第3話 泥酔
「ふぅー……全く先輩は……」
草津先輩と別府ちゃんと別れた私はさっさと帰って冷蔵庫にあった缶ビールを一気に飲み干した。
「なーんで先輩は仕事出来るし、後輩の面倒も見れる癖になんで恋愛はあんなに下手なのよー!」
私はもう一本の缶ビールを開けて飲み干した。
「しかもあの2人……両片思いじゃん!なんで2人とも気付かないの!?」
私たちの部署内ではもう結構気付いていた。しかし当の本人達は気がついていないのだ。だからこうして今は一人酒をしている。
「これで進展なかったらただじゃあ済みませんからね……」
一方その2人はというと……
「先輩……ここは?」
「居酒屋よ。」
「もっと雰囲気のあるレストランかと思ってました……」
「あはは。私はそんなキャラじゃないわよ。お酒飲むでしょ?」
「は、はぁ……」
気がない返事をして別府さんは付いてきてくれました。そしてメニューを見ず私は注文した。
「いつもの持ってきて。あ、この子にはメニューをお願い。」
「はいよー。洋子ちゃんはハイボールね。そちらのお嬢さんは何にしますか?」
「じゃ、じゃあ同じので……」
「そんなにキョドらなくていいよ。ほら、好きなの頼んで。私の奢りよ。」
「そんな……半分出しますよ!」
「いいのいいの!今日は別府さん頑張ってくれたおかげで早く帰れたんだもん。」
これが今の私に出来る精一杯だ。食事に誘うことすら本来出来ない私がここまで出来てるのは合格点だった。
「うぅ……ではお言葉に甘えさせて頂きます。」
「それで良いのよ。」
私は別府さんの頭を撫でた。一人っ子の私は妹も姉もいない。だから姉妹ならこんなことするのかなとか少し思った。そして少し照れてる別府さんは普段と違う可愛いさがあった。
それからしばらくして……
「別府ちゃーん。もっと飲もうよー」
先輩は酔い潰れていた。
「先輩飲み過ぎですよー!」
「いいのよ!今日は私の奢りだから……」
そうして先輩はそのまま机に突っ伏してしまった。
「あらあらそんなに酔い潰れちゃって、初めてみたわ。」
「えっ?」
女将さんの言葉に私は反応した。
「この子はあんまり飲まないしここまで酔い潰れたのは初めてよ。よっぽど嬉しい事があったのね……お代は起きた時に貰うからあなたはもう帰りなさい。そろそろ終電が無くなるわよ。」
「いえ、私は徒歩での出勤ですしここからなら大丈夫です……それより先輩が心配ですから私の家に連れて帰ります。お代はいくらですか?」
「あらあら、洋子ちゃんにも良い後輩が出来たわね。じゃあこれね。」
伝票を渡された私はその安さにびっくりした。
「えっ?安くないですか?」
「うちはそれが売りなのよ。一品の量を減らして値段を抑えてるの。もちろん男性は足りないけど女性ならこの量でも満足するわ。ターゲット層を狙っての居酒屋ね。周りを見ても男性客少ないでしょ?」
「なるほどです。」
私は納得してお金を支払った。
「さてと、お家が近いとはいえ夜道は危ないし洋子ちゃんを背負って帰るのも大変だろうからタクシー呼んであげるわ。そこで待ってて。」
女将さんは奥へと入って行った。私は寝ている先輩に聞いてみたいと思った。何故ここまで飲んだのかを……
「先輩……なんでそんなに飲んだんですか?嫌な事でもありましたか?」
「んん……?嫌な事だらけよ……でも、今日は全てひっくるめていい日なの……」
「それは……良かったですね。」
「うん……愛子ちゃんと飲めて嬉しかった……」
少し頬が赤くなったのを感じた。私は照れるより先に嬉しさが込み上げてくる。
「そうなんですね……私も……」
「だって私が初めて一目惚れした子だもん……」
「えっ?それって……」
「2人とも、タクシーすぐ来るみたいよ。」
私が深く聞こうとした所に女将さんが戻ってきたので聞けなかった。そしてすぐにタクシーが来たので私たちはタクシーに乗った。
「あの……先輩、家が近いんでしたら教えて下さい。タクシーで送りますよ。」
「やだー!今日は一緒にいてー。」
まるで実家の妹の様な甘え方。今は私が先輩みたいという優越感を味わってしまった為に了承しました。
「分かりました。じゃあ私のアパートに着くまで寝てて下さい。着いたら起こしますから。」
「うん……」
先輩の変わり様に戸惑いつつも先輩は私の肩に頭を置いて眠ってしまいました。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回も楽しみに!




