5話 クエストぉ!?
「――き、危険ですよ大臣!!」
差し伸ばされた手、それを迎えようと俺も手を差し出そうとした、のに……。
さっきの探索者が割って入ってきましたよっ、と。
この人のやってることは間違っちゃいないんだけどさ、ちょいっと過剰じゃないか?
なんかネットで正義面して噛み付いてくるタイプっぽくて嫌だわ。
「ふふ、ありがとうございます。でもそれは飯田君だけじゃなく、私にも失礼だということには気づいているかな?」
笑いながら正義の探索者を見つめる大臣。
決して戦闘をしようだなんて考えていないはずだってのに……なんだよ、この威圧感は。
元SSS級探索者……厄介ごとが起きやすいダンジョン関連の問題をすべて把握、対処するためだけに新たに設立された省庁のトップ。
流石としか言いようがねえよ、これ。
「……旦那様。やっぱり旦那様は凄い。これを見て、震えてもいないなんて」
しかもあのインドラがそういって俺の背中にぴったり胸をくっつける始末。
はは、なんか一周回って落ち着いてきたまであるな。
「ふぅ……違えよ、力量の差があり過ぎて麻痺してるだけ。むしろ俺にはずっと睨んでくるあっちのが怖ぇや」
鮮血の殺戮者はなぜかさっきよりも殺気を放ってた。
あ、ちなみにこれ親父ギャグ。意図的ね。
「ほぅ……。いやはや、これだけのモンスターを連れ出すだけある。この度量、もしかして鮮血の殺戮者君よりも速くS級探索者になれるかもしれないぞ」
『それはない。こいつは優秀だと思うが、投手以上の天職はないだろう』
「ん? なになにまさか嫉妬か?」
『貴様、大臣だからと人をからかうのはやめろ』
「あははは、ごめんごめん。そんなに怒るなって!」
なんか鮮血の殺戮者と大臣って仲良し?
いやそんなことよりも俺、めちゃくちゃ褒められてますやん。ぐへへ。……悪くないね。
「あー、それでちょっと話がそれちゃったけど……私もね、そのレベルのモンスターを連れ歩くことは良くないと思ってはいる」
「え、あの……すみません。でも、本当にこいつはもう大丈夫で……」
「あはは、そんなのは見れば分かるよ! でもね、人ってのは明確な証拠、もっと言えば実績や数字を提示しないと信用してくれないものなんだよ」
「実績、ですか……」
俺の実績……Fランクで倒したモンスターはなし。レベルは多分まだ3。週休三日。うーん、ないって言った方がただしいかもしれないや。
「ないよねぇ。あっても投手時代のものだけで、探索者のものなんて」
「まぁ投手時代も大したことはなかったんですけど……」
「いやいや!! 凄かったよ!! 3年の時の甲子園、最後の1球!! 165キロであんなに落ちるフォークを……。……。……。ごほん! とにかくだ! 逆に言えば実績があればそのモンスターを連れ歩くのはOKってこと!!」
なんか、やけに褒めてくれると思ったらファンボだった感じですか、大臣……。
嬉しいけど、微妙な感情。これが3分の1の感情――
『実績なんてそんなにすぐできるものじゃないぞ。しかも、だ。これだけのモンスターを連れ歩くともなればそれなり、では足りない』
鮮血の殺戮者のやつ、一気に空気が重くなるようなことを……いい人だけど、生真面目が過ぎる。俺との相性は△だろ、絶対。
「だから、今日からこのダンジョン担当を飯田君に任命します! それでまずは1週間で……30階層の踏破と『正常化』、B+級難度の依頼を任せる! もし失敗したら……その時は鮮血の殺戮者君が好きに処遇を決めてくれていいぞ!」
『確かにそれならば……。だが――』
「これも何かの縁、その期間君には飯田君とモンスター……インドラ? の監視を頼むよ。……これは君にとってもいい、依頼だと思わないか?」
『……。お前、これ以上からかうようであれば――』
「あははは!! 冗談冗談! そんなにむきになるなって!! それじゃ、説明含めて全部頼むよ、鮮血の殺戮者君! 報告楽しみにしてるからな! じゃあ他のみんなはもっといい場所に行こうか!!」
大臣は大臣とは思えない軽い口調とフットワークの軽さでこの場にいた探索者たちを連れ出してどこへと消えていってしまった。
あれ本当に偉い人なのかよ……。
というか、1週間で30階層? しかも『正常化』って? ……あのう、俺には荷が重すぎなんですけど。家、帰りたいんですけど。
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