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やおよろずクリスマス 下⤵

愁也「……なんだ?」


琉星「……なんだろ、何してんだ?」


すると。


ドンッ、ゴッ、ドゴッ!!


という、重い響きに変わる。


何かを殴っているような音に聞こえた。


琉星「……?」


しばらく無音の間が数分流れる。


優斗「……着替えてるだけにしては長くね?」


おかしな雰囲気に三人は顔を見合わせた。


今度はガチャガチャと何かが割れる音がして。


ガチャリ、と。


扉が開いた。


愁也「狐乃さん、中で……」


そこまで言いかけ、愁也は息を呑む。


愁也だけではない。


琉星、優斗も出てきたキッチンから出てきた人物を見て目を見開いた。


顔にはサンタの覆面。


定番の赤い衣装はまとわず。


代わりに薄いブルーのシャツに、ベッタリと返り血を浴びて。


左手には何かが詰まった黒のゴミ袋。


右手にバールのようなものを握りしめた男がいきなり現れた。


愁也「……ハァッ、ハッ!?⤴」


動転した愁也が声にならない声を絞り出す。


琉星「……なt!」


優斗「……すっ、すt!」


三人は同時に思った。


サタンだ。


なんか知らんがサンタに変わってサタンが降臨した。


じゃなきゃ事後の覆面強盗だろ。


なんでだよ。


俺らが何したっていうんだ。


和やかな雰囲気から悪夢に叩き落とされた三人は凍りついたが。


狐乃「……すまねぇな」


声は狐乃だった。


覆面をしているせいで、息がフシューと漏れる。


見た目のインパクトが強すぎて、誰も気が付かなかった。


愁也「……ハァッ、ハッ!?⤴」


琉星「……なt!」


優斗「……すっ、すt!」


その人物が狐乃とわかって更に戦慄する。


クリスマス前に、マジもんのサタンが降臨したと。


恐れる怪物がサタンに変わっただけだと。


愁也「……きっ、⤵でゅっ!?⤴」


琉星「……うぉt!」


優斗「……とっ、どっt!」


狐乃さんだったんですか。


驚きましたよ、ビックリした。


ところで霧人はどこすか。


と、声にならない声がかすれる。


狐乃「……すまねぇ」


三人は思う。


なんの謝罪だろう。


バールのようなものはなんだろう。


黒いゴミ袋は何が入ってるんだろう。


霧人はどうして出てこないのだろう。


あぐ、ぶっ、と妙なうめき声を出した愁也がゆっくり口を開いた。


愁也「きゅう、きゅっ、救急車……」


狐乃「いや、いらねぇ……」


琉星「……け、警さt」


察しのいい琉星の脳内ではゴミ袋を見て「手遅れ」と察したらしい。


優斗「……ス、スコップ、持っ、きましょうか」


優斗の中では仲間の処理の段階まで考えを進めたようだった。


狐乃「……これか、燃えないから埋めたりしなくてもいい。回収日に出せるしな」


おワタ\(^o^)/


人間の社会で這い上がろうとしがみついてきたが、アニキはとうとう舎弟の命を手にかけたらしい。


優斗「う、うぅ……」


恐怖より現実の重さに耐えかねた優斗は、姿の見えない霧人を思って涙が溢れる。


優斗「狐乃さん、コ、コスプレぐらいでキ、キレ……」


狐乃「おいおい……」


涙する優斗を見て、狐乃は握っていたバールのようなものを放り出した。


ガチャンッと音が響き、愁也と琉星がビクンッと肩を震わせる。


狐乃「泣くんじゃねぇ、衣装を台無しにしたのは謝るからよ」


優斗「何言ってんですかっ、霧人ですっ!」


狐乃はあぁ、と呟いてキッチンの中を指差した。


狐乃「悪い、中は片付けたんだが霧人がのびてんだ。引っ張り出してやってくれ」


愁也「ハ、ア!?」


琉星「え、え……?」


琉星がこわごわキッチンを覗くと、食器が割れて散乱し、霧人がひっくり返って気絶していた。


足元には真新しいケチャップを踏みつけて。


狐乃「コイツが覆面を先にかぶせたもんだから、視界が狭くてよ。中でぶつかって、壁に頭を打って気絶したんだ。あげく、出しっぱなしになってたケチャップを落として踏んで、まともにかかってな」


サンタの衣装まで汚してしまったので、すまないと謝っていたのだ。


愁也「そ、そ、そうですか……」


狐乃「適当に詰めておいたから、回収日に出しておいてくれ」


ゴミ袋を受け取った琉星は、軽々と差し出された袋の重さにオゥフッ、と息が漏れた。


優斗「バールは……」


バールのようなものはキッチンにある非常扉に備え付けられていた物だったが、同じく汚れたので持ってきただけらしい。


愁也「……そう」


優斗「ですか……」


狐乃「俺にサタンは無理そうだ。残りの片付けを頼んだ、今夜は帰る。」


そう言うと、覆面をかぶったまま店を出ていった。


残された三人はグッタリと脱力感に襲われる。


愁也「……ハハ」


琉星「ベタだな、ケチャップ……」


三人は気絶している霧人をひっぱり出すと、黙々と片付けに勤しんだ。


サンタの衣装を回収して。


後日。


ケチャップ出しっぱなしの件を食品衛生管理の面で、洲王からこっぴどく叱られた。


また、クリスマスのイベントに関して、サンタのコスプレは禁止事項とされる。


ニ人のスタッフによる強い反対があったらしい。


イベント予定は縁起を担ぐ方面に切り替え、店のロゴをプリントした餅を配る事となった。




























※夜に載せようと思ってたんですが「部屋に帰るのが怖くなっただろバカヤロー!」とか「寝れなくなっただろバカヤロー!」とか、不満のお声を想定して朝から載せました。


犯罪、ダメ、絶対。

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