7話
その日の授業は特に集中できなかった。
それは隣の黒道も同じなようで、そわそわしている。
「なあ黒道...何時頃来るとか予測されてないのか?」
「ごめん、それがわからないみたいで」
うーむ、なんとか落ち着きたいのだが。
...この空にブラックホールが出現して、外に出るほどでかいやつが来るんだろうな。
もしかしたらそいつは本当に危険なやつで、みんな殺されてしまう可能性も無くはない。
だがら、落ちつけないんだ。
ちなみに今は数学の時間で、自習だった。
外で体育をやっている様子はないし、来るなら今が...って
「おい黒道!?」
「来たの!?」
「ああ...これまでにないすげーでかいブラックホールだぞ」
本当に巨大で、グラウンドが埋まってしまうほどではないが今までには見たことのなかった。
これぐらいの異変なら、みんなすぐ気づいてしまうだろう...
「おい!!みんな空見てみろ!」
ほらな。それに釣られて野次馬がどんどん集まっていく。
「なあどうするよ黒道、早くしないと出てきちまう」
「私は翼を使って降りるから、明人君は飛び降りて」
正気かよ!?まあ確かにここは2階だし運が良ければ無傷で済むが...
ここは地味に行こう、下手な事をするより。
「え?黒道腹痛いのか!?大変だなー僕が保健室連れて行ってやるよ」
大声で叫ぶようにいいながら、黒道の手をとり走って廊下を出た。
「強引すぎない!?」
「まあいいだろ、どうせバレるんだし」
「まだ飛び降りたほうが恥ずかしくなかったよ!」
階段を下りて、靴を履き替える。
そしてグラウンドに着いた。
「おい明人、お前何やってんだー!」
クラスのやつらが俺に話しかけてきてる。
どうやらもうバレちまったみたいだ。
他のクラスの人たちも、先生すらもこの巨大なブラックホールを見ている。
「早く出てこいよ...早く!」
僕の声と共に、ブラックホールから生物が降りてくる。
そいつは...
「この前のイカじゃねえか!!」
そう、第一回目のイカだった。
「なんでまたこいつなんだ!しかも大きさ変わってないし、ブラックホールはハッタリだったのかよ!?」
「また会えたねイカちゃん...」
「敵相手にちゃん付けるのかよ...」
見ているやつらがざわついている。
やばい...今の会話、全部聞かれたらしいな。
だがまあ、仕方がない。
さっさと決着付けるとしよう。
「おい黒道!」
「わかってる!神々の翼!」
黒道の背中から翼が生える。見ているみんなが凍りつく。
「お久しぶりです、黒道さん」
「イカお前のこと知ってんのかよ!!」
「誰がイカだ!!俺はタコが好きだ!!」
...なんで?
「イカの方が美味いに決まってるだろうがあああああああ!剣!」
僕は叫ぶ。そして、空から日本刀が落ちてくる。
「ちょ、当たる!!当たるっつーの!」
そしてそれをイカが避けたところに...
「今でしょ!」
黒道が回りこんで翼をぶつける。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!」
うるせえええ!!
「必殺・触手遊び」
なんで今叫んでたのに普通に必殺技出してんの!?「必殺」じゃねーよ!
そして触手に狙われたのは...
僕!?僕ですか!?
「なあ俺さ...タコだけじゃなくて人間もイケるんだ」
「意味が変わってきてないですか!?」
「ダメよ!明人君は攻めよ!」
「お前は何を必死に訴えてんだ!?」
触手はヌルヌルしてるしこのイカ油断ありすぎだし目が近いし...
「これなら届くだろ!!」
そして剣を振り抜く。
「クソが油断したあああああああああああ!!」
アホすぎるだろこのイカ。
「あ、言うの忘れてたギャアアアアアアアアア!」
お前らその悲鳴故意に出してたのかよ!!
「クソ...黒道さんにはやっぱ勝てないか」
「またねイカちゃん...今夜は一人で寝るわ...」
...疲れてツッコむ気すら、失せた。