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第三話

 ルフォア国。ラインフォルスト王国の西に位置する国で、国土の七割を覆う「ヨルムンドの森」と呼ばれる広大な森林が特徴の国。

 国家としてみると小国な上、近年まで非常に閉鎖的でもありました。住んでいる国民のほぼ全てが獣人と呼ばれる獣のような耳を持った、身体能力の高い種族。一般的に人間よりも肉体を使うことを得意としています。反面、文明の振興への興味が薄いのか、国としての発展具合は今一つです。


 実際、貴族の間では「蛮族」「未開の地」などと揶揄されており、留学してくる獣人さん達は肩身の狭い思いをしておいででした。

 しかし、私がローザンカ様の提案を聞いた時、こちらを選ぶべきだと思った理由もあります。


 私は実際にルフォア国を訪れた方の話をいくつか聞く機会がありました。大変素朴で、素直な方の多い国だと。ええ、そういう評判を聞いていたのです。

 これは学院に留学してくる獣人さん達の性格とも合致する傾向でした。


 だからこそ、私は結婚を受けることにしたのです。

 ローザンカ様の元でメイドとして過ごし、再起の道を選ぶのが正道。それもよくわかるのですが、多分とても大変ですわ。悪徳領主の娘が落ちぶれたという触れ込みつきの人生は、とても辛いことでしょう。


 故に、私は賭けに出たのです。ルフォア国へ嫁ぐ。そこで腰を落ち着けて暮らす。気持ちの上での平穏を保てるなら、多少の文明的な不便など我慢して見せます。

 あと、ローザンカ様は甘いところがあるので、悪くない相手を用意してくれるだろうという打算もあります。


 そんなわけで、私は少しの荷物と共に、馬車に乗って西に向かうのでした。ちなみにローザンカ様のところには良い人材をご紹介しました。私の両親が捕まったことを教えてくれた彼女です。


 あの子もまた、両親が悪徳領主で苦しむ者でした。しかもあっちの方が逃げようがなさそうだったので、お助けさせて頂きましたわ。

 彼女もこれから苦労するでしょうね。ローザンカ様の下で過ごすというのは、かなりの茨の道になるはずです。周囲だって優しくありません。健闘を祈りましょう。


「……結構揺れますのね。道も悪くなるし、馬車の作りも悪いのですわね」


 今乗っている馬車は、板バネすらない古いつくりのものです。なので、非常に揺れます。西に向かうほど街道の舗装も悪くなるでしょうから、乗り心地もどんどん悪くなることでしょう。


 この苦労の先に、ちょっとした幸せでも掴めれば御の字ですわ。


 そんな、悪徳領主の娘らしくない希望を抱きました。

 こうして、僅かな嫁入り道具と共に、私はルフォア国へ入ったのです。


「う……御者さん、ちょっと休憩を。外の空気を吸わせてくださいまし」


 途中に何度かの休憩を挟みながら。

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