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7話 筋肉の名は

「――ジ、ジュウウウウウ……!!」

「旦那様、休む暇も憂いてる暇もないぞ。早速一匹、実力もわからん馬鹿が、きたっ!!」



 さっきからの太い鳴き声を響かせてると思ったけど……追われてきたモンスターって、俺こんな奴みたことないんですけど。


 知ってるのはレベル2とか3のテッパマウス……前歯が鉄になってるだけのほぼ野ネズミな雑魚モンスター。




 ……こんな二足歩行で身長2メートルでマッチョなネズミ様じゃねえ!!




 『ジュウ』ってお前の鳴き声は『チュウ』だろ!! 太いんだよ!! 全部が全部!! あともっこりしてるの本当にやめて!!



「ガチムチネズミなんかお呼びじゃねえだよ!! う、らあああああああっ!!」

『ピッチャ――。いや早っ!! アナウンスさせなさいよ!!』


 近づくネズミ型のモンスター……キモ筋肉ネズミ。それを追っ払うために急いでファイアボールを生み出すと、俺はノータイムでそれを投げた。


 アナウンスの入る隙さえ与えてやらねえぜ! ていうか、今日のアナウンス自我強すぎんか!?



「ジュ、フフ……」

「な!? 対応、された?」



『――ストラぁああああああああああああああああああああああイクっ!! 今度は言えたああああああああ!!』



 華麗な上段避け、とびきりのどや顔、余裕の表れである腕組み。


 その仕草全部が腹立つしなんか気持ち悪いけど……こいつ強ぇ。


 当たる気がしねえよ。



 それでもボール強化が覚醒、球速が上がるだけじゃなくてこの野球仕様になるのたまらんな。



 試合感が強まってめちゃくちゃ高まる。し・か・もアウトをとれれば……。



「ピッチャー交代でしばらく俺はボールを投げられなくなる……て、それやばいじゃん!!」



 改めてスキルの仕様を脳内で整理、発覚したのは野球とは反対のくそルール。


 最強だけど、弱点が致命的すぎだって! 復帰戦すぐでそんなにコントロールよくはならんって!!



「――ってやっば……」

「ジュウっ!!」



 とにかく数撃ちゃ当たるの精神で2球目を用意してると、このきも筋肉ネズミは懐に潜り込んできた。


 殴られる、そう思った俺は咄嗟に顔面をガード。



 でもそんな俺をあざ笑うようにこいつは俺の両足を掴んで……力任せ俺の身体を地面に転がらせた。



「くっ! って、おま、その名前……」

「ジュウ……」



 俺の股間部分に足をあてがおうとするきも筋肉ネズミ。


 その行動に違和感を感じた俺は対象を観察するみたいにじっとその顔を見た。するとその頭上には……。



『――レベル100、電気アンマウス♂』



 追われて出てきたモンスターとは思えないレベルの表記が。


 弱肉強食が当たり前のダンジョンと化して、モンスターたちはそれに合わせて進化した、とかか? ……いや、そんなことよりもとんでもない下ネタネームが俺の目に映ってますよ。



 電気アンマウス、それってことはこのままだと……やばい、死ぬよりもヤヴァぁぁああイ!!!



「球!! 球を早く作んねえと!! 俺の『たま』が大変なことにぃい――」



 ――ヒュン。



 尊厳破壊の最強技が電気アンマウスから飛び出そうとした時だった、近づく風を切る音が俺の耳を劈いた。




「ボールは活きているみたいだぞ旦那様!!」



 ――パンッ!



『返球がモンスターにヒットおおおおおおおおおおおおおお!! ど真ん中、じゃなくて脳天を抜けたああああああ!!』



 そしていつの間にか俺の球をキャッチしていたインドラによる返球によって、きも筋肉ネズミこと電気アンマウスの頭ははじけ飛び……俺の手元にはまだ活きた状態のままファイアボールが包み込まれていた。


 返球にも俺のスキルって乗るのか……しかも、速度を引き次いで。



 ってか、これでヒット扱いいいの? いや、ダンジョンルールだと『投手は敵にヒットを作らせる』が正義だからいいんだけど……もうめちゃくちゃ。だけど、それはそれで最高に楽しくねえか?

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