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第1話 一目惚れ

 4月は新入社員がやって来る毎年の恒例行事の1つ。私事、草津洋子(28歳)は特に関係ないと業務に集中する。


「草津先輩、また先輩達の尻拭いですか?」


 話しかけて来たのは後輩の黒川幸子(27歳)だ。


「ええそうよ。手伝ってくれたりするの?」

「あはは……そうしたいのは山々ですが、私も他の先輩が取ってきた案件の調査と見積もり作らないといけませんので……」


 苦笑いする黒川に私も苦笑いで返した。これも仕事だから仕方ない。働かなければ明日も生きていけないのだから。私たちは黙ってパソコンと睨めっこして作業を続けた。


「おーい、みんな注目してくれ!」


 すると突然課長の声がオフィスに響き渡った。


「ええ、今年の新入社員は4名だ。皆仲良くしてやってくれたまえ。では、自己紹介をして行ってくれ!」


 そうして左端から順番に名前を大声で叫んでいく。正直うるさいだけだ。名前が聞こえるくらいの声でいいのに社員教育で教わった事を続けてやらされているのだ。ここは軍隊でもなんでもないただの会社だ。そんな事をする必要もないのに可哀想と毎年思う。そして最後の子に目が止まった。


「別府愛子です。よろしくお願いします。」


 その子はとても小さな女の子だった。たぶん私より小さい。150以下の身長に小顔な子、でも新人の中では1番目立っていた。


「今年の有望株はどの子かな?」

「うーん……まだ分からないかな。育てて見てじゃない?」


 本音は1番最後の子。だけど言わない。揶揄われたくないから。


「ふーん……先輩は最後の子かー……」

(何で分かった?)


「おーい、別府ちゃん!こっち来て!」

「はい!」


「ちょっ!何で呼ぶの?」

「先輩が目をつけたなら早めに唾付けといた方がいいですよ。先輩の見る目はピカイチなんですし。それに、どこも人材不足なんですから。」


 言い返そうとしてる間に別府さんは来てくれた。


「な、何でしょう?」


 緊張していた。そりゃそうだ。いきなり先輩から呼び出されてるんだから。


「あ、えっと……」

「別府ちゃんは今日からこっちの仕事手伝ってくれない?優しい草津先輩が教えてくれるから。」


「は、はい!よろしくお願いします!」

「え、あ、こちらこそよろしくお願いします。」


 黒川は確実に私で遊んでいた。生意気な後輩だが仕事は出来る。だからこそ文句も言いにくい。そこへ上司から文句を言ってきた。


「こらー!人事配置は俺の仕事だ!勝手に決めるんじゃない!」

「部長ー、そんなこと言わずにここは認めて下さいよー。もしかしたら草津先輩が覚醒してしまうかもしれませんよ?」

「バカヤロウ!そんな事したら俺の地位が危ういだろうが!」


 みみっちい人だな……と思った。そして思った事をすぐに言う黒川は真っ先に噛みついて口論となっていた。そんな2人をみて別府さんはワナワナとしていたからとりあえず机に置いてたクッキーをあげた。


「気にしなくていいわよ。ほら、クッキーあげるから食べてなさい。」

「えっ?と、止めなくて……」


「大丈夫よ。いつもの事だから。それより仕事内容教えるからそこ座って。」

「はぁ……」


 そこから資料の作り方やアポの取り方などを教えていたらあっという間に時間が過ぎて17時になっていた。


「あ、もう定時だね。今日はお疲れ。先に帰っていいよ。」

「えっ?でも先輩達は?」


「気にしないで。私たちもこれが終わったら帰るから。」

「そうですか……では、お先に失礼します。」


 そうして別府さんを返した後、私はコーヒーブレイクした。そして黒川が話しかけてきた。


「おっ、お疲れ様です。先輩!」

「何がお疲れ様よ。全部丸投げしてくれちゃって……教えるのも大変なのよ。」


「その割には楽しそうでしたよ?」

「何でそう思うの?」


「目は口ほどに物を言うと言いますからね。最初の時も先輩別府さんに視線が行ってましたよ。わかりやすいにも程があります。」

「なるほど、よく見てるわね。じゃあ私が何を言いたいか分かるわよね?」


「分からないので帰ります……」


 逃げようとする黒川の肩をガシッと掴んだ私の手はかつてない程の力を入れていた。


「今日の新人教育で間に合わなかったお仕事手伝ってくれるわよね?」

「はい……」


 こうして私たちは夜の21時まで残業して本日の業務を終わらせるのでした。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。連載ですが短く纏めていますので時間のある方はお付き合い下さい。

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