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11話 むにゅう

「仰せのままに、旦那様!」



 少し苦しそうに、でもいつもみたいな豪胆さを忘れないままインドラは片手を上げた。


 すると電気アンマウスたちの尻尾は股の間からだらん、と垂れて無防備……丸出し状態になってしまった。



「そのみっともないいちも……尻尾を焼いてやっからちょっと待ってろよ……」



 インドラが作ってくれた隙を使って地面をザッザ。


 今までよりも気合いを込めて、まるでそこにグローブがあるかのように手を納めて握りを確認する。


 そうして息を吐き、肩を上下に動かし……懐かしのルーティーンが完了すると俺は再び片足を上げ、丁寧に一球を放った。



「――ファイアボール:カーブ」



 全盛期の俺は速球だけに頼らず、それなりの変化球を持って戦っていた。


 中でもこのカーブは春の選抜で思いがけず猛威を奮ってくれた古い古い相棒。



 速度を意識しなければ他の球種よりも制球には自信がある。



 つまりは……。



「その尻尾を、的確に焦がしつくす!! これが俺の新スキルであり球種のカーブ――」

『素の変化球はスキル内の球種に含まれませんからね。って、球がヒット、ヒット、ヒットヒットおおおおおおおおおお!! 縦斜め横全ての的を震わせる一球だああああああああああああ!!』



 俺の決め台詞とられてもうた。

 あれかな、言い直しするのばれたかな?


 いやいや、だからってこの温度差なんなのさ!めっちゃ冷たいじゃん!俺個人の時だけアナウンスそんめっちゃ冷たいじゃ――




 ――バンッッッッッッ!!!!!!!!!!




 あっつう……。


 尻尾がファイボールで焦げて、コードの役目が半端になって……短絡(ショート)


 遊撃手(ショート)じゃなくて、短絡(ショート)



 あはは、このダジャレ面白……くない!!



 寒くない冷たくない!熱い熱い熱い熱い!!



「狙ってたけど、ここまでは想像してないんですって!!」



 インドラの猛烈な電撃を調節しながら安全に取り込む、その仕組みが崩壊したことで電気アンマウスたちは瞬く間に爆発。


 俺の視界は赤で染まり、舞った火の粉は服や髪の上に降り注ぎ、異臭が鼻の奥に引っ掛かる。



 うん。自滅まっしぐらコースですこれ。



『大量の経験値、ドロップ品の獲得を確認。レベルがアップ。21、25、30……バカな! まだ上がっていくぞ!』

「アナウンスさん! 今はスカウターごっこしてる場合じゃないから!!と、とにかくハゲ……ハゲだけは回避しないと――」



 ――がら……。



「へ?」



 両腕で毛根を守りながらその場に屈むと、爆発音や炎の音とは別の音が鳴った。


 で、それがなんなのかは分かんないけど、不穏ってことだけは分かる。


 ……そういえば今日って仏滅だったっけな。



「なむなむ」

「これはまさか……旦那様!! 我に掴まれ!!」

「なむなむにゅぅ!!」



 諦めてそれっぽく神頼みをしていると、顔に柔らかい何かが押し当てられただけじゃなくて……全身に強い浮遊感が駆け巡った。


 さっきの音、それにこの感じ……。



「もにゅかひて……床、にゃい!! おひ、おひてるぅっ!!」

「旦那様! そんなとこ、息を、かけな……くすぐったいからぁあ!!」

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