タバコ 2
パソコンの電源をいれ、座りすぎて変形してきた座布団の上へ
吸いたいと言うよりも、もう癖になってしまった一連の動作でタバコに火をつけて
ひと吸いし 肺まで吸い込み吐き出した
なんだか強烈なデジャヴに襲われそうになったなったがきっと気のせいだ
もうこれでもかとばかりに沸騰させた熱湯で煎れたコーヒーをテーブルに置く
コーヒー・アンド・シガレッツ
映画の題名にもなるくらいのナイスな組み合わせだ
一口飲もうとカップを持ち上げ、なにげに中をのぞき込む
なんか渦 まいてる
あれよあれよというまに渦が立ち上がってきてだんだんと小さな人の形へ
ロマンスグレーに細いツルの眼鏡、口元にはよく整えられた髭
黒の上下に清潔な白いシャツ、襟元には蝶ネクタイ
なんか絵に描いた様な英国紳士
「あなたの願いをなんでも叶えてさしあげましょう」
でた
「そうきたか」
思わず口にだす
「何か申しましたかな?」
紳士は訝しげに俺をみる
「いや、なんでもない」
俺が答えると 紳士は まぁ、いいでしょう と言うような顔をして再度
「あなたの願いをなんでも叶えましょう さあ、どうぞ何でも望みをいってごらんなさい」
とのたまった
「ほっといて」
一人にしておいて欲しい俺が言うと
「なにをおっしゃる あなたも人間なら、いや男なら、願いの一つや二つはあるでしょう?ささ
遠慮なぞいりません、このわたくしめにその願いを言ってごらんなさい」
としつこいことこの上ない
ので
「おい、サラリーマン紳士 ノルマだかなんだか知らねーけれど 人の貴重な時間を邪魔すんな」
ときれたみた
「な、誰がサラリーマン紳士ですか!それにノルマとは何ですか!わ、わたくしは崇高な業務を全うしている・・・」
俺は遮り
「じゃ、紳士さんよ、英国紳士のステレオタイプで出てくるならコーヒーから出てくるな!英国紳士っつったら紅茶だろ!紅茶!」
「では紅茶を飲みなさい!」
なんちゅー理不尽な要求だ 俺は当然の反論として
「タバコには紅茶は あわないの!葉っぱと葉っぱのハーモニーはあり得ないの!」
と常日頃から考えている持論を展開してみた
英国紳士は真っ赤になって泣きそうな顔をしながら コーヒーカップの中に消えた
俺はやっと静かになった部屋で冷めてしまったコーヒーを一口啜り、2本目のタバコに火をつけた
台所の紅茶の缶の中から
カンッ
と音がしたが 無視しておいた
こんなんばっか
読んで怒んないでね