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第二十一話

「ナギちゃん!」

水華の叫びを尻目にわたし達は突っ込む。卑弥呼の、甲木ひかりの体は脆くわたしの伸ばした鋼線で右腕がもげる。もげた腕先の指から光線が飛び避けてから構えると右腕がまた存在していた。わたしが切り落とした方の右腕は地面に落ちていない。生え変わったわけではない。

『グロくね?』

『テレビ放送できませんわね』

「オイ卑弥呼さんよ、テメーは、何回殺せば死ぬ?」

「何度でも剣を振るえよ、巫女、と呼んだら怒るかね?」

「ウェルカムだぜビッチ。何回も絶命させてやんぜ」

チカとキョウで近距離わたしが中距離サラが遠距離から攻めるが特にかわそうとしない卑弥呼。切り落とそうが穴開けようが五秒もしないうちに元に戻る。

「命を粗末にしてんなァ」

「からだを粗末にせねばお主らには勝てぬ。強くなっておるのでな」

「今なら鬼の総大将に勝てるかもってか?」

身体能力はわたしやチカ以下といったところ。甲木ひかりの素質スキルをわざわざ使うのはこちらへのあてつけか、それとも使いやすいからか。記憶改竄がヤツ本来のもの。

『チカさん!』

『おう!』

霊力変換した電波を探知し時間をおいてから侵入した。水華達に集中していた卑弥呼がゲートを壊されても気付かなくてもおかしくはない。卑弥呼が記憶改竄とからだの乗っ取りを繰り返してこの時代まで生きてきたとしたら“いれもの”に素質スキルが備わるわけではないと考えられる。

「避けるか弾くかしとけよ、こっちも穴アキになっちまう」

『……うん』

曰く魂に素質スキルが備わるとしたら、加えて光線をあてつけでなく使いやすいから使っているとしたら。魂の混在が認められる。甲木が生きている可能性。

『マジで死なねーのな!』

「リジェネレーションが得意でも霊力を消費してんだ。いくら歴史上の人物でも死なないヤツなんていねェ」

「りじぇねれーしょん?」

「知らなくていいぜ、海の向こうの言葉さ」

甲木の魂を抜かなかった理由はなんだ?魂も抜かず命の気遣いも無い。まさか、奪うつもりか。

「お前ら、体パクられんなよ」

『何ですの?』

「クソ卑弥呼さんがご所望でわたしらの“いれもの”をギッてくる可能性があんぜ」

『奪うつもりかよ!』

「お主らのからだも、ほんにうまそうじゃの」

「チッ、腹壊すぜ」

「じゃがお主らを捌きながらは無理じゃ。相性もある、その場に転がしてからでなければの」

「って言ってんが警戒しとけよ。んでブッた切れ」

19回。卑弥呼が欠損部位を復活させた回数だ。顔だろうが心臓だろうがピンピン動く。

「まァ、二桁で倒れるほど楽勝じゃねェよな」

「中々にてこずらせるの」

「たりめーだダボが。こっちは地獄見学に行かされてんだ」

「“これ”では止まらぬか。仕方な

『隙ですわ!』

キョウが卑弥呼の口から上と下で切り飛ばす。ふわり飛んだ顔半分を卑弥呼がキャッチ、元に戻した。

「会話の途中じゃ、不躾であろう」

「悪ィな、そいつモラルがねェんで」

「まったくもって障害じゃ。あの時命を落とせばこうはならぬかったか」

「どうだろうな」

『オラ!』

「お前のリジェネレーションが間に合わない速さで殺せば仕舞いさ」

「それはちくと困るのう。じゃから、お主らも止まってもらおう」

笑みを含みわたしに指を向ける卑弥呼。

「来たぜ集まれ」

わたし達は密集する。霊力使用。

「これで仕舞いじゃ、そちらがの」

卑弥呼が指を鳴らすと同時にわたしの鋼線チカのハルバートキョウの日本刀サラの精霊が消えた。巫女服も普通の服に戻る。

「楽しかったぞ、裏切りの巫女よ」

そのまま光線をこちらに撃ってくる。わたしはそれを“鋼線で弾いた”。

「ぬ?」

「何かしたかい?ビッチ」

「おかしいのう?」

改めて解除する。

「悪ィが、テメーのその手は効かねェんだ。残念だなァ、切り札が使えなくてよ!」

「そんなはずがあるまい!」

さらに出力を上げたようだが、わたし達の霊力は封印されない。

「ボサっとしてんな」

鋼線を飛ばし両手首から先を切り落とす。奇怪そうな顔をしながら卑弥呼は回復させた。

「さ、ラウンド2と行こうぜ」

改めて突っ込む。反撃の手を強めてきたが反論はなかった。考えているのか考えるのをやめたか。

「何故じゃ、何故効かぬ」

「ババァ、ナマったんじゃねェの?」

「たわけ!」

卑弥呼が禁じ手を使わないまま戦闘を行う限りこちらは倒れない。起源である卑弥呼には通じないと思ったが、ありがとよ。

「何故だと思う?どうしてテメーのオハコが効かないと?」

『答えはCMの後ですわ!』

『……おもしろい』

「何を使った、裏切りの巫女よ」

「焦りなさんな。思惑通りで嬉しいぜ」

「答えよ!」

「テメーが光線を使うのと同じ理由さ。すべてワカってんだ」

「……何じゃと」

「テメーは表で姫巫女となりこの世界を救う手助けを、裏で鬼を操り巫女と戦わせてきた。雑魚兵も、幹部も、総大将ですらも、すべてテメーの手中さ」

卑弥呼は返事をしない。わたし達は攻撃の手を止めた。

「わたしらが裏切ったのも、潰し合わせたのも、すべてテメーの計画だったんだろ?その方が楽だからなァ。ほら、観測してみろよ?テメーな可愛い幹部、ゴリちゃんはご存命かい?」

「……何を、した」

『答え合わせの時間ですわね』

「ダルマになって満身創痍のゴリちゃんが話してくれたぜ?わたしらにゃ仲間がいたんだろ?ますみと呼んでいたらしい。五年前、襲来したゴリによって魂を奪われ、殺された仲間だ。そいつの素質スキル、覚えているか」

「使ったというのか」

「ああ。“完全防御結界”。何人も侵すことができない神の領域。テメーですらな。ますみを食ったゴリを、食った。テメーの幹部な、まずかったぜ」

卑弥呼の血管が切れる。やはり本命。

「全員でいただいた。お前ならともかく幹部は素質スキルなんて扱えねェからな。それでも“いれもの”を模している以上多少は魂をキープしてあったみたいでよ、今の一回こっきりだが使えたってわけだ。ナイス、スーパーバリア」

なんて力。カミサマだよ、本当に。

『最後まで守ってくれたな、ますみは』

『……感謝』

「つーわけで効かねェ。よって死ね」

「一度きりというのなら!」

「あァ無理無理。テメーはわたし達には体感で一回、水華達には二回技を見せた。解析が出てんだよ、防ぐ術を知っちまった」

「やはり邪魔立てするか清明」

「セーメー?そういえばよ、いいのかい?わたしらにそんなに全力注いでくれちゃってよ」

「何がじゃ!」

「わたし達の相手をしている間、あいつらを止めなくてよ」

親指でわたしの後ろを指差す。

「テメーのゾンザイお留守のおかげで、最強の巫女がお目覚めだぜ」

“敵”か“味方”か、四人は立ち上がった。

「イージークレジット」




--------------------




「神楽覚醒、第四号から第一号まで省略申請、素質拘束“空間支配”、解除」

「もう解除済みだもんね!」

「反撃開始」

「うん!」

ナギちゃんの作戦か、わたし達はいつのまにか卑弥呼の拘束が解かれ、力を取り戻していた。

『よう水華。グンモーニン』

「助かりました。ありがとうございます。気付いていたんですね。鬼が卑弥呼の手先だと」

『昨日な。あんたもわかってたのか』

「そうなの?四季ちゃん」

「つい先ほどその結論に至りました。だからもうナギちゃん達と争う必要は無いんです」

彼女達の仲間はもう殺されていた。それの事実を認識できても彼女達は仲間の顔も名前も覚えていない。酷な話だ。

「貴様の策略かえ、清明」

対峙しているナギちゃん達に近づく。

「ナギちゃんが、清明?安倍清明?」

「やはりナギちゃんでしたか」

「オンミョージ?わたしが?」

「立ちふさがるのはお主の魂の意思か?推古といい、邪魔しおって」

「なんだそれ、聞いてねェよ」

「巫女の持つ素質、魂は輪廻を繰り返す。伊佐治、お主は安倍清明の魂を宿している、水華は推古。お主らは何度妾に立ちふさがる?」

あっそうかよ、とナギちゃんは飄々に返した。

「イカってるとこ悪ィけどな、その記憶はねェ。わたしはわたしの意志でテメーを切りたいだけだ」

「何でもよい、もう許さぬ。もう駄目じゃ」

「残念だけどよ、さすがに記憶改竄はできねェぞ?水華達も一発クラってんだ、もうカカらねェ」

確かにもう抵抗できる。観戦する形にはなっていたが光線による攻撃もそこまでの脅威ではない。

「そうかえ。もう理解した。認識した。お主らを崩させてもらう」

卑弥呼の影が浮かぶ。

「ようオオトウ。息災でうれしいぜ」

あの影がオオトウ。ナギちゃん達が戦いに行ったという敵の総大将。卑弥呼の一部そのものだったか。

「本気を出させていただこう」

影がしゅるしゅると卑弥呼の口に入っていく。霊力が増した。

「妾とて巫女、お主らと同じく無尽蔵に霊力を使えるわけではないのじゃ」

しかし今ので霊力が爆発的に上昇。わたし達の誰よりも上となった。さらに供給され続けているとすれば、無尽蔵とかわりはない。

「分断させてもらう。お主らがいそいそと戦っていた場所。その門を開け鬼を放つ。この国は混乱に陥るが、さてどうする?放っておくかえ?」

「チッ、いい趣味だぜ」

「四季、どうする?」

「こうなった妾は四人では勝てぬぞ?」

卑弥呼が空間を指で縁取る。画面が発生し河川敷の風景がうつされた。鬼が1、2、わらわらと出てきた。

「さあてどうする推古。何人を割く?」

『心配いらんで、四季さん』

インカムから声。アリスちゃんのものだった。

『聞こえとる?車の中で映像見とった。その鬼は、こっちで対処するわ』

インカムの電波を霊力変換。

「アリスちゃん、皆さん、よろしくお願いします」

『テレビから離れるから何かあったら呼んで、ほんなら』

インカムが消える。縁取った映像から鈴鹿ちゃん達が現れた。

「テレビを見ている皆さん、聞いてください」

わたしは妖精に目を合わせこの国すべてにむけ喋っていた。

「これは現実です。信じていただけないかも知れませんが、現実なんです。実際にそこには化け物がいて、皆さんを襲おうとしています。わたし達の仲間が対処します。今から場所を言いますので決して近づかないでください」

場所を二度きっちりと言う。妖精から卑弥呼に目線を戻した。

「めでたく全国デビューじゃねェか」

「これであちらに行かなくて大丈夫です」

「生きておったか巫女の子らも。しかしの」

「ガキ共見誤っちゃいけねェな。ゴリがいない時点で鬼がいくら出てこようがあいつらの敵じゃねェ。一度対峙してんだ、それくらいわかるさ」

この可能性もあって鈴鹿ちゃん達をあそこに配置しておいて正解だった。さらにナギちゃん達が、おそらく、敵にならない展開。再生の欠片は一人あたり残り4本。再生の。

「ならば、お主らの息の根を止めて巫女の子らをなぶりに行くとするかの」

「あなたの素質スキルは、記憶改竄、では、ないんですか」

「あァ?素質スキルでもねェのにあそこまでの水準は保、オイ待て」

ナギちゃんも辿り着いた。他の皆さんは構えを崩さないまま。

「“再生”、か?」

「再生、どういうことですの?」

「その通りのようです。怪我の再生、リジェネレーション。記憶の再生、再構築と言ったほうがいいかもしれません。魂の移動に関しては、一旦消滅させ対象の“いれもの”に再生させるのか、詳しいことはわかりませんが、恐らく再生で間違いないでしょう」

「くふ、よくそこまで。教えしんぜようよ、その通り、妾の固有素質こそ再生じゃ」

「では再生の欠片というものも」

そこで全員がザワつく。

「妾の為の霊力凝縮体じゃ、そう呼称してもおかしくなかろう?」

そう言って喉を鳴らした。口内に仕込んでいたか。

「神楽覚醒」

「クソッタレ!ブチ込め卑弥呼止めろォ!」

銃撃、斬撃、霊力波。同時展開された防御壁に阻まれる。

「第四号から第一号まで省略申請」

破れない。壁が厚い。

「素質拘束」

届け、今すぐに。

「“再生”」

でないと。

「終わりじゃ。解除」

そして、光の柱が伸びた。




--------------------




「心地よい心地よい。爽快とはまさにこのことじゃ」

元々巫女服な卑弥呼の服装は変わらない。服装は。霊力が。オオトウを飲んだときとは比べられない。こいつは。

「さて、相手をする前に少し与太話を挟むとするか。妾は誰じゃ?」

「卑弥呼、だと、自分で言いましたよ」

「そう妾は卑弥呼。二千年前に生まれしお主らのご先祖様じゃ。しかしそれは、魂のはなし」

やはりここで持ってくるか。甲木のことを。

「“いれもの”は別のものじゃ」

「水華組、落ち着いとけよ」

なんて言葉をわたしはかけていた。

「この“いれもの”はの、お主らの仲間じゃ。水華、お主らが幼き頃より仲ようしていた巫女。本心は水華の“いれもの”が欲しかったんじゃがの、妾の魂ももれなく入れるわけではない。お主ら四人には適合性が無かったのじゃ」

戦闘能力が高い水華の体を奪わなかったのはそういう理由か。

「と、その前に、裏切りの巫女が死んだと妾の子に知らせさせた」

ナナ。何かのタイミングで出てくるかと思ったがまだそのまま。そしてわたしらは殺されたことにされたらしい。

「これじゃな」

卑弥呼が口に手を入れる。羽。

「用が済んだのでな。妾に還した」

食ったってか。ナナを。

「後味が悪ィぜ」

「酷い話ですわ」

「その心の乱れを隙つき記憶を再生した。妾の物語通りにの。それからほぼ日を置かず、お主らに会いに出向いた。解除も知らぬお主らはやや物足り無かったがの。水華が目を失ったのもその時じゃな」

「つまり、あなたが」

「中々に美人であったぞ水華。その目、飲んでやりたかった」

「いい趣味してるぜ」

「ちょっと待てよ、じゃ、じゃーナギの目も」

水華とわたしの目が左右対称とはいえきっちり失われていたわけで、わたしの目を奪ったオオトウが卑弥呼の一部であるならば水華のそれも同じ理由になる。

「不便じゃったか清明。お主はもしもがあるのでな、潰させてもらった。空間認識を司る水華にはそうでもなかったようじゃが」

「ナギ……」

「気にすんな。おめめの話がしたかったのかよ閉経」

「口に気をつけよ赤子。しかしそうじゃの、戻そうぞ。妾に負けたお主らの仲間のうち、一人の“いれもの”をいただいた」

「そうだとは思っていました」

「……ほう?」

気付いていたか。その可能性もあるとは思ったが。

「やっぱり、そうだったんだ」

「四季ちゃんの、言う、通りだったね」

「……うん」

「昨日の夜にひょっとしたらそうかもしれませんと皆さんに言っていました。それでも、それならば尚更、あなたを倒して失った仲間を弔います」

「引かぬか。これくらいでは引かぬか。それならば、その実情も知るべきではなかろうかね」

「実情?」

「この“いれもの”を奪い、どうしたか」

「それは」

「説明の必要はないぞ。お主らを再生するからの」

姫巫女が指を鳴らし6秒。水華達四人が各々叫んだ。

「あああああああああああああああっ!!!」

「何だってんだ?」

「嘘、嘘。嘘。嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

「いやだああ、いやだよぉ!!!!!」

「あなたと、あなたという人は……っ!!」

「くっふ。くふふふっふふふふふっふふふ!!!!!いぃい反応のおかげかの、愉悦じゃ愉悦。すべてを思い出させてやったのじゃ、もっと両手を挙げるが良いぞ」

「何が起こってるんですの?」

記憶の再生。元あった記憶に再生したというのか。しかし気を張っていた水華達に?ノーモーションで?解除しているからといってそんなことが可能だろうか。

「落ち着け水華。あんたが倒れちゃ思う壺だろうが!」

「思う壺、わかっています。わかっていますが……」

「察せよ清明」

「その名で呼ぶんじゃねェよビッチ。わたしはナギだ」

「何でも良い。無理な話じゃ。あんなことを思い出したとなればのう」

「何がだ。わたし達がテメーに捕まった間、水華達に何した?」

「他愛も無い児戯じゃよ。この“いれもの”に関するすべての情報を消すための手伝いをさせた。元の“いれもの”を捨てさせ、この“いれもの”に関する記述や関わりのある物、すべてを処理させた。歳相応にやめてやめてと叫んでおったが、口答えできぬほど遊んでやったらぼろぼろの体で妾の言うことを聞いたのじゃ」

簡単に説明したが口では表せない絶望がそこにはあったのだろう。だから強いこの四人がここまで落ちている。

「一通り終わったところで記憶を再生した。すべてを忘れ何食わぬ顔で生活していたことを思い嘆いているのじゃろうよ」

「つまり、このためか。すべて!」

だとしたら性格最悪だ、卑弥呼ってのは。

「水華達自らにやらせたのも、甲木の体をパクったのも、ここまでがテメーの作戦!すべてが、かよチクショウ」

「じゃったら、どうする?妾が水華達を陥れるためここまで策を練っていたとしたら。お主らにわかるように痕跡を残したのも、わざとだとしたら、どうする?」

「テメー友達一生できねェな」

「いらぬわ。カカッ」

不敵な笑みを見せる卑弥呼。このままではまずい。あのタイミングでドヤ横殴りした意味がなくなる。歴史の教科書にわたしはこう書かれる。“卑弥呼をブッ殺しに行ったがまるで歯が立たなかったバカなドヤ顔毒舌巫女”。そいつは御免蒙る。

「皆さん。これの予想も、していたはずです」

落ちていた水華が立ち上がる。

「心は傷付きます。涙も止まらないでしょう」

指を鳴らし銃を出す。

「しかし。それでもひかりのために」

すべての再生。水華達の記憶はすべて戻った。

「わたし達の根源は十年前から変わりません。“守りたいから巫女になった”。大切なひかりをあなたから守るため、ここで、殺します」

のそりと三人も立ち上がる。

「良い良い。もう目覚めたか。悔しいほどに良いのう。さて、一度にお主らもれなくを相手するのは骨が折れる。そう間単に妾に届くと思ってもらっても困る。こういう事象ではまずしもべを倒してからにしてもらおうかの」

「しもべェ?残念だけどテメーの可愛い部下はそれこそもれなくファックしてやったって覚えてるかい?」

「そうじゃったそうじゃった。“再生”してやらぬとの」

姫巫女が目をつぶり両手を合わせただけ。それだけ。それだけで姫巫女の前には四人の鬼が現れた。“味方”なわけがない“敵”。敵幹部。十年前だろうが、名前を忘れるわけがない。

「はわ復活しましたわ!」

「卑弥呼さんよ、スーツ知ってんだな」

「そう呼称するようじゃの、現代の生んだ価値ある衣服よ。見蕩れてしまうの、すうつたるものは」

軽口を叩いている場合ではない。こちらは合計8人。考えうる個人戦闘能力この国の上から8人だが、目の前の鬼はかつて四人がかりでようやく相手になったもので、加えてこちらを凌駕する卑弥呼がいる。いくら解除済みとはいえ。

「妾は貴様らの再生に疲れたのでな、休んでおるぞ。死んでもまた産んでやる故、気張って戦えよ妾のしもべよ」

しゃなり歩いて椅子にどかんと座る卑弥呼に四人の鬼は跪いた。

「卑弥呼様の仰せのままに」

立ち上がりこちらを向く鬼四人。

「さて、始めようね巫女」

イキセ。

「殺していいのですよね」

メシナ。

「そういう仰せじゃきにの」

ヨクヤ。

「食べられて以来だな、先ほどぶりだ」

ゴリ。

「ハッピーだぜ」

どうやら十年前は全力でなかったらしい。わざと倒させた?すべてこの時のために?それならそれで構わない。

「ナギちゃん、どう戦うべきだと思いますか」

しっかり乗り越えたらしい、わたしに作戦を伺ってきた。そういえば今までなかった。

「ツーマンセルで攻める。倒したやつから卑弥呼のお相手だ。もしあそこで座って見下しキメてるビッチが出てきたらその時はさすがに無視はできねェ。幹部対応は防御よりの二人、桃桜とウチのキョウちゃまにシングルファック任せてわたしとあんたで卑弥呼とダンスだ」

「一致ですね。ナギちゃん、チカちゃん、キョウちゃん、サラちゃん。すべてを思い出しました。ますみちゃんも、皆さんはわたし達の可愛い妹です」

すべてを。世界は、わたし達四人とますみでは無くなった。

「帰ったらよ、水華」

「はい」

「ますみの話、してくれねェか。どんなヤツだったか」

「ええ。必ず」

武器を出す。

「わたしとリセ、楯と桐子で」

「うん」

「オーケー!」

「まっかせて!」

「キョウ、足ひっぱんなよ。チカ、サラ、任せるぜ」

「ですわ!」

「頼むぜーサラ」

「……うん」

「ってわけだ幹部共。スタートだぜェ!」

ゴリに向け鋼線を飛ばす。がっしりと掴まれた。

「俺かい、ナギ」

「テメーとあっちのヨクヤはどっちが上だ?」

インカムから複数の声。チカとサラはイキセ、水華と利府はヨクヤ、桃桜と鐘ヶ江はメシナを相手に取った。

「彼だ」

『一度飲んでおいてください。一筋縄ではいかなそうです』

鋼線を伸ばしたままわたしもビンに手をかけていた。

『ヘコませますわ!』

先に再生の欠片を飲んだキョウが重力神楽を打ち込んだタイミングでわたしも飲む。回復。体の疲れはまだ大丈夫。

「おらよ!」

わたしの第二撃をゴリの武器が弾く。先ほどは持っていなかった日本刀をかざす。

「キョウ、前出て来い接近寄りで行くぜ」

『お任せあれですわ』

「全力で刺す。一番乗り目指すぜ」

『ですわっ!』

キョウとゴリが一撃を交わす。恐らく接近戦のサシではこいつは勝てない。

「さっきは手ェ抜いてたのかい?」

「いや全力だったさ」

「そりゃ朗報だ」

余裕というわけではない。だがこいつに手こずるわけにもいかない。攻撃を二度受けるがわたしの防御力のが上だ。

「テメーは二度どころか万回殺しても足りねェ。ますみを食ったクソ野郎だからな」

「覚えてもいない仲間に思いを寄せるのか」

「そいつァ禁句だ。兆回殺す」

解除状態で二人がかり。それでやや有利といった状況。やはり鬼は強い。こいつらを一瞬で蘇らせる奥の真打は、さぞやなのだろう。

「だァああああ!!」

「まだまだこれでは死なぬよ」

『お留守ですわ!』

後方からの攻撃を見向きもせず受け止めるゴリ。が、重力神楽にひっかかる。にぶったところで鋼線をゴリの指に絡め引きちぎる。

「くっ」

「キョウちゃま、さすがだぜ」

『言うほどでもありますわよ』

純然たる重力。斥力変換で防ぎきることが不可能な妨害神楽。随分とコメディな解除。

「もしもテメーが完全防御結界を所有してたら話は違っただろうがな、そいつはわたし達の仲間のもんでついさっき浄化した」

「指の一本くらいで調子に乗るなよ」

「じゃあ腕いただくぜ」

右腕を肘から切り取る。キョウとの連撃でゴリは追いつかない。傷つきながらわたし達を攻撃してくる。結果傷付く。左腕が負傷気味。だがまだ動く。

「ほら、愛しい卑弥呼様が見てんぜ?」

「俺が勝てずとも、卑弥呼様の策略のうちだ」

こいつらを出すのに消費する霊力よりも卑弥呼が一人で戦う方が効率的だろうに、ということは何か、意図が。相手をしつつ卑弥呼を見る。何かを仕込んでいる感じはない。が、何も無いわけが。

『終幕ですわね』

「楽しかったぜゴリちゃんよ!」

両足を切る。倒れこんだ。歩いて近づいていく。

「首切っていいぜ、キョウ」

「あら、いただきますわ」

「俺を殺すか」

「ああ。ただ死ね」

首と心臓を同時に刺す。キョウが刀の血を飛ばしわたしが鋼線を引き抜くとゴリの体が消滅する。じゃあな。

「はー、はー。ミッコンですわね」

「ああ、二番手だがな」

一歩遅く水華利府コンビがようやく立ち上がった卑弥呼と相対していた。霊力を開放する卑弥呼。

「キョウ、チカ達のフォローに回れ」

「あら行かないんですの?」

「やめときな」

残念だがキョウでは役者不足だ。卑弥呼の方に駆け寄る。

「よう、こっちも終わったぜ」

「ナギちゃん」

「良かろう良かろう。来るが良い」

くいくいと指を曲げる卑弥呼。こちらはまず三人。上出来だ。

「ラストバトルだ、踊ろうぜェ!」

「カカッ」

笑う卑弥呼。

「へ」

横から声がした。

「カカッ」

笑う卑弥呼。倒れる音がした。

「は?」

わたしは声を出していた。

「ごめんね」

謝る声がした。

「どうした水華。穴が開いておるぞ」

水華が、利府の攻撃で腹部を貫かれていた。

「魂が消えゆく“頃合い”じゃ」




第二十一話 このタマシイは誰にもあげない おわり

     to be continued……


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