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第二十話

「で、どーすんだ?」

ハッピーな放送からしばらく、わたしは左下に目線を固定し煙草をふかしていた。

「どうするって、何がだよ」

「何が?ナギ、頭はお前だ。お前が決めることだろう。お前がどうしたいか教えてくれよ」

「……わかんねェ」

「……ま、その気持ちは」

隣にすわりペットボトルを傾けるチカ。

「わからないでもねーが」

「姫巫女を殺す第一目標は変わらねェ。が、それが何だ?結果的に世界を救うことになる。積み木を崩すために立てるバカがいるか?」

「子供は最後は壊すだろーよ。わーい出来た、えいっ。ガラガラってな」

「ままごととは違うんだ」

「ままごと、ねえ」

この国が壊れるのを見届けても心は晴れない。作り直す姫巫女がわたし達を放置するとも思えない。

「カード、切れよ」

その言葉を聞き取りたっぷり息を吐いてからチカを見る。

「お前にゃまだ切り札が残ってんだろ?」

「どうしてそう思う?」

「何年一緒にいる。何年一緒にやってきた。お前が言ったんだろ、“家族だ”ってよ」

「……ふ」

おかしくてわたしは笑う。何ですのと夕飯を買ってきたキョウとサラがやってきた。

「オーケーオーケー。幾分すっきりした。なるほど、まだ一枚残ってたぜ」

拳を握る。積み木の城が出来上がっていく。

「姫巫女を潰し、この国もいくらかブッ怖し、あわよくばあいつらと戦える。フルコースだ」

「……楽しい?」

「ああ。どう転んでも、最悪水華達とファック出来ねェかもだがな、カルメンだ。早速オオトウんトコ行くぞ」

「晩御飯はどうなさるんですの?」

「後だ後」

立ち上がり三人を後ろに部屋を出る。姫巫女のいる冥界のような世界。明かりの少ない住み心地最悪な環境、おまけに部屋を出るとクソみたいな化け物がふらふらと歩いている。オオトウに命を見逃されてから回復を済ませたわたし達はこいつらをシメて、住みやすい家作りを行った。結果がリビングと四人の個室。風呂が大きいのが自慢だ。

「ようゴリ、バナナ食うか?」

いくつかの扉をくぐりオオトウが居座る部屋の前にやってくる。門番として常にそこにいるオオトウの純粋な幹部の最後の一人、ゴリ。残りのヤツはわたしらと水華達が消し去った。

「何の用かな?」

スーツに身を包み角を生やす鬼はわたしの言葉を笑顔無く流した。ゴリの名前に似合わず端整な顔立ち、幹部はもれなくそうだったと記憶しているが。

「オオトウさんに会わせな。骨がトケるお知らせを持ってきた」

「オオトウ様はただ今離籍しておられる。また機会を待つといい」

「この一大事に?あの野郎だって姫巫女通信は見てたはずだろ?」

「口を慎みなさいナギ」

「何か御用事ですの?」

ナイスだキョウ。わたしが聞いてもゴリラさんは勘繰ってはぐらかすだろう。コメディは使いどころだ。

「急用だ。今はいないのだよ」

「そうかい、ありがとよゴリ。また会いに行くって言っときな。帰るぞお前ら」

「ゴリさん菓子パン食べます?おいしいですわよ」

「遠慮しておくよ」

「菓子パンですのに」

部屋に戻る。

「いいのかよ、ナギ」

「少し方向性が狂った。考えていいか?」

「お前の専売特許じゃねーか。あたしらの役目じゃねーよ」

「あらナギさん頭使うんですの?買ってきたチョコレートをあげますわ」

「ありがとよ」

ビニール袋から取り出されたチョコレートを受け取る。ソファーに座りひとかけらつまんで口の中を甘ったるくしてからわたしは頭を回転させ始めた。

「ああ、お前ら先食ってろよ」

「……うん」

カードが切れないとしても勝機はある。あくまでも姫巫女の目線は水華。そりゃそうだ、誰だってアイツとファックがしたい。

「しっかし姫巫女の霊力バカげてんな。電波に霊力変換ってできんのか?」

「やってのけたんですわ」

最高にハイなチームナギを忘れたとは思わないが、こちらへの意識は良くて三割ほどだろう。だがそれでいい。こちらへの注意が切れているなら動きやすい。

「……疲れそう」

「疲れるとかってレベルじゃねーだろ」

「……すぐ寝る?」

しかし最低限の警戒はあるはず。ガキ共を操ってわたし達を殺そうとしているんだ。冥界へのゲート制限くらいかけてくだろう。明日の正午だとしてもわたし達だけは入れないような制限を。

「あら、これおいしいですわね」

「麻婆?ここにかけろー」

「よろしくどうぞですわ」

「ん、からっ」

水華が黙っているわけがない。この国を救うためその両手に銃を持ち巫女服に身を包む。が、水華は勝てない。姫巫女が、“敵”が“そう”だとしたら。

「サラさんもどうぞ?」

「……いらない」

黙って死ぬあいつらじゃない。善戦する。姫巫女は傷つく。

「そこを叩く」

「お?」

「決めたよ、パーティーの内容」

「教えてくださいます?」

「明日の正午、水華達は姫巫女に会いに行く。しかし勝てねェ。そこで真打、わたしらの登場さ」

「ガキ共は?」

「水華なら姫巫女の記憶保護に素でひっかかるガキを連れて行こうとはしねェ。肩で息して片腕損失の姫巫女のおいしいトコをいただく。その後は、適当に暮らそうぜ」

「水華達が負けるんだな」

「勝ったら勝ったで、満身創痍の水華達を倒して終わりさ。ガキ共が残党になるだろうがそこまでの脅威はねェ。真剣勝負とかどうでもいい。この場所で刃を構えるわたし達が最高なんだ。今日はゆっくり休んで、明日の昼前準備体操をしてから行くぜ」

「おうよ!」

「ですわ!」

「……うん」

これでいい。話は後で良い。今は話せない。

「ま、何にせよ。いや良い、食うわ」

オオトウの出方次第だ。




--------------------




「できるわけないでしょ!」

桐子が声を荒げる。四人を送り楯桐子と話し合うため家に呼んでしばらくしてからのことだった。

「正直に言います。すべてを賭けても姫巫女を倒せる保障はありません。そんな場所に身篭った桐子を連れて行きたくはないんですよ」

「だからって、私抜きで、勝てるの?姫巫女に」

「桐ちゃん……」

「必要です。解除フルパワーの四人がかりでも太刀打ち出来るかわかりません」

「だったら」

「ええ。言っても止まらないことはわかっていました。命が宿っています。その子は、わたし達の希望でもあるんです。希望とあなたの幸せでいっぱいのその命を、万が一でも失うことは、嫌なんです」

「……うん」

「ですが、桐子の気持ちもわかるつもりです」

「私を思ってってことはわかる。でもね、そんなことしたくないの。そうやって生き残っても、この子に胸張って、ママは巫女だったと言えない。この子の母親になれない」

桐子ならそう考えるとわかっていた。止められないことも。無理にでも置いていかない限り一緒に来る、来てくれることを。

「大事なのは命です。どうあっても勝てないとわかったら、いよいよとなったら逃げます。チャンスを伺いもう一度戦いましょう」

これは方便。そうやって自分に言い聞かせないと、桐子を承諾できないから。桐子もわかっている。わかっていてすっきり笑顔を見せている。

「それに、わたし達四人が勝てなくても、姫巫女を打ち砕くことはできるかもしれませんし」

「どういうこと?四季」

「ナギちゃん達の狙いが最初から姫巫女ならば、わたし達と戦った姫巫女に追撃をしかけるはず。彼女達ならそうするはずなんです」

例えわたし達が死ぬことになっても、それを利用し姫巫女が倒れれば。そこを狙うはず、彼女達を“信頼”するなら。

「そこを叩く」

「ん?」

「もしそこでも姫巫女が勝った場合、こちらの最後の一枚、鈴鹿ちゃん達にこの国を救ってもらいます」

「連れて行くの?」

「待機してもらいます。アリスちゃんはもうゲートを使えますし、わたし達、それからナギちゃん達と連戦した姫巫女相手になら勝てるでしょう。前回のように記憶保護にかかる可能性も低いです」

「その判断は?」

「インカムの電波を霊力変換し鈴鹿ちゃん達に飛ばします。アリスちゃんにも覚えてもらったので送受信が可能です。明日、改めて話すつもりです。お二人も遅くまで引き止めてしまい申し訳ないです」

時間も時間で二人はそれぞれ帰って行った。リセとふたりリビングへ。

「リセ」

携帯を開き先ほど撮った姫巫女の動画を再生する。

「今日、一緒に寝ませんか?」

「一緒に?」

「明日で死ぬかも知れないなら最後の夜はあなたと過ごしたいです」

これは同性愛者だと思われてもおかしくない発言だ。が、わたしの本心だ。子供のころのように部屋を暗くしてどちらかが寝るまで話をしたいと思っている。

「いいよ。なんか夜更かししちゃいそうだね!」

少し楽しそうな声にわたしは再生を止めリセの顔を見る。笑って軽く首を動かした。

「それはダメですね。明日に体調をあわせないと」





「では皆さん、後を頼みます」

電波ジャックから一夜。テレビでは陰謀論から愉快犯までさまざまな形で姫巫女を取り上げていたが総じて現実味が無くそこまでの混乱はなかった。

「やっぱり、行くんですよね」

鈴鹿ちゃんが目線を落としつぶやく。河川敷に集まっていた。もう5分もすれば正午になる。予定の時間だ。

「それ以外、防ぐ手立てはありませんから。鈴鹿ちゃん」

顔を上げた鈴鹿ちゃんに鍵を渡す。

「必要なら使ってください。皆さんのご家族が避難できるくらいのスペースはあります」

「え、いやでも」

「車の鍵も付いています。運転、出来ます?」

「そりゃ、出来るけどさ」

「できるんかいな」

「鈴鹿だもの」

「車で話した通り、基本的には待機していてください。皆さんの判断にお任せしますがもう一息で姫巫女を倒せそうと思った場合こちらでインカムを飛ばします」

こんな役目を任せてしまってすみませんと頭を下げる。

「な、んなことないって」

「帰ってきます。帰ってきますが、わたし達にもしもがあったら皆さんには生きて、そして良かったら、わたし達のこと覚えていてください。戦ったわたし達と、ナギちゃん達のこと」

ゲートを作る。

「みんな、またね!」

「行ってくるね」

「帰ってきたらご飯作るから」

「それでは、また」

ゲートに入り、冥界へ。六秒ほどで視界が変わった。言葉無く歩く。

「待ち構えてると思ったんだけど」

「いないねー」

以前戦った大庭を過ぎ屋敷の扉を開ける。

「いらっしゃいまし」

ナナより一回り小さめな妖精がぱたたと飛んでいる。

「こちらへどうぞ、姫巫女様がお待ちでし」

廊下と何度か話をした時に通された部屋を過ぎまた廊下を進む。この先には来たことがなかった。

「この先にどうぞ」

扉を開く。中庭だろうか、ひらけた空間の奥に姫巫女が座っていた。

「よく来た巫女よ。待っていたぞ」

「姫巫女。少し話をしませんか?」

「ほうすぐには剣を抜かぬのか。良いぞ申せ。ちなみにの、またでんぱじゃっく、しておるからの。妾の子らの目に映るそれを鏡に向け発しておる。気張って喋れよ水華」

そう言うが姫巫女本人から霊力の放出は見られなかった。わたし達が来ると見越し周りを飛んでいる妖精がカメラ役へ割り当てたのだろう。

「あなたの正体について。この国が国として生まれる頃からあなたはこの国を観測していました。理由は亡くなった弟の生まれ変わりを待つというもの。この国の観測が可能で、人外の能力、巫女としての特殊能力を持ちえた存在」

「その話は以前のでんぱじゃっくでしたのう」

「この国は人外の生物、いうなれば“鬼”や“物の怪”といった類に襲われる国です。多くの人間はそれを認識できません。が、そういった言い伝えがあるのはそれが実在しているから。火の無い所に煙は立たないとは言ったもので、そういう怪物は確かに存在しているのです」

「鏡の先のにんげんは信じるかわからぬがの。妾の観測してきた大多数は認識できないものじゃった。お見せしんぜようよ、見えない鬼じゃ」

座ったまま手をかざす姫巫女。霊力が発生しわたし達が十年戦ってきた“敵”の一般兵が現れた。霊力がなくても見られる手ほどきがしてあるのだろう。

「こういうやつらじゃが、手を叩くものはおらぬて」

「認識できるそのごく一部こそ巫女。神社にいるこの国の人間がおおよそ理解する巫女ではなく霊力という鬼と戦うための力を得た存在。あなたはその資格を持つ人間に力を与え戦わせてきました」

「それも言うたのう」

「我々巫女を怪物と戦わせこの国を守りつつ、弟が生まれ変わるのを待ちました。しかし弟が生まれないと悟ったあなたはこの国のリセットをかけようと決めました。どうしてこのタイミングなんでしょうか」

「難解な言葉を使うのう水華。そうじゃな、数百年前からもしや弟の魂は消えたと薄々思うておった。長らく観測を続けていたがの、今の腑抜けた人間のいれものに弟の魂が入ることはないのじゃよ。じゃから作り直す。誇り高きいれものに戻すのじゃ」

姫巫女にはそう見えるらしい。今までずっと観測してきた姫巫女からしたら。サムライだった頃と比べたら言う通りなのかもしれないが。

「だから壊すと」

「じゃの」

「あなたの弟一人の為にこの国を壊すわけにはいきません」

「妾の生んだ国じゃ、壊すも妾の勝手であろう」

「人間が生きているんですよ。一億を超える人間が」

「妾の弟と比べるまでもないのう。それを止めるために来たのじゃろう?」

「ええ。例えあなたが誰であっても」

「ほう?」

「この国が国として形成する頃から観測する立場にあり、“巫女”だった存在。その能力を使い、かどうかはわかりませんがこの国を治めてきた。わたしの予想が正しければ、わたし達がこの国の歴史を勉強するときほぼ最初に覚える人物の名前なんですよ」

「幼き頃より学んだ名と言うのかの」

「あなたしか考えられないんですよ。卑弥呼」

わたし以外の三人が声を漏らす。

「ひめみことひみこ。ダジャレじみたものではありますがね。加えて卑弥呼にも弟がおり、政治の手助けをしていたとあります。本来の名前からほとんど変えなかったのも呪術を使い国を治めたという現実とはかけ離れた歴史を改竄しなかったのも、こちらが気付いても構わないと思ったからなのでしょう」

「で、でも、卑弥呼は実際の人物でしょう?200年くらいに死んだ、んじゃなかった?」

「ことにしてそれから本格的に姫巫女として弟の魂を待っていたのでしょう。人間の体を“いれもの”とするのは魂の輪廻、よみがえりを待ったから」

「でっでも、よみがえりなんて、実際……」

「“いれもの”を交換しつつ、ここまで生きてきたのでしょう。あの体も、いつのものかわかりません」

「くふ」

「恐らく今までの巫女の誰かのものでしょうね。霊力を体に保つため、巫女としての素質を持つ人間を選別しその体を奪う。そうやって生きてきたんです」

「そんな……」

そうだという確証はなかった。ただへらへらと笑っている卑弥呼。間違いなさそうだ。

「そうやってこの国を弄んで、今は破壊しようと考えている。そんなあなたを、黙ってみているわけにはいきません」

そこで銃を出し構える。わたしに呼応して三人も武器を出した。

「くく」

「これがわたしの話したかったことです」

ぱんぱんと手を叩く卑弥呼。顔は軽い笑みを作っている。

「な、るほど。なるほどなるほどさすが頭脳派じゃのう。水華」

「わかるように情報を漏らしておいてさすがはないですよ」

「謙遜なさるなよ水華。ここまで血脈が薄れた状態でそこまでの力が出せるとはの」

血脈と卑弥呼は言った。

「お察しの通り、いかにも、妾の正体は卑弥呼。お主らの祖先様じゃ」

そうはじめる卑弥呼。

「お主らはその魂の輪廻を繰り返し、妾に刃を向けるようになった。妾が体を奪うのが気に入らないらしい。ま、気持ちはわからんでもないがね。妾を滅そうと気張る妾の子孫が生まれたわけよ。最初のうちは血脈こゆい妾の子、孫と壮絶に戦った。体を奪い、時を重ねていくうち、妾が蒔いた種との争いを越えることができず、妾は椅子に座る日々」

当時は霊力を扱うことが一般的だったのだろうか。

「その頃より妾はこの国の霊力を独占する。この冥界を作り霊力を生み出す一定の土地をほぼ埋め込んだ。国に霊力が散在していれば鏡を見る大多数の人間にも怪物を見ることはできたじゃろうが。それはできなんだ」

卑弥呼自信が霊力を生み出しているとしたらさらに酷い状況になっただろうがそれはないと考えていた。しかしよかった。

「そんな妾に子、孫以来の強敵が現れる。お主、今の名前は水華と言ったのう。お主の魂、この国の礎となった巫女、推古天皇と言ったらお主らにはわかりやすいかね、千五百年ほど前のお主に追い込まれたよ」

魂。その意味をおおまかに理解した上で卑弥呼曰くわたしは推古天皇の魂だった。わたしが。あの。

「お主そのものの力よりも結託し綿密に練った作戦に、と言った方がいいかね。まあ結局、失敗に終わるわけじゃが。推古の体を奪い、偽者の体に魂を入れ、その後は頭脳派のお主なら知っておろう」

「四季ちゃんが……推古天皇……?」

「その後は我々が習ってきた歴史の通り、ということですか」

落ち着け。それが本当でもそうでなくても、心を揺さぶる手段だとしたら卑弥呼の思う壺だ。これから戦うというのによくない。

「それから三百年ほど経って、推古以降抵抗力を失い妾に気付くことも少なくなったやつが現れた。安倍清明。知っておろう?」

安倍清明。陰陽師で有名な歴史上の人物だが、巫女だったというのだろうか。

「男として今の人間は認識しているらしいが、あやつは女じゃ。強かったのう。妾が独自の点数付けしたお主らの魂の敵対序列では二位という好成績を収めておる。推古に並ぶ知能と推古以上の霊力。骨が折れたわ。まあ、清明の体は十二分に力が溢れたがの。男の体を用意し移した。それでもどういうからくりを使ったか、清明は抵抗を続けよった。よぼよぼの爺になるまで妾を睨んでおったわ」

その清明がこの中にいるのだろうか。リセか、はたまた。

「その後も何人か辿り着いたが、お主らとは関係ないのでの。気にかけることがらではないぞよ。さて、話は十分かのう?」

「ええ。あなたが話し合いでは止まらないということもわかりました」

「お主が折れてもよかったがのう」

「それは無理ですね」

「なら、そのまま沈めい!」

地面に発動霊圧を感じ跳躍する前に雷撃を食らった。

「がっ!」

「あああああああああああ!!!」

激痛が響く。わたし達四人まとめてその場に倒れこんだ。

「がっ……くっ!」

足から全身に痛みがくる。立ち上がれない。両手に持つ銃が消えた。霊力が保てない。

「お主らは強い。ここ二百年ほどで頭ひとつ抜けた巫女じゃ。じゃから、くふ、下拵えさせてもらったよ。思い煩いせっせと準備させてもらった。お主らが認識できない発動神楽を設置しておいたのじゃ。痛いかのう?もう動けぬかのう?」

「ちっ……みな……さん」

「無理をするのう水華。ただの一撃ではないぞ?霊力の維持が不安定になる。頭脳派よ、罠が無いと思ったか?」

思わないわけがない。まず疑う。

「水華、お主の固有素質は“空間支配”じゃったのう。空間内すべてを把握し支配権を得るというもの。空間認識と称していたようじゃが、中々どうして、自らが認識できない罠は防げなんだ」

言う通りだ。罠を調べ無しと答えを出し卑弥呼の動きのみに集中していた。わたしの能力を逆手に取られた。これは、まずい。

「ぐ……っちぃっ……。はあっ!!」

手を強く握る。不安定な霊力をかき集め左手に。銃を形成した。

「ほう。さすがじゃの。さすが推古の魂といったところか。まさかそこまで保つとは」

「わ、たしが……時間を稼ぎます。皆さん……治療を」

右手に力を入れ起き上がろうとする。照準が揺れる。トリガーを引いた。

「と、じゃが当たらぬ」

弾丸をつままれていた。にたりと笑顔を作った卑弥呼が立ち上がりこちらに近づいてくる。

「返すぞ」

指で弾かれた弾丸がわたしの体をとらえ吹き飛ばした。お腹に穴が開いたような。わたしの銃はまた消えてしまった。

「あ……が……っ」

「身体的な傷はそこまでではない。じゃがこれで詰み、じゃ」

卑弥呼が指を鳴らす。そしてわたしは“何もわからなくなった”。

「え」

「中々の抵抗力じゃ、即座にできぬとは。やはりお主らは強い」

何をされているのかかわらない。わたしは武器を出せず、しかし体の痛みは徐々に和らいでいた。力が入る。

「頓狂な顔をしておるの水華。他の三人と同じくただ痛んでいても良いのじゃぞ?」

「わたし、達に、何を……」

「お主らの記憶をちょいといじらせてもらっておるよ。記憶する分野において難易度が少々違っての。身体的に傷ついていても霊力を保てなくてもお主らの抵抗力で記憶をかえるのは骨が折れる。そこで、これまたお主らのため考えた手、簡易的ではあるが、その霊力を封じさせてもらった」

「封……じ」

「霊力の操り方に関する記憶を封じた。完全なものとするまで時間がかかるが、こうしてのんびり霊力を放ち待っていれば終わる。この国は鬼の住処になるじゃろうの」

待て。だとしたら。卑弥呼は。そうか、すべて繋がる。彼女達が、まずい。

「それまで、妾を睨むと良いぞ推古」

何か、何か手が。再生の欠片。いや卑弥呼の言葉のままならいくら霊力を得てもわたし達は操ることができない。戦えない。飽和するほどの霊力を体内に保てば。いや、わたし達の体が持たない可能性がある。下準備で負けていた。最初から話をしなければ。いや違う。最初から卑弥呼は発動が可能だった。

「そうじゃその顔。心地よい心地よい」

「し……四季……」

ふんばれわたし。

「わたし達を、封じようとするならば、あなたの霊力は、低下しているはず」

こぶしをにぎりたちあがる。

「そのうちに、倒すだけです!」

ポケットからバタフライナイフを取り出しきりつける。かわされた。

「生身のお主では話になるまい」

「睨みながらこの国が壊れるのを待つなんてできません」

「そうか」

「はっ!」

わたしの攻撃と時間差で桐子が殴りにかかる。楯とリセも立ち上がっていた。

「それでこそ巫女。震えるぞ巫女よ」

四人がかりで素手攻撃を繰り広げる。相手の霊力が完全にゼロなら可能性もあったが卑弥呼の余裕そうな表情からそうではないと結論付ける。それでも戦うしかなかった。

「じゃが、悪あがきじゃの」

隙を見せている今何とかするしかない。

「赤子同然じゃ」

卑弥呼が指を伸ばすと光が発生、直進と屈折を繰り返しわたし達の体を貫いた。霊力によるものだと判断した頃には激痛に襲われていた。四人とも倒れこむ。

「普通にお主らと戦うのも骨が折れるでな、今後の準備もある、楽させてもらったぞ」

卑弥呼を見上げる。ひらひら手を振りながら椅子の方へ歩いていった。何が何でも回復しないと。やはり、飲むしか

『らあああああああああああああああああああああああ!!!!!!』

見上げる卑弥呼のはるか上空から落ちてきた“一人目”は手に持つ斧で卑弥呼の右腕を切り落とした。

『追撃ですわ!!!!』

続いて落下した“二人目”による日本刀斬撃が卑弥呼がかざした左手を切りつける。いつのまにか“元に戻っていた”右手から光線を出し日本刀を弾く。

『……次っ』

椅子に近い場所に落下した“三人目”の指示で精霊が卑弥呼の体を貫いた。

『裁縫の時間だお姫様』

わたし達の前に降りた“四人目”が両手を突き出すと指先から伸びた鋼線が卑弥呼の全身を突き刺した。

『オネンネの時間かいビッチ?いい餌っぷりだったぜ』

巫女服に身を包んだ四人は、“敵”か“味方”か。

「ナギ……ちゃん」

『最高の横殴、とお前ら下がれ!』

近づいていた二人が下がる。単純な霊力波が卑弥呼を中心に発生したが誰も攻撃は受けなかった。牽制しているのか四人がわたし達の前に、卑弥呼が椅子側に位置取る。ナギちゃん、チカちゃん、キョウちゃん、サラちゃん。

「よう姫巫女。もげた腕と開いた腹の調子はどうだい?」

四人は大なり小なり笑っていた。

「この通り爽快じゃよ」

傷ひとつついていない卑弥呼。

「ナギちゃんき、聞いてください」

「それとも卑弥呼と呼んだいいかい?なァ、すべての黒幕よう」

「確か、伊左治というたか?その苗字は捨てたか捨てておらぬか。水華とその話はしたのじゃよ伊左治。よく辿り着いたのう」

「げマジかよ」

「ドヤ顔ナギさんがやらかしましたわ!」

「残念だなーナギ、一歩届かなかったわけだ」

「……かわいそう」

「ダリーこと言ってんな!」

「何しに来た伊左治」

「ちょいと死んでもらいたい奴がいてよ。“その体に慣れてねェ”んだろ?」

「それが鬼側に付いたお主らの目的なのじゃな」

「ハッ、ダレるんだよテメーと喋ると。だろ水華?」

「ナギ、ちゃん。話を!」

このタイミングで来るとは思わなかった。しかしこれは駄目だ。卑弥呼の想定だとしたら。

「バトンタッチだ。何よりな、こっちはもう一分だって我慢なられねェんだよ!」




第二十話 I couldn't take it, couldn't stand another minute. おわり

     to be continued……


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