5話
また体育館に怪しい生物が現れた。
これで5回目ぐらいだろうか、だんだん慣れてきた。
今回は本当の怪獣みたいなやつ、というか怪獣だ。
「目からビーム!!」
なんで毎回毎回、必殺技の時に喋るんだ?
「甘い、神々の翼!!」
「ギャアアアアアアアア!!」
悲鳴が大きいのも共通らしい。
「今だ、剣!」
やっぱり天井から落ちてきた。これなんとかならんのか
「...よし、キャッチできた。問題はどう当てるかだよな」
今回は身長が高いため、弱点である目に当てるのが難しい。
だから翼がある黒道に頑張ってもらいたいのだが...
「目からビーム!!」
必殺技が激しくて、なかなか近づけないらしい。
ちなみに必殺技にはあまり意味がないらしく、食われないと死なないらしい。
「くそ...どうするか!」
「私がなんとか体を倒すことができればいいけど」
黒道は真剣に、怪獣を観察している。
「...わかった!目からビームを出しているとき動きが止まってる!」
なるほど。背中の方を狙えばいいわけか。
「じゃあ明人君、目からビーム食らってもいいから動きを止めて!」
「食らったらどうなるかわかんねーだろ!」
といいつつもそれしか方法がないため、言うことを聞くしかない。
「おらあああああああ!かかってこいやあああ!!」
「上等だこのリア充!!」
「なんで僕がリア充って知ってるの!?」
「さっきこの可愛い娘から聞いたんだよ!!」
「お前敵になんて情報教えてんだ!?」
「隙あり!!」
僕と怪獣が話しているあいだに準備していたらしく、翼がバサッと怪獣の体を覆う。
「ちょっ、倒れ...」
ギシッという床の音と共に、体育館が揺れる。
だがしかし...
(今だ!!)
なんとか自分の足を動かし、怪獣の顔の方に進めていく。
そして...
「おら刺されやあああああああああ!!」
怪獣の目に見事刺さり、怪獣の体が薄くなっていく。
「...おいそこの男」
最後に、怪獣が話しかけてきた。
「どうした」
「神は...神は決して神じゃない、人間だ...お前も分かる時が来るだろう」
「それってどういう...」
聞き返した時には、怪獣は既に消えていた。
「どういう意味だったんだろうな、アレ」
「神の遊びは、人間が操作している...とか?」
「まさかな」
だけど実際ありえない話でもない。
僕たちも今魔法のようなものを使えているわけで、それを応用したら多分似たようなことができる可能性はある。
「恐ろしいな」
「本当にね...それじゃ今日はあなたの家に泊まる」
「勘弁してくれ」
「だって今日は家に帰っても一人だし」
...研究関係だろうか。
父さんがそうだっていうんだから、母さんもそれ繋がりだろうな。
「それに今日は金曜日だしね」
「理由にならないだろそれ...」
だが流石に夜道を一人で歩かせる訳にもいかず、結局家まで連れてきてしまった。
「大きい家だね」
「ほとんど誰も使ってないからそう見えるだけだ」
実際今この家には僕しか住んでないし、持て余してる。
とりあえず適当な料理を作り、食事を済ます。
そして風呂に入って、寝る。これが普段の生活だ。
そして今日も似たような感じで、あっという間に布団に入る。
「失礼します」
「なんで入ってくるんだ」
「話があるから」
彼女が布団に入ってきた。
少し動揺してしまったが、冷静にいれるよう頑張ろう。
「それで話ってのは?」
「実は、月曜日の昼間に学校に神の遊びが出現するって」
「推測されたのか!?」
「うん、しかもグラウンド」
...なんてこった。
そもそもあいつらは屋内にしか出ないんじゃなかったのか?
「かなり緊急というか、過去に例がないみたいで」
「これは...」
向こうが本気を出してきているということだろうか。
「どうする?私達が無視し続けることもできる」
「だけどそれじゃあれは...」
「退治することはできない。だから負傷者が出るかも...」
「ダメだ。それは絶対。それじゃ僕らが存在してる意味がないだろ」
みんなを守るのが僕たちの役目なんだから。
「それじゃ私達のやってることがバレても、明人君はいいの?」
「...正直、不安だ。僕は今の生活が好きだ。友達と話したり、彼女とドキドキしたりさ。だからそれが壊れちまうんじゃないかって」
みんなは神の遊びの存在など知らずに、生活を送っている。
そしてその生活を守っていくためには、僕が――
「ごめんね、私のせいで」
黒道が、僕の考えを中断させる。
「そんなこと」
「だって、私が別の人をパートナーに選んでたとしたら、明人君はどうなっていたと思う?」
「そりゃ、神の遊びの存在なんか知らずに青春を謳歌していただろうな」
「そうでしょ。だから私が明人君みたいなしっかりした人を選ばなかったら...」
僕に責任感を負わせることが無かったってことか。
「......大丈夫だ、安心しろ」
「でも本当は、みんなとワイワイ騒いでいたかったんじゃないの?」
「ああ、本当はそうかもしれない」
「やっぱり明人君を選んだのは間違いだった?」
「違う。それは絶対にない。少なくとも、今は」
僕だって、人の役に立ちたいんだ。
「みんなのためになってるんだって、安心してるところもあるよ。
僕は生まれてきてから苦労したことがなくてさ、こんな生活がずっと続くんだろうなって思ってた。だけどお前と会ってから、今まで生活はとてもつまらないものだったって気づくことができたんだ。
ただ幸せに毎日送るのはもう飽きたんだ。そんなの腐る程経験してきたしな」
僕は笑いながらそう言った。黒道は泣いてしまっていた。
「本当にそれでいいの?」
「当たり前だ。俺はお前のパートナーなんだから」
気がつくと僕は泣いている黒道を抱きしめて、目を閉じていた。