第二話
命を助けてもらった翌日になってもその話題は昼休みまで続いていた。
「強くて格好良くて、金持ちでってか」
チカちゃんは昨日出していただいたお金のおつりを入れた封筒を持ち上げた。さすがにいただくわけにもいかず、今日会うときに返すことに決定。
「チカさん、子供の頃の貴乃花みたいですわよ」
「なにそれ?わかんないからやってみろよ、キョウ」
「なっ!」
「あれ?できねー?悪い悪い」
「んなわけないじゃないですの!完の璧な貴乃花をアクトしてみせますわ見てらっしゃいチカさん!」
乗せられて物まねにいそしむキョウちゃんはややウケだった。
「ナギ……今日、どうするの……?」
袖を引っ張ってきたサラちゃん。わたし達よりも心配量は多めのはずだ。
「改めてお礼も言わなきゃだし、行こう。悪い人じゃなさそうだし、大丈夫だよ」
「いい人そうだと思うよ!協力してくれるって言ってたし」
「ですが協力ってなんですの?連携プレーで圧倒、テレビでも取り上げられる美少女戦士に!先人有利なりですわ」
溌剌なますみちゃんにキョウちゃんが突っ込んでいた。
「でもま、あたしらにしかできないって言ってんだし、やるしかねーんじゃねえの?」
「具体的にどう協力してくれるとか、そういうことも今日教えてくれるんじゃないかな」
「具体的に、ね。だったら最初から出て来いって話、ま、最初から普通に戦えたわけだし、いらなかったか」
「ですわね。とてもとてもこちらに敵わない雑の魚にしか見えませんでしたしね」
「……最近は、たまにてこずるけどね」
敵が強くなっているのかわたし達が弱くなっているのか、苦戦することも出てきた。最初はうまく行っていた気がするのに、なぜだろう。
「でもよー、あの人らが前に倒したのに復活したってことは、倒しきってなかったってことだろ?大丈夫なのかよそんな先輩で」
「確か『別の勢力が』ってナナ言ってなかった?」
そのナナは屋上で日向ぼっことしゃれ込んでいる。わたし達にしか見えないので大事になる心配は無い。
「言ってましたわそうですわ相変わらずですわねチカさん」
「お前覚えてねえだろ」
「覚えていますことよ、私記憶力もいいんですのよ」
「一昨日の給食は?」
「えー……なんのことです?」
仲がいいのか悪いのか。
「……キョウ、鶏肉とタマゴサラダ……」
「鶏肉とタマゴサラダですわ!」
放課後、先輩に電話を済ませとりあえず喫茶店にでも行きましょうかの指示に従い約束した場所に向かう。
「すみませんお待たせしました!」
喫茶店前で待ってくれている先輩に申し訳ない気持ちから小走りしたが続けてくれたのはますみちゃんとサラちゃん、わたしと頭に乗るナナだけだった。失礼二人組は優雅に闊歩なさっている。
「すみません」
二人が追いついたところでもう一度頭を下げる。
「いえいえ。ここ個室はありませんが、物語の話題か何と思われるでしょう。入りましょうか」
からからとドアが鳴る。昼下がりの客でにぎわっていた店内の奥に通される。もっと静かなところがあった気もしたが先輩のチョイスだし間違っていないのだろう。
「昨日はありがとうございました。食事まで出していただいて。あの、これ」
封筒を渡す。
「ああ、別によかったんですよ。皆さんで分けてもらって」
「ほら、良いって言ってんじゃんかよ」
「ちょっと、チカちゃん!駄目に決まってるでしょ」
「もらえるもんはもらった方がいいですわよナギさん」
「あははっ。チカにゃん怒られてるー!」
はあ、どうしてうちのチームはこう失礼が多いんだろう。
「そういうわけにはいかないので。今日もよろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくおねがいしますね」
「とりあえず注文する?」
リセ先輩からメニュー表を受け取る。きっとこれも出してくれるんだろう。出す素振りはするつもりだけどどれくらいの感じでやればいいのかわからない。相談したいができる人がいなくて困る。
「ナギさん、どれにしますの?」
「あ、ああ、うん。じゃ、アイスコーヒーで」
「大人ぶってるんですの?」
「いや、おいしいじゃん」
「ぐぬぬ」
「ナギ……私……」
「?好きなの飲むといいよ」
「……そうする」
サラちゃんはアイスココアを指差しこちらを上目遣いで見ていた。くそう可愛いな。
「あ、大丈夫です。こっちは」
「じゃあ店員さん呼ぶね!すみませーん!」
ドリンクが運ばれてくる。
「では、何から話しましょうか。まず、皆さんはどうやって巫女になった、というよりナナと出会ったんですか?皆さん全員の出会いも込みで」
「出会った」
「どういう経緯で、ってことですね」
ナナとは一月前のこと、インパクトが強すぎたので鮮明に覚えている。
「わたし達の出会い。大げさなことなんてのはなく、普通に中学でですね。一年の頃からみんな同じクラスで、気付いたら仲良くなってたみたいな」
本当に気付いたらという感じだ。毎日一緒にいるのは、まあ、今は仕方がないことだとしても。
「ナナとは、普通にみんなで学校から帰っていたらふわふわと飛んでいるナナに話しかけられて。ビックリしたんですけど話を聞いていてみんなが乗り気になってしまって。君たちワタシが見えるよねとか言われたのかな。敵がもうすぐ現れて、倒せるのはみんなしかいないって。で、乗り気。使えるようになって覚えて倒して、そこからそうやって、って感じですね。えと、今ので大丈夫ですか?」
四季さんは顎に手をあてすぐ戻した。
「一度に、全員ですか?」
「は、はい。……あれ、いけなかったですか?」
「いいえ、そういうわけでは。ナナ?」
「偶然っていうか、ラッキーだったんだよね。まさかでしょ?」
ナナがひょこと四季さんの髪から出てきて返事をした。なんだか愛らしかった。悪いことしてなければいいけど。っていうかわたし達はナナに言われたまましただけで。
「ええ。皆さん素質スキル持ちなんですよね?」
「勿論。だから誘ったの」
「すみませーんわっかんないんですけどー」
チカちゃんやめて。
「いきなりすぎましたね。まず、巫女になるためには素質が必要でして。皆さんは全員条件を満たしているんです。中々珍しい存在なんですよ、本当は。それが五人全員だということは、すごいなと」
「へー」
今の言い方から察するに、先輩達は一度に全員というわけではなさそうで、その話を聞いてみたかった。巫女になれるイコールナナが見える人間が珍しいということに関してはナナがふらふら出歩いてもパニックにならないことからそうなんだろうという予想はついていた。
「素質スキルに関しては実際に見せていただきたいというのもありますから、さすがにここではってことで、あとで家に来ていただいてもいいですか?」
「家。先輩のですか?」
「わたしのといいますか、わたしとリセのね。今、マンションの一室でふたり住んでいるんです」
金持ちだ。ブルジョアだ。
「そこならスペースもありますし他の人に見られる心配もありません。皆さんが不安でないというのなら、よかったら」
サラちゃんが袖を引っ張ってきた。
「いきなりで、申し訳なくないですか?」
「こちらは大丈夫ですよ」
「ま、いいんじゃねえの?先輩方がそう言ってんだから」
「いや、でも。……大丈夫なんですか?」
「ええ。最初から家にお呼びするという案もあったんですがさすがに初対面でそれはよろしくないということで。したら、もう少ししたら家に向かいましょうか」
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ドアを開け、どう呼称するべきだろう、巫女、現役、後輩組、が妥当だろうか、を招き入れる。
「下の階のリビングスペースに行きましょうか。こちらです」
後輩組はわあとかはあとかそれぞれの感想を漏らしている。およそ大学生が住むような大きさではないことはわたしも知っている。階段を降りながら家賃いくらですのとかいう声が聞こえた。
「こちらです。適当に座ってください」
三人がけのソファーに凪ちゃんすみちゃん沙良ちゃんが、一人用の左右に海悠ちゃん伊織ちゃんが座る。
「ナナ」
髪を触るとわたしの頭でまったりしていたナナが出てくる。
「素質チェックは行っていますよね?」
「うん。目覚めてもらった次の日に」
「素質チェック、ええと」
凪ちゃんが手を上げて質問する。
「巫女になった後、ナナに髪の毛を抜かれたことを覚えています?」
「あー、はい」
名称を伝えていなかっただけのようだ。
「一度説明されているかもしれませんが、巫女としてある程度実績を積んだ今、改めてご説明させていただきます。巫女は誰にでもられるものではなく素質が必要、というのは既にお話させていただいたものですが、素質というのはなれるかという意味とは別に“巫女としての特殊能力”という意味でもあります。それは固有であり、能力も人それぞれですね」
わたしは喉を鳴らす。
「自分の素質に合った神楽に関しては消費霊力も少なく水準も高いです。また、人の素質スキルや特殊な霊力変換も使用は可能ですが消費霊力も高く能力の質も見劣りしています。それを考慮した自分の戦闘スタイルの確立というものが重要になってくるんですが」
中学生相手に授業のようだったが全員が聞いてくれていた。なるほどそっぽ向かれていたら先生はいい気分しないかもしれない。
「今のままでもつえーんだけど」
「より強くなるためです。さて、まずはどなたからにしますか?ナナ、こちらに」
ふらふら飛んでいたナナがわたしの指に乗る。
「キョウ、品定めされてこいよ」
「真打は遅れてと決まっておりますのよ」
「……もう、来てる……」
「ダッセー、お前サラにつっこまれてんじゃん」
「あははー!」
「ええと、じゃ、わたしから」
凪ちゃんが目線を左右に手を上げる。収集をつけようとしたようだ。
「髪の毛を抜き、ナナに持たせます。ナナに素質解析を行っていただき、視覚的にとららえられるようにしてもらいます」
素質スキルが表示される。親切設計のようで当事者に合わせた言語が選択、この場合日本語で。巫女というくらいなので外国にもこのシステムがあるのかどうかはわからないが。
「“追尾”、ですか」
「あ、はい」
「どの程度素質について、いえ、その前に『一般神楽』と『素質神楽』に感してはもう説明は受けていますか」
「は、はい。えと、先ほど説明してもらった特殊能力が『素質神楽』、わたし達巫女全員に基礎として備わっているものが『一般神楽』ですよね」
あらそうでしたの伊織ちゃんの声に凪ちゃんのため息が続く。
「一般神楽のウ内訳詳細も聞いていますか?」
「えっと、霊力を体に纏う、体の霊力を霊力波として飛ばす、武器を作る、ですよね」
指を折り曲げて凪ちゃんは答えた。
「四季、ワタシしっかり説明したよ」
「ありがとうございますナナ。一般神楽に関しては基本的には消費霊力の個人差はありません、鍛える事で強くはなりますが。武器生成のみ少し勝手が違います」
「勝手?」
「生成する武器によって消費霊力が違ってくるんですよ。例えば大型のものは小型のもの比べ多くなりますしつくりがシンプルなものの方が機械的なものより消費霊力は少ないですが、それは今は考えないでおきましょう。慣れや構造を理解することが節約に繋がりますね」
「へー」
「私は勿論知っていましてよ」
「さらに武器に能力をつけ加えることも可能ですがそれは素質神楽も関わってますので、また別の話しになりますね」
「能力ってーと?炎が出るとか?」
「そういったことですね」
手を上げる伊織ちゃん。
「では高熱をまといし硬剣でブッた切ればケーオーではなくて?」
「高水準な能力の付与は大きく霊力を削ってしまいます。2、3体を切ったところでへとへとになってしまうかもしれませんね」
「付与は不要ということですわね!付与なだけにですわ」
凪ちゃんのやや大きなため息が聞こえた。
「さて、それを踏まえた上で凪ちゃん、あなたの素質を伺ってよろしいですか?」
「ええと、自分なりに試してみたんですが、自分で定めた目標にロックオンをかけ、霊力波を放ち、それが逃げても避けても当たるような能力、みたいで。これくらいです、かね」
徐々に声色が弱くなっていた。
「追尾というよりホーミングといった方が近そうですね。細かい条件についてはどうですか?」
「細かい、えーと、すみません。そこまでは」
「いえ、大丈夫ですよ。また調べてみましょう。次はどなたにしましょう」
「んじゃ、あたし」
海悠ちゃんが立ち上がる、髪の毛は既に抜いていた。表示は“拡散”。
「霊力をまんまぶっぱなす攻撃、手から出せんだけどな、それがナギのと比べると広範囲つーか、こうなんだよな」
両手で花のような形を作る。
「んで、それだけだとすっげー疲れるっつーか、雑魚に対して五回分くらい殺してんだよな。勿体ねーからってことで武器を生み出したんだけど、ここで出さない方がいい?」
「あまりにも大型でなければ、大丈夫ですよ」
「んじゃ、行くぜ」
海悠ちゃんは指を鳴らし武器を出す。槍と斧が合体したような形、西洋ものだが、どこで知ったのだろう。
「ハルバードですか」
「おっ知ってる?武器どういうのがいいか調べてたらこれかっけーってなってさ。これ使ってんの」
軽く演舞してみせる海悠ちゃん。我流さは見て取れたが器用に扱っていた。
「お次は私でしてよ」
海悠ちゃんの途中から我慢できなかったようで髪を抜いていた伊織ちゃんが立ち上がる。
「お願いしますわ」
「はい」
“霊力変換:重力”とあった。
「華麗な重力神楽ですわ。対象に重力付加をかけ動きを制限したあと」
指を鳴らし武器を出す。日本刀を鞘から抜く伊織ちゃん。海悠ちゃんといいしっかりと生成を形にしていた。
「ばっさばっさと切り裂く。勧善懲悪の簡単雑魚ぶっ殺しシステムですわ」
「勧善懲悪の使い方微妙だけど」
凪ちゃんが軽くつぶやき、沙良ちゃんが頷き、リセがくすと笑っていた。あとの子とうちの楯は意味をしらないようだ。
「重力の範囲と質は?」
「広範囲の良質でしてよ」
「違う違う、キョウちゃん、具体的な数値だよ」
「……以上ですわ」
それに関してはわからなかったようだ。
「はいはーい!次僕ー。よろしくね、先輩、ナナ」
“完全防御結界”が表示された。
「これは」
「えっとね、僕攻撃とかすっごい苦手で、っていうかパンチとかしたことあるんだけど敵さんピンピンしてて、霊力の攻撃とかも全然利かなくて、でもね、バリア作るとすっごいの!誰の攻撃も通さないよ!」
「完全、ですか。ナナ?」
「使い方は防御のバリアとしてしかしかないけどね。でも“完全”って表示されているし」
「それは……」
「攻撃にゃ使えねーよな。確かにどこよりも安心な場所じゃあっけどさ」
「アタッカーではないですわよね」
後輩組ではそこまで評価が高いわけではなさうだったがわたし、わたしとリセと楯、それから多分凪ちゃんは別のことを考えていた。
「だよねー、えへへ、ごめんね、みんな」
「いえ。完全、というのは、正直恐ろしいです」
「恐ろしい?」
「いえ、また後で。さて」
何人も侵すことができない神の領域。攻撃がなくても、一人では戦えなくとも。わたし達の時代にはいなかった超特化型。一般神楽もかなり素質神楽よりの形を成しているのだろうか。知ってか知らずかすみちゃんは嬉しそうな顔をしていた。
「私……」
控えめに沙良ちゃんが立ち上がり、髪を渡してきた。
「すみません、サラちゃんはちょっと口下手なんで、わたしが説明割っちゃうかもです」
「大丈夫ですよ。と、“召喚”。……召喚?」
「……うん」
「ナナみたいな妖精、喋んないんですが、を、召喚してその妖精が戦う感じです。数は3」
「出す……」
沙良ちゃんが目をつぶり開くとその周りに三体の妖精が出現した。大きさはナナよりも一回り小ぶり。
「みんなが……戦ってくれる……」
「沙良ちゃんの自由意志で動くシステムですか?それともオート操作に近いものですか?」
「……みんなが動いて……戦う……。お願いして動いてもらう……ことも……できる……」
「召喚ということはつまり、やはり、生きて……」
「ちなみにワタシのような存在ともまた違うよ。他世界生物との契約使役とも違う。おそらく彼女自身が生み出した精霊」
「その、特別強いってわけではないんですけどね。全員ばらばらだから、特殊なのかどうかもわかんなくて」
「……なるほど」
「……もう……いい……?」
「はい大丈夫です。ありがとうございます」
沙良ちゃんが椅子に座る。
「えっと、先輩たちの能力も、聞いでいいですか?参考にしたいって言うか、どんな能力なのかなって」
「はい。それも込みで、それではわたし達の話をしましょうか。少し長くなってしまいますけど、いいですか」
「お願いします」
「みんな、ジュース飲む?おかしとか取ってくるね!」
楯が階段を上っていく。
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そうですね、どこからお話しましょうか。そもそも、わたし達は皆さんと違って全員同時に巫女になったわけじゃないんですよ。皆さんと同じ中学二年生の春、わたしとリセの学校帰りにナナが話しかけてきました。
「助けて」
と。わたし達も驚きましたが断ることもできず巫女になりました。簡単に言いますけど、別に覚醒の瞬間どうにかなるとかもないですしね。服装が変わるわけでもないですし。
「あっちに敵がいるの!神楽を使って、あいつらを倒して」
最初は状況に戸惑いましたが言われるがままナナに付いていき、敵と初遭遇します。皆さんと出会ったときいたあのタイプですね。ああ、ありがとう、楯。数は5。身体能力も上がっているからとのことで一発パンチをしてみましたが、そこまで効いている様子はありませんでした。
「こういう時って、急に目覚めてすっごい強くなって敵を倒すみたいな感じなんじゃないの!」
おとなしめな性格のリセが叫びます。わたしもそう思っていましたがこういう現実もあるみたいです。
「効いていないわけじゃないよ!神楽、霊力も使って、戦ってみて!自分の霊力を消費して、魔法を出すイメージ!」
目をつぶりゆっくりイメージする暇も余裕もなく、攻撃を避けて避けて掌底を叩き込み、ぐらつく敵に向けそのまま霊力波を撃ちます。人生初のいわゆる魔法はゼロ距離でしたので出来は確認できませんでした。その敵はそのまま倒れ残り四体。
「四季!」
わたしよりも上手に霊力、というか既に神楽を出しているリセは息を乱しながら二体を足止めしました。
「リセ、下がって!後ろからそれを続けて!」
指示を出し襲ってくる残りの二体の攻撃を避けつつ掌底からの霊力波で倒します。一体を倒したリセがへたりこんでしまいましたが残りの一体も弱らせてくれたおかげで楽に倒すことができました。
「いっ、今のがっ、はあ、はあ、敵?」
くたくたの状態でナナに話しかけます。
「うん。ありがとう」
「聞いていいですか?はっ、はっ」
「うん」
「これで終わりじゃないですよね?」
「これからも戦ってもらいたいんだけど」
「これ、このままだと、わたし達そのうち負けてしまいそうなんですけど」
「……ごめん」
ナナは謝りました。わたし達にはその理由がわからず、嫌な想像をしていました。
「どういうことです?」
「本当はね、もっと強いはずなんだ。巫女って」
「もっと強いはず?」
君たちには犠牲になってもらうよとかそんな言葉を待ち構えていたわたしだったので単純に聞き返していました。ごめんなさいね、ナナ。
「君たち巫女は
「とりあえず、場所を移しましょうか。ここでナナとお話していたら目立ちます」
「大丈夫なんだけど、そうだね、そうしようか」
ナナを連れわたしの家に向かいます。ああ、ここではなく両親と住んでいたアパートですね。
「ワタシの姿は巫女になれる人にしか見えないから、大丈夫」
ふわふわと飛んでいて、なんだかかわいらしかったです。
「それで、もっと強いはず、というのは?」
「どこから説明したらいいかな、まずワタシがこっちの世界に来たのは、この世界があぶないことになっているから」
危ないこと?とリセが飛ぶナナを目で追います。
「元々ワタシはこの世界の生物じゃなくて、別の世界から来たの。その世界はこの世界のバランスを保つ役割があって、過去にも何度かこういうことはあったんだけど、この世界に直接来て人間からエネルギーを得て悪いことしようっていうのを阻止するために巫女になって戦ってもらってたんだ」
「それで?」
「今まではそうやって撃退してきたけど、今回は違う。今回はまずワタシたちの世界を襲ってきた。勿論完全にやられるほどやわじゃない。あっちの世界にも行動制限をかけて均衡状態にしたの。それでも敵はある程度は動ける。対抗しなくちゃいけない。ってことで、君たちにお願いしたの」
ふわりとリセの頭に乗るナナ。
「巫女はワタシたちの世界から力を得て霊力を使うんだけど、その世界が力を失いつつあるから、君たちも本来持っているべき霊力よりぐんと弱くなっているの。勿論敵も弱くなっているけど、本来だったら敵とは均衡なんかじゃなくこっちがかなり有利になるくらいだから、戦うのは大変だと思う」
それでもやってくれるなら、とナナは付け足します。
「わたし達の他に今いる巫女は?」
「いない」
「他に巫女の候補は?」
「今のところはいない」
「わかりました、やりましょう」
「し、四季……?」
リセが戸惑う気持ちもわかりました。
「あれに襲われると、まずいことになるんですよね?」
「そうだね。敵は人間から力を奪って蓄えることが目的なんだけど、それをされた人間は自我を失い犯罪に走ったり人が変わったようになってしまうの」
「敵が襲うのは無差別ですか?」
「選んだりはしなくて、ただそこにいる人を襲うよ」
「そうしたら、わたし達の大切な人が、大事な家族が襲われてしまいますよ、リセ」
「それは、そうだけど……」
「抵抗できるのにしなかったら、何かあったとき、ひどく後悔してしまいます」
「……わかったよ」
「巻き込んでしまって、すみません」
「珍しいね、四季がやる気になるなんて」
「自分でもそう思います。さて、ええと」
「ワタシ?ワタシはナナ。よろしく」
わたしとリセは自分の名前を伝えました。
「ナナ、いくつか質問したいことがあります」
というのがわたし達とナナの出会い。この後ナナからある程度話を聞いて、この日からわたし達の戦いが始まりました。わたしは自分の身に起こった非現実的な出来事に多少酔いしれていたのかも知れませんが、ナナの話から楽な戦いではないということも察し、不安を感じていました。
少し、休憩しましょうか。
第二話 花の散らぬうちに おわり
to be continued……




