やおよろず仕事納め 下⤵
説明しよう。
連獅子とは日本の伝統芸能、歌舞伎の演目の一つだ。
親の獅子が子供の獅子を谷に突き落として、這い上がった我が子を育てるっていう内容らしい。
豪華絢爛な衣装と、長い髪をブンブンブン回す有名なシーンなんかで有名だったりする。
作者の知識はそれぐらいだ、後はみんなで調べてみてくれ。
愁也「……ハァッ、ハッ!?⤴」
動転した愁也が声にならない声を絞り出す。
琉星「……なt!」
優斗「……すっ、すt!」
霧人「ぁ、ファッ!」
四人は同時に思った。
歌舞伎だ。
なんか知らんが歌舞伎町でもねーのに歌舞伎が降臨した。
歌舞伎町じゃねーぞここ?
歌舞伎町じゃねーよなここ?
ホスト?
ホストなのか?
新入り?
それかクラブ違い?
ホストクラブ間違えたんかこの人?
和やかな雰囲気から異世界に叩き落とされた四人は凍りついたが。
狐乃「……いい子にしてたか」
狐乃だった。
白塗りメイクしているせいで誰だかわからなかったが、声からして狐乃だった。
見た目のインパクトが強すぎて、誰も気が付かなかった。
とりあえず、ニューフェイスのホストではないらしい。
愁也「……ハァッ、ハッ!?⤴」
琉星「……なt!」
優斗「……すっ、すt!」
その人物が狐乃とわかって更に戦慄する。
いい子にしてたかとはなんだろう。
なんの質問をされてるんだろう。
ナマハゲ? ※秋田県のオニ
ナマハゲなのかこれ?
ナマハゲってこんな風だったか?
愁也「……きっ、⤵でゅっ!?⤴」
琉星「……うぉt!」
優斗「……ぶっ、ふぉっ!」
霧人「ぐぁ、a!」
狐乃さんだったんですか。
驚きましたよ、ビックリした。
ふざけないでくださいよ。
ハハハ。
と、声にならない声がかすれる。
狐乃「……いい子にしてたか」
四人は思う。
脅迫?
よく見ると左手には朱色の風呂敷づつみ。
右手にはバールのようなものを握りしめている。
あぐ、ぶっ、と妙なうめき声を出した愁也がゆっくり口を開いた。
愁也「きゅう、きゅっ、狐乃さん、なんの冗談……」
狐乃「……いい子にしてたかって聞いてんだ」
おワタ\(^o^)/
人間の社会で這い上がろうとしがみついてきたが、狂ったアニキは舎弟の脳天をかち割りにきたらしい。
優斗「う、うぅ……」
恐怖に耐えかねた優斗は、変わり果てた狐乃を思って涙が溢れる。
優斗「狐乃さん、お、俺達、なんか悪い事……」
狐乃「おいおい……」
涙する優斗を見て、狐乃は握っていたバールのようなものを放り出した。
ガチャンッと音が響き、愁也、琉星、霧人がビクンッと肩を震わせる。
狐乃「泣くんじゃねぇ、こないだの事は謝るからよ」
優斗「何言ってんですか……」
狐乃はあぁ、と呟いて風呂敷づつみを床に置いた。
狐乃「……この姿で来たら喜ぶと思ってな」
愁也「ハ、ア!?」
琉星「え、え……?」
置いた風呂敷づつみをほどいて、中身を見せた。
2段重ねのデカイ寿司桶だ。
狐乃「サタンの衣装を汚したから、代わりの装束で来たんだ」
先日にサンタの衣装を汚したので、再チャレンジのつもりでやってきたらしい。
彼なりのサプライズだったのだ。
歌舞伎の衣装で。
ネットで調べてサンタと同じと思ったらしい。
とりあえず赤かったからという理由で。
サンタの「いい子にしてたかい?」というセリフが、押し込み強盗の脅し文句になったようだ。
愁也「そ、そ、そうですか……」
狐乃「遅くなったが寿司は俺からのプレゼントだ」
寿司桶を受け取った琉星は、軽々と差し出された桶の重さにオゥフッ、と息が漏れた。
優斗「バールは……」
バールのようなものは店に煙突がないので、なければないなりに侵入する得物が必要だろうとシチュエーションに合わせて持参したらしい。
愁也「……そう」
優斗「ですか……」
狐乃「お前ら一年よくがんばった、年始はゆっくり過ごしてくれ」
そう言うと、歌舞伎姿のまま店を出ていった。
残された四人はグッタリと脱力感に襲われる。
愁也「……ハハ」
琉星「歌舞伎……」
寿司桶を開けると、全員が黙々と口に運んだ。
後日。
スタッフでクリスマスの絵本を買うか相談し合った。
狐乃への遅いクリスマスプレゼントだ。
「よいこのクリスマスのすごしかた」
対象年齢6歳から。
「お前が渡せよ」
「お前だろ」
「俺は嫌だ」
最終的に誰が渡すかで揉めに揉めて、結局別な物を渡す事に決まる。
瑠星「……こっちの方がいいか」
「新春芸能歌舞伎座/連獅子DVD」
これでまとまった。