番外編 第3話 幸せにする(完)
それから
俺の歌を好きだと言ってくれる詩季のために、歌おうと思った。
詩季に歌を聴いてほしいって思ったら、今までのスランプがウソみたいに、ふつうに歌えるようになったんだ。
だから、俺が今でも彗星として活動できるのは、詩季のおかげ。
本当に感謝してる。
詩季と付き合うようになってから、詩季は俺にとって特別な、かけがえのない存在になった。
優しい詩季の笑顔をみると、胸の奥が温かくなって、幸せな気持ちになる。
どんなに嫌なことがあっても、詩季の笑顔がいつでも俺の心を癒してくれたんだ。
それなのに俺は……詩季をひどく傷つけて、泣かせた。
そのくせ、詩季を手放すなんてこともできなくて。
こんなにも身勝手な俺を、詩季はずっと愛してくれた。
だから、決めたんだ。
一生、詩季を守っていくって。
もう詩季を泣かせたりなんかしない。
絶対に、詩季を幸せにするって、そう決めたんだ。
◆ 詩季 ◆
目を開けると、速水さんの顔が目の前にあった。
「……速水さん?」
「あ、詩季。起きた?」
ちゅ、と唇にキスされて、ぼんやりしていた意識が一気に覚醒する。
「っ!?」
やばい! 寝坊した!?
……いま何時!?
慌てて枕元の目覚まし時計を見ると、まだ真夜中だった。
ホッと胸をなで下ろす。
「ごめんね。詩季。起こしちゃった?」
「……速水さん、もう目が覚めたの?」
「うん。撮影が続いたせいかなぁ……」
「眠れるなら寝て下さいね」
「うん」
速水さんは笑顔で頷くと、僕の体をぎゅっと抱き締めてきた。
「速水さんっ」
「詩季も一緒にねよ?」
「うん」
「おやすみ。詩季」
今度は額にキスをして、速水さんが目を瞑った。
間近で速水さんを見つめると、いつもドキドキする。
背中に回された腕が、離れないようにとしっかり抱き締めてきて、嬉しくて速水さんの胸に頬を寄せた。
すると速水さんが優しく頭を撫でてくる。
そういえば、初めて会ったときから、速水さんは僕の頭を撫でるのが好きだった。
子供扱いしてるのかと思ったけど、最近ようやく違うってことに気づいた。
頭を撫でてくるときの速水さんは、いつも愛おしそうに僕を見ているんだ。
「……大好き。速水さん」
小さく呟くと、すぐに甘い声が返ってきた。
「愛しているよ。詩季」
チュッとキスされて、すごく幸せな気持ちになる。
大好きな人の腕に包まれて、僕はまた眠りに落ちていった。
(終)




