表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

巨獣の最期




グレアが次に目を覚ますとシャディザールの山手やまのてにいた。

眼下には、下町が広がり、無数の灯りが見える。

猥雑な街は、異国風の搭が並び、宝石箱のように眩い光を放っていた。


「…獣は!?」


グレアは、辺りを見渡した。


すぐに奴を見つける。

巨大な獣は、我が物顔でシャディザールを走り回っていた。

蹄は、客や行商人を挽肉に変え、無惨に貪り食われた人々の手足が口から零れている。


「いたっ!」


グレアは、高級娼館の屋根を走る。


鮮血と内臓を撒き散らしながら巨獣が吠える。

その傍で女たちと男たちが笑っている。

骨を砕く音、悲鳴が聞こえても賭場では、大勢が遊興に耽る。


血の臭い、煙草の臭い、香の薫り。

喜びの声、苦痛を訴える叫び。


常人の理解を超えた背徳の都でグレアは、巨獣に立ち向かった。


「■■■■■■■■■■■■■■■ーッ!!!」


頬のこけた人間の顔。

それ以外は、完全に巨大な馬の姿をしている。

その身体は、不思議な圧を放ち、銃弾を跳ね退ける。


「ふっ…くう!」


グレアは、仕掛け武器を変形させる。

長槍のような武器に姿を変えたそれは、悍ましいノコギリ刃が目立つ。

巨大な拷問器具のようだった。


最後の希望を託し、武器を握る。

ギリギリまで接近し、獣を斬撃した。


「■■■■■■■■ッ!!

 ■■■■■■ー――ッッ!!!」


巨獣の吠え声が一定の方向に収束する。

それは、やがて獣を保護する障壁から目に見えない刃となった。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」


「わあッ!!」


酒場の窓が破裂し、ガラスが降り注ぐ。

細長い尖塔の壁が崩れ、レンガや彫刻が落下した。

娼館の屋根が破砕される。


しかし不思議なことにグレンは、それを知っている。

何度もこの光景を見た記憶が頭の中に確かにあった。

繰り返し夢と現実の間で見たような気がする。


「………かわせるぞ。」


グレアは、呼吸を乱しながらも微笑んだ。

自信を掴んだのだ。


「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」


巨獣は、グレアを狙って音響攻撃を続ける。

空気が強烈な振動を伝え、あらゆるものを破壊した。


「…そうか!」


グレアは、攻撃をかわし、巨獣の足元まで滑り込む。

そして巨獣の喉を抉った。


「■■…キョォ…ごおおおっっ!!

 ■ギ■ォ…ごおおおっっ!!!」


グレアの思った通り、巨獣の咆哮は、あっさりと止んだ。

しかしグレアが喜んだのも束の間のことだ。


「■■■■■■■■■■■■!!!」


巨獣の傷は、瞬く間に塞がり、元通りになった。


水銀弾と狩人の血が無ければ恐ろしい怪異には、十分な傷を与えられない。

仕掛け武器だけでは、足らないのだ。


邪を払う霊力の類だ。

それは、正統な狩人の血に宿る。

目に見えない力場が本来の狩人には、あるのかもしれない。


それがグレアには、ないのだろう。


「俺の血には、獣を殺し切る威力がないっていうのか…ッ!?」


グレアは、疲れたように呟いた。


もはやどれほど絶望を舐めても動揺しないほど彼は、怒っている。

それは、狩人になれず家名を守れないということへの怒り。

そして巨獣への怒りだった。


「■■■■ッ!

 ■■■■ッ!!」


巨獣は、首を振り回し、グレアをあぎとにかけようとする。

人間を簡単に引き裂く大顎には、剣のような牙がある。


「■■■■■■ーッ!!」


「ふぅッ!」


グレアは、自分に真っ直ぐ向かってくる巨獣の顔に刃を突き立てた。

ノコギリ刃を備えた長槍は、眼を貫いて反対側に飛び出す。


「■■■■■■■■■■■■!!!」


思わず背筋の凍るような叫びを巨獣は、あげた。


しかし明らかに脳を損傷しても動きは、収まらない。

尋常の生物では、考えられない体構造。

常識の通用しない生命力だ。


「…まずいッ!

 武器をとられ…る!!」


グレアは、大急ぎで長槍を抜き取った。

赤黒い血と白い脳ミソの欠片が噴き出す。

その様子は、まさに悪夢の光景だった。


「■■■…ッ!

 ■■■■■■■■■■■■ァ■■ーッ!!!」


やはり獣は、怪異。

伝承の妖魔や悪魔のようなもの。

尋常の攻撃では、絶命に至らないのか。


いや!

首、心臓、頭。

これだけ急所を狙われれば獣とて絶命するハズ。


グレアは、ひたすら攻撃をかわし、長槍を振るって応戦し続けた。

それは、カルヴェルノ家を何としても守りたい。

その一心だけだった。


獣を狩っても何も解決しないかも知れない。

しかし、もう他に何をすればいいのか分からない。


どれほど返り血を受け、戦い続けただろう。

気が遠くなるような狩りの果てをグレアは、見ることができた。


「■■…ぎぃ…オ…■■■■ッ。

 ■■…ホ…スピタル………。

 ……ッ…■■………ッ!」


両目を抉られ、心臓を貫かれ、首を滅多切りにされた巨獣は、膝を着いて倒れた。

やがて黒々とした血の池に巨体がかしいで、どうっと倒れる。


それが巨獣の最期であった。


「やった…!!

 やったァーッ!!!」


グレアは、発狂したように大喜びした。

腕を振り、叫び、歓喜の余り咽び泣いて倒れ込んだ。

嗚咽を吐き、何時までも石畳の上で震えている。


「ああ…!!

 あああ!!!

 これは、夢じゃないか?」


石畳の上に寝転がり、仰向けになって月を仰ぐ。


「あはははは!!

 あっはっはっはっは!!!」


緊張の糸が絶たれたのか。

グレアは、心地良い眠りに落ちていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ