第一話
「はっ、はっ」
「おいどうする、引くか?」
「絶体絶命ピンチですわ」
「ごめん、みんな!もうパワーがっ」
「……」
「わたし?はー、はー」
「お前が決めろよ」
「今回は従ってあげますわ」
「……ナナ、しばらく耐えてて!」
『頃合いです。状況開始』
インカムから知らない声がして、それから目の前にいる敵が吹き飛んだ。
『楯は壁の全体展開、リセは牽制気味で包囲網を崩してください。薄く広く。今から20秒間』
偶然か意図的か、わたし達と同じ周波数を使ったインカムでの指示に従い、わたし達の前に二人の女性が飛び出てきた。一人が振り返る。あどけなさが残るが年上に見えた。彼女はわたし達を一瞥すると笑顔を見せた。
「了解だよん四季ちゃん。大きな怪我人はいないみたい!こんにちは!ナナ、ひっさしぶりー元気だった?」
わたし達の仲間で一般人には見えない犬耳を垂らした妖精に、手を振ってそれからこちらに背を向けた。わたしは乱れた息を整えながら彼女について考えを巡らせ左隣の仲間を見たが、首を横に振られ、誰の知り合いでもなさそうという結論に至った。
「もう大丈夫だかんね!誰も傷付かないよん、“神楽”発動!」
彼女が指を鳴らすと壁が地面から伸びわたしたちを囲んだ。可視性はないだろうがわたし達はそこにそれがあり、またどういったものかということを認識することが可能だった。
『楯、しばらく前へ。リセは引き続きばら撒いて。わたしも前に出ます。そちらに向かいますね』
飛び出てきたもう一人に目をやる。インカムからしてこちらを見た方が“楯”、今印を結び敵を吹き飛ばしているのが“リセ”。ふたりの“神楽”に関して、前者はともかく後者は発生していることはわかるが直接攻撃しているようには見えず、ただ彼女に近づこうとする敵がもれなく雷撃系の神楽により倒されていっているだけだった。
「了解。敵の動きが鈍くなったよ」
飛び出てきた二人は壁と雷撃を使い敵を退けていく。おそらくインカムで指示していた声の主の攻撃が止んでいたが、こちらに向かっている、らしくわたし達は相変わらず壁で守られていた。
「なんですの、この状況」
「わかんないけど、安心気味、かな」
「とりあえずな」
のんきに雑談なんかしていた。
『まもなく到着します。4、3、2、1』
一緒に心でカウントダウンを唱え、ゼロのタイミングでわたし達の前に女性がひとり着地した。軽い笑顔でこちらを見つめる。二十歳前後だろうか、わたし達より年上なのは間違いなさそうだった。
『四季ちゃんのおなーりー!』
壁を左手で出し敵の攻撃を防ぎながら右手を伸ばし“四季”を迎え入れた。さん付けしておこう。
「ナナ、久しぶりですね」
表情を変えずまたナナに話しかける。わたし達は初対面で蚊帳の外だった。
「四季、やっぱりまだいたのね」
ナナの言葉。やはりわたしの予想は正しく、知り合いらしい。
「話はあとです。全員でオフェンスに回るので緊急時は守ってあげてくださいね。さて」
リセさんも四季さんに寄る。敵はゆっくりと三人だろうかわたし達だろうかに向かって歩いてくる。不安要素もあったがわたし達を守って戦ってくれていた。
「彼女達の周りにいくつか張っておいた。しばらくは大丈夫だよ」
「了解です。じゃ、わたしも、行きますか」
四季さんが両指を鳴らすと彼女の両手に拳銃が出現した。簡単に構え二体が吹き飛ぶ。発砲音がしなかったが、サイレンサー、とかいう名前だったと思う。
「前に出ます。リセ、やや後方で」
敵に突っ込み四方八方に発砲、いやこんなこと言っている場合ではない。
『了解』
『どう動くー?』
「大丈夫ですよ。好きに展開してください」
『はいはーい』
好きにと言っている割りに三人の動きは洗練かつ連携されておりわたし達が先ほど苦戦していたのが嘘か冗談のようだった。簡単にやってくれる。なんだか悔しく、けれどわたし達は助かっていた。
「あっ、あの」
邪魔をしようとしたわけでなく、結果そうなってしまったのかもしれないがわたしはリセさんに話しかけていた。引っ込み思案ぽいのによくもまあ。
「大丈夫だよ、私達はみんなの仲間。ゆっくり休んでいてね」
「はあ」
優しく完璧に一蹴され拍子抜けしてしまう。もう何発撃っているだろうか、弾切れを起こしていないところを見ると“霊力”で作ったもののようだ。
『数が多くても、相変わらず動きが鈍く』
『頭への攻撃が弱い!』
『目も悪いから、なんとなくでしか襲ってこないもんね!』
どんどん数が減っていく。敵は命途絶えると消滅しもうまばらになっていた。
『どうぞさようなら』
一発一撃、次を見据え余裕そうに戦う四季さんに隙は見られなかった。
『ごめんねえ、これがあたしを守ってくれるの!』
指を鳴らし出す壁を使い攻撃を防ぎ、突き上げて倒していく楯さんは少し楽しそうに見えた。
『声を出すこともできず、ただ我々を襲うだけ。感情も持ち合わせていませんか』
確かに敵には口はあっても喋ることはない。うめくことも。声もなく襲ってくるそれは時折恐ろしいものがある。
『恐怖がないから近づく。だから逃げない。だからそこに踏み込む。私の“範囲”に』
範囲、リセさんの発言と今までの攻撃から予測するにその能力は彼女が指定した場所に入ると雷撃が発動するタイプのものだろう。わたし達の周りにも張ってあると言っていた。彼女の指定範囲に入ったら雷撃を食らうのだろうか。痛そうだ。
『17時から増援。数7』
17時の方向がどこかわからなかったが四季さんの言葉通り7体の敵が出現、速攻で殲滅されていた。疑問は四季さんが指示を出した瞬間、曰く17時の方向は背中だったこと。一瞬で確認したか、後ろに目でも付いている、なんて。
「ナナ、あのひとたちは……」
わたしの周りをふわふわ浮いている妖精、前で戦う三人のおともだち、であるナナに話しかける。どんなおともだちなんだろうか。
「彼女たちは“巫女”。おんなじ巫女のみんなの先輩、かつてこの世界を救った存在」
前方で踊っている三人が。わたし達の、先輩。
「その先輩が、いかがして急に現れたんですの?」
「だよなー、初日で助けろよ」
「こんなに強い人がいたんだね」
「強い……」
わたし達後輩は壁と範囲に守られて傍観していた。
『大きいのが来ましたね。8秒後にクリアします』
ずどんと地響き、巨大なタイプの敵が出てくる。宣言は8秒。
『上げるよん!』
楯さんが巨体を突き上げ、宙に舞う間に四季さんが的確に足を狙い当てていく。飛ばすのに使っていた壁はなくなっていた。
『落下の衝撃に雷撃が加ったら!』
いつの間にか落下先はリセさんの範囲になっていたらしい、強力な電撃が発生し敵は動きを止めていた。
『弱点はそのからだを支える足と目です』
四季さんが敵顔面に飛び乗り、目に向かい連射していく。敵の体がぶるんと跳ねていく。四季さんが飛び降りると、もう一度敵が突き上がった。四季さんの弾丸、楯さんの細い壁が二本、リセさんの地面から出た雷撃が同時に敵を突き刺し、落下しながら消滅した。
『クリア』
体感は8秒以下で、だがきっとピタリなんだろう。わたし達全員フルパワーで何秒かかるだろうか。
「状況終了、お疲れ様、皆さん」
武器をしまう四季さん。三人が振り返りこちらに向かってくる。少し歩くなっている程度で疲れている様子も見られなかった。
「さて、少し、お話しましょうか」
四季さんは笑顔を見せた。
日が暮れる前にご飯屋さんに場所を移す。中学生のわたし達が学校帰りに来られるような店ではなく、こんなとこいいんですかと聞いたら「個室があるんですよ」とだけ。リッチだ。
「好きなもの頼んでくださいね。あ、保護者の方にご連絡するならどうぞ」
「マジ?こういうときあたし再現なくいっけど」
「さ、さすがにそれは……」
わたしの友達が失礼を働いていた。
「遠慮しなくて大丈夫ですよ」
「そうだよー、こういう時ぁガンガンだよ!」
「店員さん呼ぶね」
先輩達に押され、わたし達は食べきれるかわからない注文を重ねた。
「さて、まずは自己紹介しましょうか。ナナ、わたし達の話は」
「してないよ」
「ではそこから話しましょうか。わたし達は五年前、皆さんのようにナナと出会い、巫女になりました」
そういう意味で先輩。
「ここにいない二人を合わせて五人。結果敵となる“鬼”を倒し悪を取り除きました」
ゲームか何かの話みたいにしていた。簡潔完結。
「それからの五年間、残党や別の小規模戦力を撃退しながら生活していました。そして今日、ピンチに陥ってる皆さんを見つけ共闘、こうやって出会うに至りました」
「よ、よろしくおねがいします」
わたしの返事はおかしかった気がする。
「神楽の反応があったから、もしかしてと思ってたけどね」
神楽とはわたし達巫女が敵を攻撃するときに使ういわゆる魔法みたいなもので、本来の意味は神社にいるわたし達とは違う一般的巫女さんが神様に奉納する舞のことを指す。エネルギーである霊力を消費して使う攻撃を神楽と総称している。
「姫巫女様から供給を受けてたんだね」
ナナがふわりと四季さんに寄り添う。軽く触りナナが気持ちよさそうに目をつぶるその動作に愛情が垣間見え、わたしは最寄るなら嫉妬の感情をちくりと抱く。
「ワタシがこの世界に戻ってきたのが一月前。新生の大規模敵勢力が現れて」
「ごめんなさいね、ナナ、敵勢力の強さは?」
「おそらくだけどみんなが戦ったレベルと同じくらい。この世界を利用しようとしている。それを倒すために、巫女になってくれたのがこのみんな」
「おいナナ、こんなめちゃめちゃ強い先輩サンがいんならあたしら必要ねーだろ?戦うのは楽しいけどよ」
「そうですわおかしいですわ。こちらの皆様がいたら簡の単に殲滅できるんではなくてこの話終わりになるんではなくて?」
相変わらず口が悪いわたしの友達、年上で遥かに強いということを忘れないで欲しい。
「それができないの。こっちのみんなは“神楽姫”。君たち巫女とは違う存在なの」
「なんだそりゃ」
「基本的には変わらない。でも、敵、鬼の総大将、それがいる空間に入れるのは巫女だけなんだ。神楽姫になったこっちのみんなはこの世界で自由に動けても敵の空間に入ることはできない。だからみんなにお願いするしかないの」
「不便だなそれ」
「でも!じゃあやっぱり僕たちが頑張るしかないんだよね?ナナ」
「そうだね。大変かもしれないけど」
「そういうことでしたらわたし達も、引退したような感じですかね、身ではありますが、お手伝いしますよ。わたしは水華四季子。水曜日のすいに華道のはな、よっつの季節に子供の子で水華四季子です。19歳。こちらのチームリーダーです」
フルネームを伝えると水華四季子さんは頭を軽く下げた。言葉遣いが丁寧で凛としたこの人はなるほど言われてみればリーダーだった。暗い緑がかった黒髪をふたつに縛り前にたらしている。整った顔立ちが羨ましい。まだ彼女とは出会ったばかりだが知的さをひしひしと感じていた。こういう人を思慮深いと言うんだろう。本名は子が付いているようだが、わたし達も四季さんと呼んでいいのだろうか。
「利府瀬戸。利用の利に京都府の府、瀬戸際の瀬戸って書きます。みんなからはリセって呼ばれてるの、どうぞよろしくね」
苗字と名前の一文字をくっつけたあだ名のリセさんこと利府瀬戸さん。四季さんよりも物腰柔らかく温厚そうな雰囲気が漂う。わたしもそうだからか、少しだけ内気な性格に見え、親近感を勝手に沸かせていた。四季さんもだが、彼女も染めているのだろうか、青がかった髪を腰あたりまで伸ばしていた。
「こんばんわはじめまして!あたし桃桜楯!果物の桃、春の桜、木へんに盾で楯。よろしくねっ!」
天真爛漫、子供っぽくわたし達を守ってくれた桃桜楯さんは笑顔を振りまいてくれた。青や緑寄りはたまにいるときいたことがある中ショートヘアの楯さんは赤っぽい色をしていたが、さすがに彼女は染めていることだろう。わたし達と並んでも違和感ないくらいの幼さが見え、そんなこと言ったら失礼かもしれないが、きっと彼女はえへへーとか頭を掻いて喜んでくれるだろう。今日であったがそんな人だ。
「では、皆さんの自己紹介もしていただけますか?」
わたしは両隣と顔を見合わせ、左の友人に頷いた。
「近中海悠だ!えーと、近いで中で海で悠。よろしくだぜ、先輩」
「それじゃどう書くかわからないですわよ、チカさん」
「いいじゃねーかよ。チカって呼ばれてる。チカでいいぜ」
近中海悠、通称チカちゃんは活発でさばさばとした性格。軽く茶に染めたポニーテールをひとつ揺らしきりっとした顔で軽く笑った。年上で強いってわかってるのかいないのか、喧嘩売ってるような、あー、戦ってみたいとか思ってるかもまずい。
「すみません、この子口悪いんです。その、ごめんなさい」
バカみたいに頭を下げるわたしに四季さんはいいんですよと微笑んでくれた。
「すみません。日本海の海に、悠々自適の悠です」
「その、漢字をすらすら言ってく感じ?できねーよ」
「あら、私は余の裕でしてよ」
「ジュースこぼしてんぞ」
「なっ!」
「うっそー!」
「ムキー!!」
「まーまー」
身内の恥ずかしいところを見られてしまい、わたしはため息をついてから頭をさげた。
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「お次は私ですわね。高貴が歩いているの形容ままに、右京伊織と申しますわ。見ていなさいチカさん。悠々自適にこなす川の流れのごとき漢字スラスラを」
わたしがさっき使った言葉をまるまる使いつつ自分で鼻で笑っていた。
「右に曲がって京都にたどり、えー、イタリアの織姫に出会う。ですわ」
気高くキメ顔をすませる右京伊織、本人たっての希望でのあだ名キョウちゃんは完成度のそうでもなさに気付いていなかった。かんざしでロングヘアをまとめにひり顔を崩さない。黒髪を黒髪戻しでさらに黒くしているらしく理由を聞いたら「日本女子のたしなみですわ」らしく人工和美人に向かっているらしい。
「はい、どうぞよろしくお願いします」
大人の余裕だろうか四季さんは色物なわたし達に笑顔を見せるだけだった。
「はいはーい次僕ー!牧島すみです!えーと、牧場の牧で無人島の島。ひらがなのすみです。みんなからはますみとかますみんって言われてる!よろしくお願いしますね!先輩」
わたし達の中で一番中学生っぽい、と言ったら全員に少し失礼だろうが、でも納得してくれるだろう、標準的なますみちゃんこと牧島すみ。自分のことを僕と言いいつでも元気、幼いともとれるのはますみちゃん以外がやや大人びていているから比較してそう見えるわけで、わたしは彼女の純真さが少し羨ましかったりする。茶髪のセミロングが似合う正統的にかわいらしい女の子だ。
「はい、よろしくお願いしますね」
少しの沈黙。わたしと自己紹介を済ませていないもう一人が目を合わせ、他の人がそのわたし達を見ていた。
「……礼場、沙良。です。……よろしく。……おねがい……します」
ぺこりと頭を下げるとんでもない無口、礼場沙良、サラちゃんは表情を変えず先輩達を見られることに耐えられなかったのだろう、ふいと下を向いてしまった。小動物的な、見ていて愛らしい部分が多い彼女はわたし達にはなついて、というと失礼だな、心を許してくれているのでそれでもある程度会話になるが、先輩達とこれから付き合っていくとなると慣れるまでしばらく時間がかかるかも知れない。長く伸ばした黒髪を触っていた。
「どうぞよろしくお願いします」
ん、と一度のどを鳴らす。
「先ほどは助けていただいてありがとうございました。東第二中学三年、伊左治凪です。えっと、伊賀の伊に
「なるほど」
キョウちゃんの関心相槌が入る。
「左右のひだり、治癒のち、朝凪夕凪のなぎです。ど、これからよろしくおねがいします」
わたしは変なこと言っていないだろうか。きちんとお礼が言えているだろうか。内気な方だと自覚しているのに変にきちんとしようとするので無理が多かったりする。可もなく不可もないセミロング、前髪は少し伸ばしすぎ感があるけど。顔も悪くもよくもなくて、でも整っている四人に比べて極端に劣っているわけではない、と、思う。
「どういたしまして。はい、こちらこそよろしくお願いしますね。それでは、改めてなんですが皆さんののうりょ
「おまたせいたしました」
店員さんがドアを開け、四季さんが口をつむいだ。料理をテーブルにおいていく。わたし達が普段利用している大衆的ファミレスとは動作が違った。
「とりあえず、食事にしましょうか。今日は皆さんお疲れ様でした」
--------------------
「そういえば」
談笑しながら食事を楽しんでいる五人が顔を上げる。今日であったこの子たちもまた、そういえば、な顔をしていた。
「皆さんのリーダーはどなたなんです?」
五人は顔を見合わせていた。割り切れない表情。
「あの、いないんです。リーダーみたいなのって」
いたほうがいいんですかね、と控えめに凪ちゃん。
「巫女になって、一月、でしたっけ?」
「はい、大体それくらい、ですね」
「今までは、どうやって戦ってきました?」
「どうやって」
「どうやってって、普通にだわ。ナナが感知して、そこ行って、ぶっ飛ばして終わり」
「ですわね。華麗に舞って華麗に地球を救っておりますわ」
今日の天気くらいに答えた海悠ちゃん伊織ちゃん、すみちゃんは頭にハテナを浮かべ沙良ちゃんは無言を突き通すぞ表情、凪ちゃんは返事に悩んでいた。
「四季先輩達は、どうやって戦ってきたんですか?」
結果そう返す。お茶を濁したか、考えた答えか。
「そうですね、そういった過去のお話もしていきましょうか。ですが長くなってしまいますしもう夜ですしね。明日以降にしましょう。連絡先を教えてもらえますか?」
わたしが携帯電話を出すと海悠ちゃんに顎で指示された凪ちゃんが自分の端末を出してきた。
「部活に入ってる方はいますか?明日用事がある方は」
「いえ誰も。明日も、誰かいる?」
誰も返事をせず、大丈夫です、と凪ちゃんが付け加えた。
「それでは明日、学校が終わったら連絡してください。と、友人を待たせておりますので、先に失礼しますね」
立ち上がる。少し不安そうな顔をしていた。
「ああ、お会計ですね、お金置いておきますから」
財布から一万円札を二枚抜き机に置く。
「えっと、たぶん多いと思うんですけど……」
「皆さんでわけてください。今日はお疲れ様でした、おやすみなさい。ナナ、また今度」
「あ、ありがとう、ございました。ご馳走様です」
立ち上がった凪ちゃんに全員がなんとなくで続く。
「みんな、また明日ね、ばいばーい」
「さようなら」
凪ちゃんの連絡先を登録しながら個室を出る。
「いい子たちそうだったね!」
「能力とか、どうなのかな?」
「そういうことも明日改めてうかがいましょう。あ、ご馳走様でした」
店員さんに頭を下げ店を出る。登録を済ませわたしは友人に電話をかけた。
「今終わりました。皆さんは今食事なさってます」
『お疲れ様。どうだった?』
既にメールで今日のことは伝えてあった。
「まだしっかりは見ていませんが、これからなんじゃないですかね。姿勢ですとか意欲ですとかも見定めて頑張っていきましょう」
『頑張る?』
「そのことで、直接お話しましょう。こちらに集合でいいですか?」
「うん。すぐに向かうよ」
「わかりました。向かいますね。あの」
「なに?」
「時間が、必要ですね」
わたしは電話を切り、今後を話し合うため自分の家に向かった。
第一話 でもそんなんじゃだめ おわり
to be continued……