第十五話
夢から覚めていた。
夢にも思えた感覚。
だがこれは夢ではない。
わたしは心底気分が良かった。
笑みがこぼれる。
笑みがこぼれる。
わたしの笑顔。
仲間の笑顔。
そりゃ、笑顔にもなる。
五年も待った。
会いたかった“敵”にやっと会えたんだからなァアアアア!!!
「はー、会いたかったぜェ?クソ巫女さんよ」
煙草をふかし目の前で構える三人の巫女を見る。懐かしい顔だ。ん、三人?
「つーか、数足りなくね?」
わたしの左でへらへら笑う仲間が声を上げる。
「あらあらですわね。ご遅刻ご欠席ですか?折角のパーリーですのに」
右端の仲間が上品こきながら高笑いをする。
「……三人」
右隣の仲間が控えめに笑みを作る。
「まさか、ハッハ!死んだか?オイオイやめてくれよォ、勝手に殺されてんじゃねェぞ、拍子抜けだぜ」
「きさっ」
「楯!いけません」
「……ハッ」
頭をかく。対面にいる巫女は左から小柄であどけない顔を残した巫女、普段なら物腰が柔らかそうな青黒い髪を腰まで伸ばした巫女、緑がかった髪の整った顔の。顔の……。
「眼帯?」
右端の巫女は右目に眼帯をつけていた。
「おいナギ、お前カブってんぞ?」
わたしが左目につけた眼帯に似たような形のもの。おいマジかよ。
「おそろい……?」
「バッ!?」
「あらナギさん恥ずかしいですわね。張り切ってオシャレしてきたら同じ服の人がいたときくらい恥ずかしいですわ」
「プッハハ!そのままじゃねーか!まー実際その通りなんだけどな!爆笑モンだ」
「……おそろい」
「やっやめろって!ウゼーこと言ってんなお前ら」
わたしは頭を抱えていた。どうしてこんなイージーアクシデントで恥かかにゃいけねェんだ。
「ドッキリ?なー、ドッキリ?」
「そろそろキレるぞ」
「お茶目が過ぎますわよ。ほらあちら側置いてけぼりですわ」
ちっ、雰囲気が壊れちまった。
「忘れろや巫女共。調子はどうだい?」
「……」
返事が無い。なるほど、探っているわけだ、わたし達を。
「安心しなよ、来てんのはわたしら四人だけさ。“空間認識”してももう現れないぜェ?」
驚いた顔を一瞬だけみせる眼帯の巫女。怪我か何かか。
「なんでって顔してんなァ?いや、テメーは敬語か、なんですかって、てか?」
返事はない。
「あれこれ頭働かせてるとこ悪ィんだけどさ、オハナシしてくんねェかな?会話はキャッチボールって言うぜ?」
「あらナギさんがまともなこと言ってますわ」
「お前より軸あっぜキョウ」
「ハッハッハ、そりゃそうだ!」
一言目を出し倦ねる右端の眼帯巫女を他所に残る二人の巫女は焦る表情を隠せないでいた。いーい表情だ。
「あなた達は、鬼、ですか?」
「フー。鬼、鬼ねえ。鬼の定義って何だ?」
「……角?」
「そーうだ角か。角、生えてねェなァわたしら。じゃ、鬼とは違うのか?」
「鬼では……」
喉を鳴らす眼帯巫女。
「そこ重要なのかい?わたしらが鬼なのかそうじゃないのかって」
「鬼でなければ」
「何だろうなァ?」
「……まさか」
はっと目を見開く眼帯巫女。未だ武器はこちらに向けてこない。
「そのまさかかもしんねェな。思慮深いテメーの考えだもんな。洗濯機くらいマワってんだろ?」
「洗濯機のスピードて遅くねーか?」
「おう、ご失礼だったなァ」
対当し数分、眼帯巫女が“答え”に辿り着いている可能性もあった。
「自己紹介しとこうか。チカ」
「あたしからか。チカだ、楽しく殺し合おうぜ」
ハルバートを持ち歯を見せるチカ。
「お次は私ですわ。キョウでよろしくてよ」
アホポーズをかますキョウ。
「……サラ」
ギリギリ聞こえる程度につぶやくサラ。
「ナギだ。死ぬまで覚えとけクソ巫女共」
中指を立てるが中々挑発に乗らない巫女。
「あー、お前らの自己紹介はいらねェぜ?」
「……どういうことでしょうか」
「必要がねェっつってんだ。水華四季、利府瀬戸、桃桜楯」
今一度目を見開いた眼帯巫女、水華四季。左端の桃桜楯と中央の利府瀬戸は最初から驚きなさっている。
「今色々と頭をめぐらせてらっしゃるみたいだけどよう。オイこっちきっちり見ろよ」
睨みつけてくる水華。
「ようやくガン垂れてくれたなァ。嬉しいぜビッチ」
「あなた達は……一体……」
「何だっていいだろ。今わたし達はテメーらの前にいて、可愛い後輩をファックした。理由なんぞそれだけで十分だろう?味方に見えるか?敵に見えるか?かかって来いよ」
その瞬間全員が構えを取る。
「ブッ殺す!」
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飛んできた霊力波を撃ち落す。
「皆さん!無事ですか!」
インカムからは先ほどから苦しそうな息が聞こえているだけだ。すぐに助ければ大丈夫だろう。
「こっちカマってくれよ?なァ水華」
集中しろ。集中しろ。頭を使いながら勝てる相手じゃないことは肌で感じる霊力からわかっていた。
「リ
「行かせねェよ」
ナギと名乗った“相手”が武器を飛ばしてきた。
「鋼線?」
「おうとも」
ナギがつけた手袋の指先から伸びる十本の鋼線がわたしを襲う。後退しながら撃ち落した。
「お仲間が心配かい?わたしを倒してから行くんだな。突破してみ、ちっ」
ようやく二発当てるがそこまで効いている様子はなく、分断された。リセと楯はわたし達から離れたところで三人を相手にしている。
「だーかーら!」
鋼線。撃ち込むと五つ股に分かれる。固めていたのか。それも撃つとナギは左腕を動かし自分の方に引き寄せた。
「シンキングタイムでも周り気にしてる場合でもねェだろ?コロコロしようぜマドモァゼル?」
三発ほど撃つが軽く指を動かしただけでわたしの弾丸はナギの前で落ちた。
「あなた達の目的は」
「んまい煙草を吸いてェな!」
ナギが飛び出す。指を存分に動かし四方八方から飛んでくる鋼線を撃ち落す。防戦よりだ。リセと楯も防戦気味だがくらいついているようだ。はっきりと認識できない。空間認識。
「何考えてんだい?」
「あなたの発言について」
「そうかい。台詞考えといて正解だったぜ」
鋼線に囲まれる。回避と銃撃で捌くがすぐに次がくる。あちらのフォローもしたいが。このナギがリーダーでエースなのだろうか、わたしが止まっている。
『リセちゃん!』
『まかせて!!』
「警戒してんのかい?それとも、いやまさかなァ」
「何が」
「お前、弱くなってねェか?もしかしなくても」
自分の眉があがるのを感じた。
「こいつァお笑いだ!サボってたのかい?いやそれはねェよな。まぁ、なんにせよ!」
後方から飛んでくる。弾丸一発で落ちなかった。
「ぐっ!」
右腕に突き刺さった鋼線に一発撃ち込み抜き取る。攻撃防御と高い霊力を込めているようだ。飛び道具形式だが手袋から飛ばしていて体とも繋がっているため霊力も込めやすい。理にかなった武器だ。それよりも。
「カコんでんぜ?避けてみな」
空間認識の範囲を狭める。ナギの言うとおり増援は来ないようだ。これで霊力をまわせるが。
「なるほど、さっきは全力じゃなかったと。それでも!」
そう。どこから鋼線が来るかは認識できる。できるからこそわかる。防ぎきれない。攻撃を受けてしまう。
「まさかまさかだぜ?腕くらいくれてやるつもりで来たんだがなァ」
捌きつつの攻撃。鈴鹿ちゃん達がいれば恐らく勝てた。鈴鹿ちゃんアリスちゃんあたりは二人がかりで太刀打ちできる相手だろうし、七対四、単純に数で有利だ。
「おらよ!」
「くっ」
空間内に閉じ込めての奇襲もそれを見越してのものだろう。そこから考えられること。
「どうしたよどうしたよ!テメーはもっと“最強”カマしてるはずだろうよ!?いい声で鳴けよビッチ」
前に出る。ナギは呼応して下がり接近戦を避けてくる。一定距離で鋼線を攻防に分けて使う。わたしが立てている仮説の範囲にある。
「オラオラ!」
避けながらナギに寄っていく。笑いながら戦っているナギは気付いているかいないか。体制反転、右腕を犠牲にナギに突っ込み蹴り飛ばす。きっちり入った。
「ちっクソ!」
「はっ!!」
二発撃ち込む。さらに飛ぶナギに向け跳躍。まずい。
「ハンッ!」
一歩前の位置に着地、左の銃を向ける。ハンドガンを向けられていた。
「動くなよ巫女。可愛い後輩ちゃんが16等分されちまうぜ?」
右手に銃左手は鋼線を鈴鹿ちゃんに伸ばしている。地面に突き刺した二本が首を囲んでいる。わたしとナギの動きが止まる。
「お前らも一時中断だ。おい」
「リセ、楯、止まってください」
『え?あ、うん』
全員の動きが止まり、わたし達の前に集まってくる。銃は向け合ったまま。右腕から垂れ流れる血。
「良くできました、ってか?」
「その子を離してください」
「銃向けながら言う台詞じゃねェな」
「鋼線もわたしに向けてください」
「身をていしてかい?泣ける話だ」
どうするのがいい。鈴鹿ちゃんを助ける、この状況を回避する答えは。
「あなた達の目的は何ですか?ナギ」
「ナギ。ナギだとよ。呼び捨てときた。悲しいぜ。うまい煙草を吸いてェっつっただろ」
「あなたが一発撃つまでにその左腕を止めることくらいできます」
「こいつを助けてもテメーが死ぬぜ?」
「構いません」
「へえ」
強襲の対策くらいしているだろう。この手は恐らく使えない。
「あなたを防ぐことができるのなら」
「おう。だがテメーが死ぬ。水華」
やはり。もう何度もヒントをくれている。“この敵はわたし達を知っている”。
「鬼では、ないのですか?」
「鬼に見えたら鬼じゃねェのか?」
「鬼ではありませんね。鬼の幹部は一人一人がもっと強い」
「フー、言ってくれるねェ。だが今は答えあわせの時間じゃねェんだ」
「そうですね」
喉が鳴る。
「そう楽しそうな顔しなさんな。別に今日ズタズタにする予定じゃねェんだ。しまうぜこれ」
左腕を動かし鈴鹿ちゃんの首元に寄せてあった鋼線を抜き取るナギ。
「ほら、銃下ろしなよ巫女。リーチ解いてやったんだ」
言われるまま銃を下ろす。そのまましまった。
「いい判断だなァ!」
思い切り殴りつけられる。さすがに今のは避けられない。
「鼻血が出てんぜ。いい格好だな」
倒れたわたしに銃を向け笑顔を見せるナギ。
「四季!」
「おっと動くなよ?大事な四季ちゃんに穴が開くぜ?」
「リ、セ」
「そうそう止めてやんな。ウチのもおとなしく傍観とはいかねェ。怪しいマネもすんなよ?」
この体制からなら、いやナギの仲間の素質スキルはきちんと認識できなかったが楯の壁発生が一番早いはずだ。何かあった時あの子達の命は守れるだろう。
「フー。良い一発カマさせてもらった。気持ち良い気持ち良い。プッ」
吸っていた煙草を吐き付けられる。顔に当たって地面に落ちた。
「起きろよビッチ。まだこれじゃ勃たねェ」
中指を立てくいくいと曲げるナギ。わたしは時間をかけて立ち上がった。
「左目は残してやる。絶望を見せてやりてェからな。ワンモア、サシで戦おうぜ。テメーが勝っても負けても他のに危害はナシだ」
「わかりました」
「四季っ!」
「大丈夫ですから」
対当し銃を改めて出す。右腕は傷ついているがまだ普通に動く。
「わたしの次は、誰を」
「とりあえず今日はテメーだけだ。そっちの二人はドキハラとやられる場面を見て、それからテメーと転がってる後輩ちゃんの手当てさ。四人でじゃんけんしてわたしの勝ちだったのさ。わたしの番なんだよ」
ナギの言葉を信じるなら。ひとまずは安心かもしれない。
「さ、ロックンロールしようぜ。クソ妖精にちゃァんと防御壁作るように言ってやんな。外のパンピ巻き込みたいなら話は別だがな」
「ナナ、お願いします」
返事は無いが反応は確認できた。
「行くぜ」
「どうぞ」
全角度からの鋼線を撃ち落していく。やはり防衛気味になるが今回気にするべきはとりあえず目の前のナギだけだ。空間認識の範囲をさらに狭め出力の底上げをする。
「また強くなりやがったな!しかしそれまでだ」
「くっ」
手数はわたしの方が上だ。再開してから七発当てている。しかし平気そうな顔、いや多少は効いている。鋼線にあれだけ霊力を注いでいながら体そのものにも防御を纏えるほど力の持ち主ならもうわたしは何等分かになっている。
「いいねェいいねェ。それだよ水華。今のわたしの攻撃を全部防げるなんて、嬉しいぜ?」
「そうですか」
「クールな所も良い」
「そこっ!」
リズムを崩させ直撃させる。よろめいたところで四発。
「がっ!」
膝から落ちた。わたしも右腕に一撃くらってしまったが。
「はー。なるほど?腐ってもテメーだ。弱くなってなおわたしより強いかい?」
攻撃を止め右手の鋼線をすべて地面に刺すナギ。ポケットに手を突っ込み赤い液体の入った小ビンを取り出した。
「テメーも見たことあるか?コンビニで売ってるもんなァ」
蓋を外し口に入れる。今一度煙草を取り出し火を付けだした。
「フー。待ってたわけだ。いい子じゃん」
「不意打ちしたら何を言われるかわかりませんから」
「大正解だぜ、賢明だよ巫女」
煙を吐くナギ。
「神楽覚醒、第四号から第一号まで省略申請、素質拘束“追尾”、解ッ除ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ナギがそう叫ぶとその体から光の柱が立ち、ようやく消え去ったそこには“巫女服を着たナギがいた”。
「かーんじーてーるーかーいー水華ァ!?この霊力を。勝てるかァ勝てねェよな!でも戦おうぜ、イージークレジットだ!」
飛んでくる一本の鋼線。三発撃ち込んでようやく落ちた。
「わかるか?わたしの霊力そのものがケタ違いなのさ。ただ“アレ”を飲んだだけじゃああはならねェ」
わたしも二度曰く“アレ”、再生の欠片を使用しているが確かにあそこまでの爆発はない。神楽覚醒、第四号から第一号まで省略申請、素質拘束“追尾”、解除。
「あっちは大砲こっちは水鉄砲ってヤツだ。戦争に戦車は必要だぜ?」
遊ばれていた。防御力への霊力をギリギリまで抑え攻撃に使う。それでやっと二発で一本が落ちる。
「ホラ後ろだ認識してんだろ?」
「ちいっ」
「ほぼ生身じゃねェか。さすがにワンタッチでバラッバラだぜ?」
「でしょうね!」
なんとか捌き霊力運用しつつ空間認識を正常に展開していく。ナギの内側から霊力が溢れてくる。“そこが発信源のように”。
「ほら指は十本あるぜ?」
十本に襲われる。撃ち落しつつ避けていく最良のルートを確保しこなしていく。九、十、後。
「がはっ!」
なんとか体制をそらし横腹で鋼線を受ける。吹き飛ぶ衝撃。
「とっさに霊力を集中させたか。緩和できたかよ?」
「ええ、なんとか」
「素質スキルの解除さ。霊力の爆発的底上げのおかげで遠距離から鋼線を出せる。スーパーノヴァさ。加えてわたしの素質スキル、覚えているか?追尾っつったんだ。この鋼線な、霊力剥がさねェ限りお前を追うぜ?ほら後ろだ!」
地面から鋼線が発生。避けたところでナギの指先から出る鋼線をまともに食らってしまった。倒れる。
「起きろよ。腹を貫通してわたしの鋼線が天まで届くぜ?」
一発撃ち込みながら起き上がる。弾丸は落とされた。息が乱れる。痛みが引かない。反撃できない。
「このままじゃ」
「は?何だ?」
「このままじゃ勝てません」
「だなァ。歴然を辞書で引けよ、今の状況が書いてあるぜ?」
「はー、はー」
「オラ休むなよ!ハッハ!!」
避ける、撃ち落す、防御する。避ける、撃ち落す、防御する。
「イージークレジット。イージークレジットイージークレジットイージークレジット!!イーズィークレェジット!!!EASYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!CREDIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIT!!!!!!!!!!!!!」
右腕で鋼線を受ける。左腕の銃を一度消しポケットから小ビンを取り出す。片手で蓋を外し口の中へ。
「底上げか?どれくらい効果があっかな?」
イメージしろ。イメージしろ。
「神楽覚醒、第四号から第一号まで省略申請、素質拘束
「辞世の句、おい待ていやまさかまさか!」
わたしの言葉がひとつかき消されるが確かに口にした。あと一言。
「解除」
「ざけんなァアアアアアアアア!!!!!」
ナギの声も視界もわたしの周りに発生した光の柱でかき消された。
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光の柱が消えていく。その中心にいた眼帯巫女水華四季の服装は“巫女服”だった。
「ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんな!!!!」
こんなことがあっていいわけがねえ。こんな事実を受け止めていいわけがねえ。
「ビッチテメェどういうことだ!どうして“テメーが使える”?」
煙草を吐き捨てる。
「なるほど。これは」
「関心してやがれ!」
鋼線を一本飛ばす。水華が銃を向け撃つとわたしの鋼線がきっちり弾かれた。ただの一発で。
「ナメてんなよクソ巫女!」
「“素質スキルの解除”と“自身霊力の爆発的底上げ”。確かに言う通りです。ですが体に悪いです。初めて再生の欠片を使ったときと同じ」
「上等だファック!!死んでもブッ殺してやんよ!!」
十本で全方向から襲う。わかっていても避けられない攻撃。これで。ぱあん。
「は?」
指先に痛みを感じる。わたしの鋼線は地面に捨てられるように垂れていた。
「おいチカ今何があった」
『よく見えねーし銃声も無かったがな。恐らく水華が“ぜんぶうちおとした”』
ぜんぶうちおとした。その言葉を全部撃ち落したと変換するのにたっぷり五秒かかった。水華が持っている銃でわたしの鋼線をすべて。
「そんなことできるわけねェだろ!」
「“自身霊力の爆発的底上げ”」
なるほど。どこに鋼線があるかは一発でわかる。それを限りなく無駄の無い動きで底上げした霊力を運動処理に使い撃っていく。可能なのかもしれない。
「クソッタレ!!」
「遅い」
わたしは一発食らっていた。右腕に痛み。
「テ
「次です」
立て続けに二発。“今のわたし”が顔をしかめるほどの攻撃力。
「ち、いィっ!」
鋼線を地面からも展開。わたしの周りに纏い弾丸を防ぎつつ右指からの二本を水華に向け飛ばした。撃ってくるが弾かれるだけで方向転換しさらに水華を襲う。
「追尾だぜ!テメーが死ぬまで襲う!」
「そのようですね」
距離をとりながら飛ばした鋼線を撃ち対処する水華。霊力は剥がされかけているが少しずつ近づいている。
「くたばれビッチィ!」
わたしの鋼線が地面に突き刺さっていた。水華にロックオンした鋼線が。撃ち落されたわけではない。
「……なるほど」
「納得こいてんじゃねェぞクソビッチが。後輩認識してみな」
地面から転んでいる四人の首元に鋼線を仕掛ける。これだけで水華は銃を降ろす。
「一対一では?」
「わたしがルールブックなんだよ。帰るぜ。見送りな」
『あら、帰るんですの?』
「おう、準備しろ」
「合点ですわ」
ゲートの支度を終わらせ、わたしは歩いてそこに向かった。
「また来るぜクソ巫女。それまでテメーに悪いことが起きることを願うぜ」
第十五話 贖っても償ってもからだ死す定義には おわり
to be continued……




