6話 帰らせまへんで
『まったく……。あれはいつも勝手に決めているが、上に怒られないものなのかな?』
「さ、さぁどうなんでしょう? というか、そのえっとぉ……今の話って――」
『聞いていた通りだ。本日よりまずは一週間、貴様等の……お前たちの監視をすることになった。もし任務が遂行できなかった場合の処遇もこちらできめることになっているから、その時は覚悟しておけ』
「は、はぁ……」
殺気はもう感じない。で、代わりにびっくりするくらいの先輩風を吹かせてくる。
さっきと比べれば何千倍もマシだけど……。
「監視って、その……ダンジョンだけですよね?」
『そんなわけがあるか。インドラがいつどこで何をしでかすか分からない以上プライベートも監視の対象だ。それで、だ……』
――ひゅっ。
鮮血の殺戮者さんは俺たちに向かって何かを投げ放った。
急すぎるもんだから俺は避けることはできなかったけど……インドラはそんなポカはしな――
「くっ。この私が無防備なまま一撃もらうとは……」
『お前は殺気に敏感すぎる。パワーがあるのは分かるが……大臣が監視の依頼を俺一人に任せるというのはそういうことだ。レベル320と言えど、S級探索者にかかれば殺すのは容易い』
な、なんか俺が思った以上に高度ななにかが繰り広げられていたみたい。完全に蚊帳の外でこれでもかってくらい差を感じちゃう、けど……。
「なんにせよ、一安心。なんだかんだ言ってS級探索者に認められてるくらいインドラは強いわけだし、そもそもダンジョンの100階層に住んでたんだから30階層くらいわけないってね!!」
よく考えたらそんなに追い詰められた状況じゃねえんだよな、これ。
冷静に考えたら、このダンジョンを独り占めできるのもでかい。稼げる……一攫千金。松坂牛チャンスなのでは?
「ふははははははははははは!!! そうだ! むしろそんな簡単なことでこの男やさっきの男を見返してやれるのだから儲けものではないか!! 流石旦那様!!」
「そ、そうだよね!! だは、だははは――」
――ビービービー!!!
インドラに釣られて慣れない高笑いをした、かと思えばそれをキャンセルさせようとばかりに胸元から甲高い音が鳴った。
地震速報かな? でもスマホはこんなとこにしまってないし……なんか、インドラの方でも鳴った?
『取り付けたのは発信機、それも脅威を感じ取った際にアラームが鳴って俺のもとに知らせの入るタイプの……【魔道具】』
よく見ると胸元にキラキラと光るバッジみたいなものが取り付けられていた。
引っ張ても取れない。けど、服には絡まっていなくて脱いだりはできそう。
まるで手品みたいな仕組みだけど、こんな魔法が実際に起こるのが【魔道具】。俺も実物を見るのは初めてだな。
そもそも高すぎて買えたもんじゃないからまともに調べたことすらなかったわけだけど……って、脅威?
「俺に心当たりはない。んー……いインドラは?」
「ないな! 我は決めたのだ! 旦那様がその手に栄光を掴むまでは邪魔はせん、とな。そ・れ・に、最高の奥様はおしとやかでなければだろ?」
「旦那様……。奥様……」
インドラの言葉に引っかかった様子の鮮血の殺戮者さん。
だけど、それをいかんいかんと振り払うように首をふるうと和やかな、これでもかってくらい美味い空気を濁らせるようなことを言い放った。
『お前たちに心当たりがないようであればこのアラームは間違いなくダンジョンの異変によるもの。牛耳るものがいなくなり、モンスターはその座を争い、そして……』
「――ジ、ジュウウウウウ……」」
『それによって追われたモンスターたちは地上へとやってくる。ほら、とりあえず10階層まで位は正常化を急がんとまずいことになるぞ。最悪の場合インドラどころではない強モンスターが現れるかもしれんぞ』
「えっと、休む暇は……」
『あると思うか? 大臣は言ったはずだぞ、このダンジョンの担当はお前だと。帰りたければさっさと戦うことだな。そして思い知れ、インドラを仲間にしたことが間違いだったと。実績を作ることの過酷さと、自分の天職がなんだったかを。とりあえずの説明は終わりだ。正常化については……その時が来れば教えてやる。ではな』
「ではな、って……これはハード過ぎやしませんか?」
鮮血の殺戮者は巻物のようなものを広げると、この場から消えてしまった。
……。親父ごめん、今夜の晩飯当番俺だけど……こなせそうにないぜ。
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