9話【鮮血の殺戮者】うちの!!!!
鮮血の殺戮者とか可愛くなーい!! ってずっと思ってたけど、こんなことになるなら最高!!
おにいからありえん高い装備とか≪薬≫とか買うためにめっっっっっっっっちゃ、頑張った甲斐あったあ!!
飯田君と普通に……じゃないけどひっさびさに喋れたしぃ。……コミュ障向け自動音声生成機能付き兜まじ神!!
「ん、でもぉ熱いのと見た目が可愛くないのは最悪ぅ。音声も高圧的だし、そのせいでちょっと頑張ったら鮮血の殺戮者って……ホント腹立つんですけど!!」
――バン!! ……。
いつもみたいにぬいぐるみのうさきちに一発、そんでもう一発って殴ってやろうと思ったけど……勝手に手が止まっちゃった。
だって今日はそんなするくらいストレスフルじゃないんだもん。
飯田君の匂い思い出しセラピー……。
「アーンド、監視義務……って名前のぉ、うち限定配信があるんだもんねえ!!」
パソコンのスリープモードを解除して、魔道具と連携してるアプリを立ち上げ……リアルタイムの飯田君を眺める。
飯田君が探索者活動してる時こっそり覗きに行ってたりしてたけど、それじゃ飯田君成分の摂取が全然足んなかったからさぁ、これでいつでも飯田君成分摂取できるの最高!!
しかもしかも、また飯田君がボールを投げてるところが見られるなんて……感激なんですけど!!
モンスターと戦う飯田君もかっこよぉ。ま、甲子園で無双してた時と比べるとまだまだだけど。
「でもぉ……あのモンスターなんなの、マジで」
飯田君のこと旦那様とか呼んじゃってさぁ、マージ馴れ馴れしい……。
「あの時……本当に殺しておけば良かった。私の飯田君、私だけの飯田君……。飯田訓生一番輝いてた時も知らないで、上辺だけでデレデレしてるの……不愉快でしかないんだけど」
それに……せっかく飯田君が活躍してるのに返球? 飯田君のボールをあんたなんかが握ってるのあり得ない。
飯田君のボールは、その汗がしみ込んだ全部は私だけのものなのに……。
……かっこいい、でもやっぱり飯田君には探索者は向いてない。
肩が治ったんだから飯田君は投手に戻るべき。
「うちにマネジメントされるべき……。一生うちのために投げ続けて、汗をかいて、その微笑みを向けて……。そのためにうちは……ダンジョンで瀕死になった飯田君にこの≪薬≫、絶対怪我しなくなる≪がっちがちの薬≫を飯田君に――」
「――また涎出てるぞ」
またうちの部屋に勝手に入ってきたおにい……大臣様。
この時間はこれがあるからあんまし玩具使えないの……どうにかしないと。
「まったく、かわいい妹のためとはいえ低ランクの探索者たった一人にダンジョンを任せるのは大変だったぞ」
「でもやってくれるじゃん。しかもありえんくらい早く。マジシスコンだよね、おにい」
「部屋に引きこもりっぱなしだった妹が心配じゃない兄貴なんかいないわけないだろ。ある程度の無理は聞いてやるさ」
「うん、ありがと」
おにいってばそんなこと言いながらうちの部屋にドンドン入ってきてパソコンを覗いてくる。
これ、飯田君フォルダ……ばれてないよね?
「それよりも……彼、こんなスキルは初めて見た」
「でしょでしょ! やっぱり飯田君は最強! といっても野球してる時ほどじゃないんだけど」
「……これくらいの困難を乗り越えられなければ最強とは言えないさ。探索者は諦めるべき。それで絶望に立って……そんな彼を見てお前もそろそろ目を覚ませ」
「は? なにそれおにい」
「もう彼に依存しなくても大丈夫なんだ。だから……盛大に負けてくれ、飯田君」
「おにい、いじわる」
「そうだな。俺は最低だ。でも、お前も彼に探索者を辞めてもらいたいんだろ? 理由はどうあれ目的は一緒。モンスターを応援してやろうじゃないか。って……もうゲームセットかもな」
「え?」
パソコンの画面には大量のモンスター。それも全部レベル100以上……200くらいのだっている。
ありえない。いくらなんでも敵強すぎ。これ、まさか……。
「おにい、なんかした?」
「ちょっと、ね」
「無理、こんなのうちでもしんどいかもなのに――」
――バンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
変な汗を噴き出しながらおにいを睨んでると、パソコンから聞いたことがない強烈な音が聞こえてきたんだけど……。




