訴えていると言ったほうがいいかな。だから」
「つまり、詳しくは自分で調べろと」
「うん」
「素質スキルは霊力運用の効率化にとってとても重要なもので、そのためには理解が必要になってくる。実験していく余裕があるかわかりませんが、ね。ということですね」
ナナは頷きました。
「次は君だよ」
「うん。よろしく」
リセの表示は“設置”とありました。
「設置……」
「神楽、魔法を、ということでしょうか?」
「わからない。四季はどう思う?」
「設置の言葉から察するにですが、地面に神楽を置き、何らかの条件で発動、という感じでしょうか」
「置く」
「イメージですよね、ナナ?」
「そうだね」
リセの素質はわたしのそれに比べて想像しやすく、いくつかの予測案を出したころ。
「そろそろ、霊力が回復してるんじゃない?」
「どうなんでしょう。わかりませんが」
「慣れると自分の霊力を頭の中で数値化できるようになるよ。ちょっと触るね」
ナナがふわと飛びわたし、リセの順にタッチしてくる。
「うん。ある程度回復してるみたいだよ」
「リセ、調べてみましょうか。使い切らない程度に」
「でも、もう遅いよ?場所だって。誰かに見られたら」
この時時間は夜八時前でした。
「場所は、ふたりが使いたい広さの場所があれば大丈夫。誰かに見られる心配は、ワタシ力である程度の防御と一般の人間を巻き込まないためのフィールドを作ることができるんだ。その空間の中なら何しても大丈夫だよ」
「リセ、行きましょう」
「もし練習してる間に敵が現れたら」
「ですから威力は抑えて、素質に関して調べるということで」
「まあ、それなら」
両親に散歩と伝え家を出ます。ナナがふわふわ飛んでいましたが何も言われませんでした。
「それでは、試してみましょう」
河川敷でナナに空間を作ってもらい、わたし達は調査を始めました。リセの素質は予想通り地面に神楽を置き、発動するものをさしているようでした。一発目で使えたこと、ナナに霊力測定をしていただいた結果からそういうものだと判断し、次に発動条件について調べました。設置時に条件付加のイメージをつけ、指を鳴らす、大きな音が鳴る。対象が範囲内に侵入、10秒後など色々試しましたが、すべてほぼ想像通りに発動。実践で使えるとの判断に至りました。
「これで戦えるかな」
「恐らく。先ほどのように使うよりも水準は高くなると思います」
次にわたしの素質スキルについての実験にうつりました。空間支配の定義を調べましたが造語のようで、辞書には載っていません。範囲内に霊力展開、色々と試してみました。目をつぶった状態でリセの伸ばした指の本数から、遠くの草の揺れている感じまで、範囲の広さにもよりますが霊力で感じることが可能という結果に。範囲内の空間において正確な位置と状態の把握という答えにたどり着きます。イメージしていた範囲内の物質に対する動きの支配は素質のうちに入らないようで、遠隔操作に分類されるように考えられました。石ころの場所がわかっても、動かすのは自分が静止、集中しないとできませんでした。支配と言うよりは認識が正しいような。空間認識。空間支配だなんて名前負けしてますからね。なんだか偉そうなので空間認識と呼んでいるんですよ。
「ただ」
「うん?」
「これ、戦闘に生かすの難しいですね」
「そう、だね。うん」
「接近戦において敵の動きを完璧に察知することが可能ですが、それに霊力を消費すると、ただでさえ火力不足というのにさらに下がってしまいますし。空間認識を併用する戦闘となると」
「どうすればいいんだろう……」
「攻撃力だけでいうとリセの設置による神楽が一番高いです。次の戦闘、いつになるかわかりませんが、それをメインとして戦いましょう。必ずわたしがあなたを守ります」
「守るって……」
「攻撃に集中してくだされば、リセの身を守りますから。すみません。役に立てなくて」
「そんなこと言わないでよ。私ひとりじゃきっと何もできなかった」
「そんなこと言わないでください」
翌日、わたし達は傷つきながら敵の撃退に成功します。
「君達には、こうやって敵を倒して、これを集めて欲しい」
「何ですか?それ」
「“再生の欠片”。敵を倒すと出てくる小さな欠片。これを集めることで、ワタシ達の世界は敵の呪縛を断ち切ることができる。そうすれば、君達も本当の力を発揮することができるよ」
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「話止めちゃってすみません。えっと、その、再生の欠片?わたし達は、集めていないんですけど……」
「そうなんですか?ナナ」
「説明していなかっただけで、ワタシが集めているよ。今回はワタシ達の世界を封じているってわけじゃないしね。でももちろんあった方がいいし、集めているんだ」
「そうなんだ。ごめんなさい、急に入ってしまって」
「気にしないでください。続けますね」
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この欠片はナナの世界のエネルギーとなっているもので、わたし達巫女がナナの世界から供給されて使っている霊力とほぼ同じ性質です。ただ極めて高純度で質も高く、今の皆さんが使ってしまうと体が持ちません。体に取り込むコントロールができるようになると、回復アイテムとして、またなんらかの理由で供給が切れたときに使えます。いざというときのために取っておくと使えますので、皆さんもある程度集めておくといいですよ。
「逆に、敵が人間からエネルギーを吸い取るのに成功してしまうと敵の力が増して呪縛が強くなり、みんなの力が落ちる。すぐにってわけじゃないけどね。だから敵を倒すか撃退して、エネルギー搾取をとめなくちゃいけない。ただ、敵は搾取にかなり時間をかける。それと攻撃をうけたらすぐに搾取をやめる。少しずつでも敵を倒し欠片を集めて、呪縛を解いていけば」
ここでナナにいざというときはこれを使うと爆発的な力を得られることを聞きます。ただ巫女なりたてのわたし達では制御しきれないと。まずは身の丈にあった戦い方を確立することにしました。
そこからわたしは自分の素質に合った戦闘スタイルを、リセは設置の練習を始めます。一般神楽における武器生成はその時点では行っていなかったので何とかリセに追いつけるよう考えました。ただ限りある霊力で武器まで生成ししかも戦闘でさらに消費するとなると運用が難しく、カツカツだという壁に当たります。
「こうなると、やはり」
「やはり?」
「あ、いえ。武器、どうしましょうかと思って」
あせりもありました。リセは自分の戦い方を定め、レベルアップしているのにわたしは模索中。いえこの時点で後に使う案を出してはいたんですが、決断に戸惑っていました。ですがやはり、攻撃して、倒さなければこの戦いは勝てない。そう言い聞かせ、わたしは答えを出します。
「銃?」
「はい」
遠隔での攻撃。空間認識で敵の正確な位置が特定でき、かつリセの神楽とも相性がいい。わたしが考えうる最良の答えでした。
「でも、銃を生み出すのって、やっぱり霊力が沢山いるんじゃないのかな?」
シンプルなタイプのものならともかく、複雑な銃を生み出すつもりでしたからね。
「ええ。ですから防御に使う霊力をすべてそちらに回します」
「回す、って」
「イメージでは可能でした。普段防御に当てている霊力を攻撃時に上乗せする。武器生成にもできると思います」
「いや、できるかもだけど、それじゃ攻撃されたら」
「されなければいいんです。今のままの敵ならもしかしたらこのままでもいいかも知れません。ですがもし敵が強くなったら。掌底からの霊力波、リセの設置攻撃で倒せない敵が現れたら。無理をしてでも、高い攻撃力を得ることが必要なんです」
「攻撃されたらどうするの?すべてって、ほとんど生身の人間になるってことだよ?」
「リセは心配してくれるんですね」
「当たり前でしょ!」
「ありがとうございます。でも大丈夫、リセの設置はとても便利で、隠れて戦うわたし達の周囲にリセが侵入発動を設置してくだされば、危険を察知できます。わたし達をえさに、敵の動きをコントロールできるんです」
「でもそれは」
「酷なことですよね。リセをこの戦法に巻き込むのはよろしくないんですが」
「私はまだいいよ。防御にも霊力使ってるんだから。でも四季は」
「努力して神楽と呼べるまで昇華させます。ナナにも守ってもらえますし、とりあえず一回、これで戦ってみましょう?」
リセは快くオーケーとは言ってくれませんでした。わたしが逆の立場でもそうしたかもしれません。思えば嫌なことを言ってしまいましたね。
「ね?」
その日からわたしは遠距離攻撃用の素無いパーライフルを生み出します。敵は音によく反応することを知っていたのでサプレッサーを付け、できるだけ気付かれないように戦っていました。リセが設置を敷き詰めてくれると言っても限りはありましたから。不安定な戦い方でしたが、それでも倒していきました。
わたし達が巫女になって一月ほどでしょうか、いつもはわたしの家にいたナナがわたしのかばんの中で寝てしまい、学校に来てしまいます。そこで同じクラスの楯が発見します。
「ね、四季ちゃん、それって何?」
わたしとリセはあせり、ナナは喜んでいました。
「桃桜さん、ちょっとあっちでお話しませんか?」
「ん?いーよー」
楯を連れ屋上へ。ナナが見えることを確認します。
「君も巫女になって、ワタシの世界を救ってよ!」
「なにそれ?いいよー面白そう!」
わたしがどう対処するべきか考えている間に楯の加入は決まっていました。
その日の放課後に楯は巫女として目覚め、素質スキル“壁”を確認したところで敵の襲来を感知しました。
使い方をどう覚えたのか、突っ込んできた敵のリセへの攻撃を楯は壁を生み出し防ぎました。
「これ、すっごいね!」
「いえ、凄いのは桃桜さん、楯のほうですよ」
「本当?あたしがみんなを守るから、まっかせて!」
防御役というのはとても重要で、それだけリセは攻撃に集中でき、わたしも空間認識に割く霊力を抑えることができました。
「この話って、内緒だよね?」
今までで一番スムーズに敵を排除した後、楯にそう聞かれました。
「そうですね。不可思議なものですし」
「ひとりだけ、相談したい子がいるんだ。四季ちゃんほど頭良いわけじゃないけど、いつもあたしを助けてくれる、っていうか二人とも知ってるか、えっとね
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「ただいま」
階段を降りる音が聞こえたと思ったら、女性が二人顔を出した。きっと、先輩達の味方。
「おかえりなさい。この子達が昨日話した」
「ああ、うん。はじめまして。私は鈴桐子。よろしくね」
「なまってるな」
「なまってますわね」
「ん?」
「ごめんなさい、なんでもないんです」
失礼組の発言に必死に頭を下げるわたし。
「桐子、漢字の説明してあげてください」
「漢字って?ああ、鈴虫の鈴に木へんに同じって書いて桐、子供の子で桐子」
「あー、そっちか」
「勘違いですわね」
「すみません。すみません」
「あー、わかりにくいよね。ごめんね、勘違いさせちゃって」
きりっとして端整な顔立ちを持つ鈴桐子さんは軽く手を上げ失礼組の発言を流してくれた。明るめの茶髪は染めているのか、セミロングをひとつに縛っている。四季さん、リセさんとはまた別の視点で良きお姉さんといった感じで、サバサバしていそうな雰囲気からモテそうだなと考えていたが、なんだか失礼なことでわたしは失礼組の仲間入りはしたくなかった。
「ひかり、ひかりもお願いします」
「うん。えっと、甲木ひかりです。漢字は甲殻類の甲に木曜日の木、ひかりはひらがな。どうぞよろしく」
桐子さんの後ろにいた甲木ひかりさんはそう言って頭を下げた。こう言うのは失礼かもしれないけど、とても普通というのが第一印象だった。黒髪のロングヘア、整った顔。どこにでもいそうな普通の人。でもこの人も巫女、いやなんだったかな、神楽姫できっとわたし達より強くて、厳しい戦いに勝ってきた人で、だったら普通とはほど遠い存在ということだ。うん。やっぱりそうは見えないけど。
四季さんにお願いされわたし達も挨拶を済ませる。これが先輩達チーム。四季さんリセさん楯さんの三人だけで完成された連携だと思っていたが、まだまだ本域でなかったようだ。
「夕飯食べにいく?みんなで」
「どうします?みなさん」
「そうですね、えっと」
「おねがいしまーす!」
「ちょ、ますみちゃん」
ますみちゃんは立ち上がり元気に頭を下げていた。
「お断りするのも失礼というものですよ、ナギさん」
「いや、でも散々お世話になってるのに……」
「こちらは一向に構わないですよ。勿論家に連絡も必要ですし、無理にとは言いませ」
四季先輩が話を止め、ナナが十人の中央に飛んでくる。
「みんな、襲来だ。ポイントは」
「Aの2、昨日みなさんがいた場所より少し西です。食事は後ですね」
Aの2。ナナはともかく、四季先輩がわかった理由は。まさか、じゃないよね。
「皆さんの実力も見させていただきたいので、どうします?前半か後半か」
マンションをエレベーターで降りる。随分と大所帯だった。
「と、どっちのがいい、のかな」
「前半でいいんじゃね?」
「わかりました。二台で行きましょうか。皆さんは楯と桐子の運転する車に乗ってください」
「りょ、了解です」
言われるがまま楯さん指差す車に乗る。バンと言ったか、八人くらい乗れる大きな車だ。
「シートベルトをお締めください!この度は巫女巫女観光をご利用いただきまーこーとーにーありがとうございます。この便はここ発敵行き直行コースでございます!カウント2!1!はっしーん!」
強引なアクセルからくる重力を感じ楯さんの荒い運転に体が揺れる。ナナが必死にわたしの髪にひっついていた。
「お、おお、すげーな、事故るぜ楯ちゃん!」
先輩をちゃん付けする失礼チカちゃんにつっこむこともできなかった。
「ダイジョーブ!あたし四季ちゃんの次に運転上手だからー」
「こ、ここここ怖くなんてないですわですからもう少し安全に」
キョウちゃんが隣ででがたがた震えわたしの袖を必死に握っていた。それはサラちゃんの特権、ってわけでもないけど。
「キャーすっごーいライクアジェッコースター!」
「……きゃー……」
そのサラちゃんはますみちゃんの横で無表情に揺れていた。着いたとき何人か酔っていないか心配だ。そんなわたしの懸念をスルーし運転を続ける楯さん。二度ほど桐子さんの「大丈夫ー」という声が聞こえたがしっかり返事できていただろうか。
「とうちゃーく!さてみんな、地球を救う時間だよん!」
チカちゃんがドアを開け河川敷に向かう。走りながらインカムをつけるわたし達の後ろに桐子さん四季さんリセさんが続く。あとの二人は駐車しているようだった。
「ナナ、展開を。皆さん、よきところで交代です。いつもどおりに戦ってください。ご武運を」
「みんな、行こう!」
先輩に声をかけていただき、わたし達は前に出る。
「っし!行くぜー!」
「殲滅宣言ですわ!」
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前衛役だろうか、海悠ちゃん伊織ちゃんが左右に走り出す。足が速い海悠ちゃんがハルバードを出し一撃で敵を沈める。
『っしゃあ!』
『その目に焼き付けてよろしくてよ』
右に展開した伊織ちゃんは敵の中に踏み込み三体の動きを止める。
「重力は範囲系ですね」
「本人を中心にある円状に、だね」
伊織ちゃんも出した日本刀で敵を一刀両断していた。海悠ちゃんは二体目に切りかかる際サイドから攻撃をうけていた。
『ってーな、このやろ!』
『はっ!』
凪ちゃんの霊力波、そのものが神楽のようだが、は綺麗に海悠ちゃんを避け敵を貫く。一撃では倒せなかったが海悠ちゃんの追撃で倒しきる。
『サラちゃん!』
『……大丈夫!』
沙良ちゃんが敵を引き付け、妖精で囲み三点からのレーザー状の霊力攻撃で倒す。メインアタッカーではないが攻撃力はありそうだった。
「多角的な攻撃ですね」
「だね。ひかりちゃんのよりも多方面から撃てそう」
『右が手薄かも!』
『手伝ってやんよ、キョウ!』
『感謝はいたしませんことよ』
『僕が食い止めるから!』
後ろにいたすみちゃんが左翼で防御シールド出し、海悠ちゃん凪ちゃんが右に移動していく。攻撃を受けつつ敵の数を減らして行った。
「皆さん、交代しましょう。下がってください」
『はい!』
『オラ、最後にでかいの一発だ!』
海悠ちゃんが後ろに向け拡散霊力波を撃つ。
「おー、こりゃ強いね!」
「近距離では威力高そう」
「わたし達の出番ですね。後輩達に、格好いいとこ見せちゃいましょう」
「お、四季ちゃんがやる気だ」
「私と桐ちゃんは初披露だし、頑張ろうね!」
「そうだね」
「戻り、ましたっ!」
息を切らし五人が戻ってくる。そこまで疲れている様子はなかったが、攻撃はいくつか受けているようだった。
「お疲れ様でした。それでは、見ていてくださいね」
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「状況開始」
四季さんの声に合わせ桐子さん楯さんひかりさんが前へ出る。四季さんはその場にとどまり少し遅れてリセさんが前へ。
「数24。両翼から数減らしていきましょう。楯は侵攻ストップを」
四季さんがスナイパーライフルを出し奥の敵を狙撃していく。左に桐子さん右にひかりさんが移動。桐子さんは槍を出し華麗な動きで二体を同時に倒した。三体目の攻撃を捌きまた二体同時に倒す。
「あの人、桐子さんつったか、すげーな」
「素早くて、武器使って攻撃する人かな」
「増援来ました。数10」
ひかりさんが一本指を伸ばし敵に向ける。
『はっ!』
レーザーだろうか、サラちゃんの妖精が使うような霊力攻撃で一体、いやレーザーが屈折しもう一体を倒していた。襲ってきた敵をパンチで吹き飛ばし、さらにレーザー攻撃を当てる。
「対多数向けの攻撃ですわね」
『中央に集めたよん!』
『設置も完了』
「桐子、左から増援です。フォローします少し下がって」
『了解』
「リセ、楯、発動を。ひかり、中央を気にしつつ軽めでかまいません」
『オッケー!』
四季先輩の指示通りに四人が戦闘を繰り広げる。軍隊を彷彿とされせる動きだった。
『ダム決壊!』
『と、発動』
楯さんの壁がなくなりなだれ込んでいた場所にリセ先輩が設置していたようで、大きな雷撃が発動すると一気に十体ほどが倒れた。
「楯、桐子と組んで左翼。ひかりとリセはともに中央へ。右のラインはわたしが刺します。気配が消えましたね。増援はもう無いようです」
桐子さんひかりさんの素質スキルはわからなかったが先ほどの話では悩んでいた四季さんの空間認識は、戦場すべての情報を網羅していた。どこの敵をどう叩いて次はどう動く。いや、情報を得ているとしても的確な指示を出すことは可能だろうか。そして“組んで”という指示のみで完璧に動く先輩達。
「チームワーク」
思わずつぶやいてしまう。それはまさにチームワークだった。完璧に完璧な。
「状況終了」
四季先輩が最後の敵を撃ち抜き、戦闘が終了した。
「お疲れ様でした。みなさん戻ってきてください」
ゆっくりと先輩達が戻ってくる。
「お疲れ様でした。戦闘の話は後でにしましょうか。帰ってお食事、どうですか?」
「えっと、そうですね……」
「先輩、悪いけど、あたし帰るぜ」
「私も、おいとまさせていただきますわ。用事がありますので」
「僕も!ごめんなさい先輩達!練習したいの!」
「ますみ、バカ、言うなよ!」
「ひ、秘密、いえ嘘でございますよ先輩方」
「……私も……」
どうやら考えることは一緒らしい。もれなく先輩の戦闘に感化されたわたし達は能力の向上と先輩のような強い巫女を夢見ていた。
「折角なのに、すみません。今日は帰って、その、また明日、ご連絡させていただいていいですか?」
「大丈夫ですよ」
「みんな。これが再生の欠片。今回は君達に渡すね。ナギ」
ビンに入った欠片を受け取る。ナナは満足そうにわたしの頭に乗った。
「楯、送ってあげて」
「あっ、大丈夫です!歩いて帰りますから」
「気にしなくて大丈夫だよっ?」
「いえ。本当に」
「そうですか、それなら。気をつけて帰ってくださいね。また明日」
わたし達の意図を汲み取ってくれたようで、先輩達は車に乗っていった。わたし達も歩き出す。
「末恐ろしいな、先輩は」
「個人個人がね。わたし達より上だし、何よりチームワークが」
「連携力。必要不可欠って言うんですの?」
「わからないけど、きっとね」
「でも連携ってどうすりゃいいんだよ」
「すぐにはわかんないよ、きっと。少しずつ覚えて強くなっていこうよ」
「なにそれ、良いこと言うじゃんかよ」
そんなつもりはなかったけど。
「でも、頑張ろうね!僕頑張ってみんなを守るから!」
「ま、先輩ばっかりにでかい顔させたくねえしな。あたしらも強いし強くなるってこと、見せちゃるか」
こんな会話したことなかった。
「あーら、珍しく意見合いますわね」
いや、あんたら結構あるよ。
「今は先輩に比べたらまだまだだけど。あれくらい目標高い方がいいかもね」
「……がんばろー」
「おう!」
「ですわ!」
第三話 色褪せないままわたしを呼ぶ声 おわり
to be continued……