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狩人の夢




「…うっ。」


痛い。


グレアは、冷たい石畳の上で目を覚ました。

目の前には、落ちてきそうなほど眩しい星々が輝いている。

満天の星空とは、こうまで美しいものだったのか。


小さな星、天の川までクッキリと見える。

工場の排気で汚れた都市部では、考えられない。

清浄な空気の下、グレアは身体を起こす。


潮風がする。

海の匂いだ。


「灯台…?」


黒くそびえる塔。

その天辺が強烈な光を海に投げる。

グレアは、灯台の基部に近づいて行った。


狩人の夢。

それは、狩人が長い夜を過ごす拠点となる地である。


グレアは、窓付きの古ぼけたアーチ型の木戸を開ける。


1階には、水と食料を保存した樽、缶詰の入った木箱が並んでいる。

また螺旋状の階段がふたつ。

一方は、上階へ、一方が地下に続く。


グレアは、地下に向かってみた。

そこから物音がしたからだ。


「来たな。」


薄暗い地下室には、工房が開かれていた。

仕掛け武器、獣狩りの銃を整備する機械が並んでいる。

そして猫背ぎみの男がグレアに振り返る。


「う、うわあああッ!!」


グレアは、思わず階段に尻餅をついた。

男の顔は、醜く歪んでいたからだ。


左右の目は、高さが違い、大きく離れている。

鼻は、完全に失われ、包帯で隠されている。

口は、耳元まで裂け、異常な本数の歯が並んでいる。


「ここは、危ないぞ。

 ふざけて暴れるんじゃない。」


異形の職人は、そういってグレアに近づいた。

大きな手袋をしており、人間離れした両手を包んでいる。


「敵は、獣狩りの銃を弾く。

 …こうなると頼れるのは、仕掛け武器だけだ。」


異形の職人は、棚から巨大な仕掛け武器を持ち出す。

グレアは、その様子を、じっと見つめる。


「両手持ちの仕掛け武器だ。

 威力は、大きく、間合いも十分に取れる。

 これを持っていけ。」


「あっ…。

 はい。」


グレアは、手渡された仕掛け武器を、しげしげと眺める。

異形の職人は、狩り装束も持って来た。


「水銀弾を使わないのなら、この狩り装束でいいだろう。

 ホルスターや弾薬入れが取っ払ってある。」


「ありがとうございます。」


異形の職人は、渡すものを渡し終えるや階段に向かう。


「お前がこの狩人の夢に訪れるのは、これが最後だろう。

 …本当に短い付き合いだったな。

 狩りをせめて成功させてくれ。」


階段を登りながら異形の職人は、グレアに別れを告げる。

ランプの光の中に丸い背中が見える。


「あの…!」


グレアは、異形の職人に声をかけようとした。

しかし猛烈な眠気が急に襲ってくる。


「…うっ。

 ………ああ………。」


抗い難い眠気の中にグレアは、急速に落ちていった。

そして遂に意識が断ち切れる。




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