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最終話 告白

 3ヶ月が経って今日は合格発表の日。社内の掲示板に張り出された結果は……


「先輩!ありましたよ!」


 掲示板を指さして言ってくる。後輩の黒川はまるで自分の事の様に喜んでいた。


「そう……」

「なんでそんな淡白なんですか!喜びましょうよ!」


「喜んでるわよ。こう見えてね。」

「そうですか?」


「黒川先輩、今に始まった事じゃないですよ。草津先輩はポーカフェースなんですから。」


 私の後ろから現れたのは別府ちゃん。この子もたった3ヶ月で私に言う様になった。


「悪かったわね。」

「でも、お酒入って酔っちゃうと本音が聞けますよ。」


 私は顔が一気に赤くなった。


「ほほぅ……それは良いことを聞いた。と言うことで今夜飲みに行きましょう!」

「いいですね!先輩の昇進もお祝いしないといけませんし!」


 後輩2人はなんか盛り上がっているが……今日の私のデスクには山積みの仕事が積まれている事を2人とも忘れている。


「2人とも……」

「分かってますよ。さっさとお仕事片付けましょう!」

「ここはみんなで分担すれば先輩のお仕事は少なく済みますからね。」


(分担と言うがどうするのだろう……)


「部長!先程草津先輩に回した仕事お返しします。」

「このお仕事もお返ししますね。」


 2人は淡々と朝に貰ってた仕事を返して行った。


「なんだいきなり⁉︎それは君たちにではなく草津君に……」

「先輩は今日は忙しいんです!なので出来る仕事しかしません。それに部長が溜め込んでた仕事も投げてましたよね?」


「それを後輩に任せるのはいけないと思います。」


 私が言えない事を2人が全て言ってしまった。なので残った仕事だけなら定時前には終われる。部長がめちゃくちゃ喚いていたけど何故か2人以外の社員からも怒られていた。




 定時前に私は手持ち無沙汰になっていた。そして部長はてんやわんやで書類を作っていた。普段と立場が逆になっていて私は負い目を感じて手伝おうと思った。しかし……


「先輩!休憩行きましょう!」

「え……うん。」


 オフィスを出て少し歩くと別府ちゃんから叱られた。


「先輩、さっき部長の仕事手伝おうとしてたでしょー?」

「えっ?うん暇だったから……」


「もーしなくて良いんですよ!先輩は優し過ぎます!先輩が忙しくしてる時にあの部長が手伝いに来た事なんて無いんですからそんな人を助けるなんてしちゃダメですよ!」

「あー……はい……ても何したら?」


「ゆっくりコーヒーでも飲んで待ちましょう。もう先輩のお仕事は終わってるんですから。」

「それでいいのかな?」


「いいんですよ!今までが働き過ぎてたんです!あの部長なんてこの前は定時の1時間前から喫煙室でタバコ吸ってたんですからね。」

「そうなのね。」


 いつも休憩も取らずにパソコンと睨めっこしてた私はそんな事も知らなかった。


「あと、先輩……飲み会終わったらまたウチに来てくれまふか?」

「うん……そのつもりだったから……」


 少し頬が熱くなった。そして愛子ちゃんの頬も少し紅くなっているのでお互いに頬を紅くしていたのだと思う。






 2人で定時に退社した後近くの喫茶店で外回りの黒川と合流して行きつけの居酒屋に行った。


「くろかわ〜〜いつもありがとうね!」

「あーハイハイそれもう10回目だから。」


「うぅ……こんな私について来てくれてるの黒川だけだよ〜〜」

「別府ちゃん……これ本当にあの草津先輩?」


「ええ、あの草津先輩です。」


 そう面白半分で私を酔わせた黒川は私に絡まれ過ぎてうんざりしていたのだった。



 2人の先輩を見て少し羨ましかった。黒川先輩は私よりずっと先輩と長く居て、私より仕事も貰えてる。私はまだ3ヶ月……全然勝てない……


「くろかわ〜〜」

「ええい、離せ酔っ払い!」


 あんな風には今の私には出来ないし、なれない。羨ましい……


「コラー!なんでここまで悪酔いするって言わなかったのよ!」

「いえ、本音を言ってるだけです。」


「だとしても流石にウザいわよ!」

「良いじゃないですか。めちゃくちゃ褒めて貰えてますよ?」


「嫌味か!嫌味よね?自分が相手されてないから!」

「ソンナコトナイデスヨー」


「コラー目を泳がすなー!」

「くろかわ〜〜」


「あ〜もう!鬱陶しい!」


 でも、このうざ絡みもすぐに治る事を私は知っている何故なら……


「すー……すー……」


「寝たわね。」

「はい、寝ちゃいます。」


「まさかここまで酒癖悪いとは思わなかったわ。」

「私も最初そう思いましたよ。でも、このギャップよくないですか?」


「まぁ確かに……」

「さてと……今回も私が払わないと行けないみたいですね。」


 私は少し唇が綻ぶのが分かる。これから帰れば先輩と2人きりになれるからもあるけどこの前の答えを聞けるから。


「流石に私の分は出すわよ。先輩の昇進祝いだしここは折半しましょう。」

「いいんですか?じゃあ……」


 しかしここである人が口を挟んでくる。


「いいえ、今日は私の奢りよ。いつも洋子ちゃんを助けて貰ってるんだから。」


 そう言って私の持っていた伝票を取ったのはおかみさんだった。


「えっ?良いんですか?」

「いいもなにも……娘のお祝い事をしてくれてるのにその人たちからお金を貰うわけにはいかないわ。」


「「……えっ?」」

「あら、聞いてないの?私がこの子の母親草津栄子ですいつもお世話になってます。この子は嬉しい事がある時は決まって私のお店に来て飲んで帰ってるのよ。」


 全然知らなかった私たちは呆然としてしまった。確かに顔立ちは似てるけど性格が全然違ってた。


「本当に親子なのですか?」

「ええ、もちろん!正真正銘私の娘よ。さぁこの子はここで寝かせておいて2人は帰りなさい。この子のために貴重な週末を無駄にしちゃダメよ。」


 先輩のお母さんはたぶん私たちを気遣っての事だろう。だけど私はまだ先輩と話さないといけない事が山ほどある。


「あの……私、明日先輩と遊びに行く予定なのですが……」

「あらそうなの?じゃあまたタクシー呼ぼうか。」


「はい!お願いします!」

「それなら私も駅まで乗せてよ。まだ終電間に合うし。」


 程なくしてタクシーが来たので草津先輩をタクシーに乗せて私と先輩も乗り込んだ。


「また来て下さいね。」


 栄子さんは外まで見送りに来て私たちを送ってくれるのでした。そして黒川先輩は駅で降りた。


「じゃあまた月曜日ね。」

「はい!おやすみなさい。」


 そして私のアパートにタクシーが着くと先輩は目を覚ました。




 目が覚めると愛子ちゃんに肩を借りていた。あんな小さな身体で私を支えるって凄いと思った。


「あれ?私寝ちゃった?」

「はい、黒川先輩は帰りましたよ。」


「そっか……折角私の為に開いてくれたのに後で謝らないと……」


「どちらかと言うと絡みの方を謝った方がいいと思いますよー。」


 ニコニコと笑う愛子ちゃん。これはまたやらかしたらしい。


「明日にでも電話して謝っておくわ。」

「そうして下さい。今日はもう私の家で泊まって行きますよね?」


「ここまで来たら他に選択肢ないでしょ?」


 私は笑ってそう答えた。そして私は心の整理をして愛子ちゃんの部屋に入る。


「お邪魔します。」

「はい、いらっしゃいませ。コーヒーいれるね。」


 敬語じゃなくなったのはプライベートって事だ。私の心臓は高鳴った。


(そうだ……今から私は……)


 落ち着く為に私は深く息をする。目の前が少しクラクラする感覚。これは緊張からだ。私は突っ立てボーッとしてるように見えるのだろう。


「洋子さん。座ってていいよ。まだ酔いが覚めてないでしょ?」

「うん……そうする。」


 座ったら座ったで余計にドキドキしてしまう。心臓の音がうるさいくらいに……


「はい、コーヒー。」

「ありがとう……」


 一口飲んでホッとする。そして思考が明るくなる感覚……


「洋子さん、明日はどこに行きますか?」

「そうね。またあの遊園地に行きたいな。」


「そうですか……でも」

「うん、そうだよね……」


 私は深く息を吸い込んだ。そしてこの前の観覧車の中の事を思い出す。充分に待って貰った。そして私は目標を達成した。自信も付いた。そして愛子ちゃんから告白して貰った事で勇気を貰った。ならもう後は言うだけだ。


「あ、愛子ちゃん!」

「はい!」


「待っててくれてありがとう……愛子ちゃんにはこれからも私の隣にいて欲しい……だからこんな私で良ければ付き合って下さい!」

「はい、喜んで!」


 愛子ちゃんは私の汗ばんだ手を握って応えてくれました。そして顔を上げた時彼女は不意打ちで私の唇を奪って行きました……私の初めてのキス、初めての恋人……これからの不安はたくさんある。だけどそれ以上の幸せもきっとある。大丈夫、愛子ちゃんと一緒ならきっと大丈夫。そう思ったのでした。






                       fin

 最後まで読んで頂きありがとうございました!

今回の作品はいかがでしたでしょうか?楽しんで貰えましたか?まだまだ未熟ですが百合好きの方を唸らせる作品を探求して行くので宜しければこんな私の作品をこれからも読みに来て頂けると幸いです。

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