どんぞこにおちた男が出会う本当の幸せ
高校2年生の夏。俺はいつもと同じように今日を過ごす。6時半に起きて勉強をして、制服に着替えて朝ごはんを食べて、今日の星座占いを見る。そしたら、忘れ物がないかを確認して家を出る。学校についたら授業を受け、ちなみに俺は部活に入っていないので授業を受け終わったら、すぐ家に帰る。家に帰ったらまた勉強。将来の夢は、自分たちが使うような身近なものを作る、プロダクトデザイナーの会社を立ち上げ、社長になること。難しいかもしれないが、努力は裏切らないと信じ、毎日勉強を頑張っている。ということで勉強をして2時間ほどがたった。午後7時。「誠、夜ご飯できたよ!」母さんの声が聞こえた。階段を下りて、リビングについた。今日の夜ご飯は、麻婆豆腐にサラダと白米か。「いただきます。」家族とご飯を食べる時間はとてもたのしい。家族4人、母さんと父さん、妹の桜陽。父さんは出張が多く4人で集まって食べられる日は少ない。今日はそんな数少ない日の1日だ。楽しんで食べよう。「ごちそうさまでした。」わが家は自分が使ったお皿はその時に自分で洗うという決まりがある。そしたらお風呂に入る。美容などに特にこだわりはないが母さんに勧められたオールインワンとやらは塗っておく。その後は勉強。…11時になった。桜陽と父さんは寝て。母さんはリビングでテレビを見ていた。「何、見てんの?」「ん?あー最近アニメにハマってて面白いアニメを探してるの!誠も見る?」「いや眠いからもう寝る」「そうおやすみ」「おやすみ」
こうやって毎日を同じように過ごし、何の変哲もないような毎日が過ぎてゆく。別に変哲があってほしいとも思わない。人生山あり谷ありという言葉もあるが俺はずっと平地を歩いていたい。
時は流れ、この俺も32歳となった。
今の状況を伝えると、夢がかない、プロダクトデザイナーの会社を立ち上げることができた。まだ社員も2,30人ほどでもっと大きくしたいと思っているが、学生時代にしっかりと勉強していたおかげでそこまで壁にぶつからず、進められている。あと、実は恋人もできた。名前はアザミと言う。とても幸せだ。だが、そんな幸せも長くは続かない。 ある日、俺は地下鉄に乗って少し遠い町へ出かけていた。その時、事件は起きる。近くにいた女子高生が急にこう叫んだ。「キャー!痴漢!!やめてください!!」そして俺を指さしてきた。は?何を言っているんだ。俺は痴漢などしていない。周りが白い目で俺を見る。いや、確かに近くにはいたが俺はしていない。その後何人かの他の乗客に駅員室に連れていかれそうになったが抵抗して、次の次の駅で降りた。本当に違うのになぜこんな目に合わなければならないんだ。 痴漢冤罪をかけられてから2日たった。本当は会社に行かなければならなかったが、さすがに外に出る気になれず、1日休んだ。だが、さすがに2日は休めない。少し緊張しながら外に出る。車に乗って会社に向かう。いつもより少し小さい声で「おはよう。」といった。 よかった。社員のみんなはいつもどうりのようだ。「社長!おはようございます!昨日は大丈夫ですか?」「ああ、心配してくれてありがとう。少し体調が悪くてね。」「そうですか。お体、大事にしてくださいね。」「うん。ありがとう。」麦くん。とてもいい子だ。周りを見ているし、仕事がとてもできるわけではないが、一生懸命取り組んでいる。さてと、そろそろ私も仕事をしなければ。 午後7時。仕事もほとんど終わったので、家に帰り、ご飯を食べる。はぁ、今日はいつもよりすごく疲れた。早めに寝ておこう。最後に仕事のメッセージが来ていないかだけ確認しよう。あれ?誰だっけ。高校時代のほとんど話していないような友達から連絡がきた。「会社立ち上げたって聞いたよ!すごいね!もしよければ会社に行きたいんだけどいい? 勉強のために!」特に話してもいないような人だから、会社に呼びたくはなかったが「勉強」という言葉を聞いて、「いいよ。」と送ってしまった。今思えばこの誘いをしっかり断っていれば、今こんな状況にはなっていなかったのかもしれない。
「うわーすご!結構広いね!」「そ、そうかな。」少し緊張しながら会社を案内していく。一通り案内し終わったところでこう話しかけてきた。「そういえばさ、俺、3日いや4日?くらい前に地下鉄に乗っててさ、」え?体がびくっとした。友達はそのまま話を続けて、「んで、俺お前が同じ車両に乗ってんの見つけて、その時にはお前が社長になったこと知ってたから話しかけようかなって思ってたら、お前「痴漢されたー!!」って言われててガチでビビったわけ、え、実際どうなん?あれマジ?w」血の気が引いた。なぜなら、この話をしているとき話し声が少し大きく、ちょうど目の前を女性社員が通ったからだ。ほとんど顔には出ていなかったが、俺にはわかる。多分あの社員は社長が痴漢をしたと聞きこの会社を信じられなくなっていると思う。最悪だ。本当に最悪だ。なぜこんなところで話してしまったのだろうか。俺はやっていないのに。デマ情報なのに! 友達には「俺はやっていない。冤罪だ。」とはっきり断言し、帰ってもらった。そして、社員にもやっていないと、断言しなければならなかったのだが、どうも勇気が出ない。なんだか社員からの目線が冷たく感じる。結局言えずに社員は帰ってしまった。憂鬱な気分で家に帰る。そこから何日、何週間かたって1人の社員がこう言ってきた。「お時間ありがとうございます。個人的なお話なのですが退職について相談させてください。」最初のほうは気が付かなかった。でも、だんだんと退職したい社員が増えていく中で、気づき始めた。痴漢冤罪のうわさが広がっていることを。そして、全員ではないと思いたいがほとんどが私のことが信用できずに、退職届を出しているということを。ついに来てしまった、残りの人数が10人未満になってしまった。もう会社を続けられない。残りの社員に退職勧奨を願った。もう会社が終わるとわかった日、アザミに「ごめん。会社を続けられなくなった。これからは、普通の会社に勤めようと思う。本当にごめん。」と言った。そうしたらアザミは、「はぁ?最悪なんだけど。いい金づるできたと思ったのに!金稼げないんでしょ?もういいから」 恋人も失うだなんて。そこから数日、家にこもっていた。外に出たくもないし、働きたくもない。もう何もしたくない。そこからまた何日か経って、さすがに働かなければならなくなってきた。今までは貯金を使って何とかしてきたが貯金にも底がある。誠は、後ほんの少しだけある勇気とやる気を出して、バイトを始めた。学力はかなりあるのですんなりと面接に合格した。何ヶ月か通い、新人の向日葵さんが入ってきた。そこで初めて誠は店長から向日葵さんのお世話係を任せられた。緊張しながら何週間か付きっきりで向日葵さんのお世話をしていた。お世話をしていく中で気づいたことがある。向日葵さんはとても明るく、1つのことに熱心で向日葵さんと話していると笑顔になれるということだ。そこから何週間か経ち、もうお世話係がいらないほどになった。お世話係をやめるときにやっと気づいた、向日葵さんに惹かれていることに。もう一緒に仕事をすることも少なくなるかもしれない。勇気を出して言ってみよう。「あ、あの今度2人でご飯を食べに行きませんか?」「いいんですか!ぜひ!」よかった…。ご飯に行った後、次の約束をして、俺たちは着々と仲を深め、正式にお付き合いすることになった。そして、向日葵に自分の過去のことを話した。冤罪をかけられたこと、そのせいで会社がつぶれたこと、1時期は家にこもってしまっていたこと。向日葵は黙ってうなずきながら聞いてくれた。「向日葵は冤罪のことを聞いて何か、いやだとか思わないのか?」「思わないよ。実は私、高校生の時に痴漢されたことがあるの。私は大声が出せなくてすぐ電車を降りたんだけど、本当に怖かったんだ。でも、誠はバイトの時から思ってたけど絶対そんなことしないんだろうなって思ってた。いつも努力してるし、すごく真面目、丁寧に仕事をこなしてるだから私は誠に惹かれたの。」
誠は向日葵のために就職することを決めた。付き合って3年記念のレストランで誠は「結婚してください。」と言った。返事は「よろしくお願いします。」
お金だって前よりすごく少ないし、あの友達と恋人のせいで人を信じることも怖くなっていた。でも、今がすごく幸せなのは、本当の幸せを手に入れ、その幸せを噛みしめているからだと思う。
本当の幸せ。




